■Round 8: 石井 泰介(神奈川) vs. 田中 陽(東京)

By Atsushi Ito

 『関東Finals2012』も2日目に突入し、ここからはモダンラウンド7回戦。

 その大事な初戦にフィーチャーエリアに呼ばれたのは、『マジックワールドカップ2012』で日本代表の経験を持つ田中だ。

 ワールドカップ予選の段階では優勝はしたもののいささか頼りない印象があった田中だが、世界レベルに揉まれて獲得した確かな実力を武器に初日を5勝2敗でまとめ上げており、ここからの奮戦次第ではトップ8入りも十分期待できる。

 が、席に着くなり「うわー緊張するー。でもせっかくフィーチャー呼ばれたけど全然モダンやってないですよ、これアカンですわ」と自信なさげな様子。

 一方、それとは対照的に昨晩マジックオンラインでモダンのPTQを戦ってきたばかりという、言わずとしれた『グランプリ北九州2009』優勝者の石井。デッキは使い込んだ愛用のUGR Delver(いわく「これしか持ってないんだよね」)だ。

●Game 1
 石井がダイスでピンゾロを振り、先手は田中。お互いマリガンの末、田中の《貴族の教主/Noble Hierarch》に石井の《稲妻/Lightning Bolt》が合わせられる立ち上がり。

 めげずに繰り出された2体目の《貴族の教主》に石井が《クウィリーオンのドライアド/Quirion Dryad》で応えると、田中は返す3ターン目に《静寂の守り手、リンヴァーラ/Linvala, Keeper of Silence》をプレイする。どうやら田中のデッキは"Hate Bears"と呼ばれる、今モダン環境で流行の兆しを見せている緑白のソリューション系デッキのようだ。全然やってないといいつつきっちり最先端のデッキを持ってくるあたり、さすがの嗅覚といったところか。

 そんな田中のデッキを知ってか知らずか、《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》で《エイヴンの思考検閲者/Aven Mindcensor》《幽霊街/Ghost Quarter》という手札を確認した石井は、【2/2】の《クウィリーオンのドライアド》をレッドゾーンに送り出す。そしてこれがノータイムでスルーされるや、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》で《稲妻》をフラッシュバックし、《貴族の教主》を葬りつつドライアドを【4/4】まで育てあげるビッグイニング。

 これに対して田中も《静寂の守り手、リンヴァーラ》でアタック、土地からのダメージが大きい石井のライフを10としてから、《エイヴンの思考検閲者》+《幽霊街》のコンボで石井の土地を攻めたてる。

 ここで幸運にもトップ4枚から《島/Island》を見つけることの成功した石井、《手練/Sleight of Hand》《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》と立て続けにプレイして《クウィリーオンのドライアド》を【6/6】まで成長させて田中のライフを残り6まで追い込むのだが、返しで田中がトップデッキした《流刑への道/Path to Exile》を撃ちこまれ一転窮地に。地味に《エイヴンの思考検閲者》で基本地形サーチも許さず、飛行5点アタックで石井も残りライフ5と大詰めだ。



 返すターンに《秘密を掘り下げる者》を変身させられなかった石井はノータイムで3点アタック、田中のライフを残り3としてからエンド。手札は1枚、はたして石井に飛行5点アタックをかわす手段があるのか……?エンド前に《地平線の梢/Horizon Canopy》を起動しておくか悩む田中。

 それでも結局起動せずターンを迎え、意を決して戦闘宣言。すると石井の手札最後の1枚は《謎めいた命令/Cryptic Command》! オールタップ&ドローで戦闘を飛ばされ、今度は何もなければ石井の勝ちという盤面になってしまう。

 しかし第2メインで《地平線の梢》を起動すると、田中はここで九死に一生の《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim》でブロッカーを用意。お互いギリギリの綱渡りだ。

 そして迎えた事実上のラストターン、石井のアップキープ。フェッチ含みの5マナがある状況、変身すれば勝ちの《秘密を掘り下げる者》の能力で見えた石井のトップは……《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》。

 墓地には《ギタクシア派の調査》《手練》《謎めいた命令》があり、手札にはさらなるフェッチもあるのだが、フェッチは田中の《エイヴンの思考検閲者》によって牽制されているため、そのままこれを引いても《謎めいた命令》をフラッシュバックすることは(ほぼ)望めないという噛みあいの悪さ。

 決断した石井はドロー前に場のフェッチを起動、デッキをシャッフルして新鮮な1枚を求める。

 ……が、あえなくドローはフェッチランド。

 紙一重の差で田中が一本をもぎ取った。

石井 0-1 田中

石井 「《エイヴンの思考検閲者/Aven Mindcensor》にやられたなー」

田中 「あいつなかなかやりますよね。それより、完コピだから全然サイドわかんない(笑)」

『GP北九州2009』優勝者、石井

『マジックワールドカップ2012』日本代表、田中
●Game 2
 《森/Forest》《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》《タルモゴイフ/Tarmogoyf》《噴出の稲妻/Burst Lightning》《差し戻し/Remand》《ヴィダルケンの枷/Vedalken Shackles》という青マナのない手札を決死の覚悟でキープした石井。

 対して田中は、土地5枚に《貴族の教主/Noble Hierarch》2枚という7枚を即マリガンして、ゲームが開始された。

 《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim》をエンド前の《噴出の稲妻/Burst Lightning》で予定調和気味に葬ると、ファーストドローで力強くフェッチを引き込んだ石井。送り出された《タルモゴイフ》は、2ターン目にして早くも【3/4】だ。

 田中も《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》を出すが、石井はさらに《秘密を掘り下げる者》を追加。

 と、ここで実は土地3枚中《地平線の梢》を2枚も引いており、思うように緑マナが捻出できない田中。緑マナを安定供給するべく《貴族の教主》をプレイするが、これは《稲妻》で即退場。ダメージを受けつつキャストした《アメジストのとげ/Thorn of Amethyst》も《差し戻し/Remand》と、石井の動きに翻弄されっぱなし。

 さらに《稲妻》をめくって変身した《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》と《タルモゴイフ》が、《地平線の梢》の乱用でライフが削れた田中に襲い掛かる。

 程なくして《瞬唱の魔道士》からの《稲妻》表裏が、残り少ない田中のライフを一瞬で削り取った。

石井 1-1 田中

田中 「あーサイドわからん。《アメジストのとげ/Thorn of Amethyst》ってきついですか?」

石井 「このタイミングでそれは言えないよ(笑)」

●Game 3
 先手は再び田中。

 田中の《スレイベンの守護者、サリア》《アメジストのとげ》という展開に対し、手札がスペルばかりで思うように動けない石井。《サリア》は何とか《稲妻》し、《クウィリーオンのドライアド》を送り出すのだが、構わず田中は《呪文滑り/Spellskite》から2体目の《スレイベンの守護者、サリア》とパーフェクトムーブ。石井の呪文を封殺しにかかる。

 今や1マナのスペルですら3マナになってしまった石井。加えて、土地が3枚で止まっているところに《エイヴンの思考検閲者》からの《幽霊街》で《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》が割られると、4枚の中から基本地形が……ない。

 ようやく引き込んだ待望の3マナ目もフェッチで、2体の《エイヴンの思考検閲者》を前に追い込まれた格好となってしまう。

 それでも、4枚目の土地さえ置ければ。

 僅かな希望を込めてエンド前にフェッチを起動し、「検閲」された4枚の中から《島/Island》を見つける。これで条件は半分満たした。

 あと半分……祈りを込めた石井のドロー。何か、いや土地引っけ!

 だが、その1枚は無情にも《血染めの月/Blood Moon》で。

 最後まで4マナ目に辿り着けなかった石井は、《紅蓮地獄/Pyroclasm》を抱えたまま"Hate Bears"に撲殺されてしまった。

石井 1-2 田中