■Round 6: 渡辺 雄也(東京) vs. 吉森 奨(神奈川)

By Naoaki Umesaki


プラチナレベルのプロプレイヤー、渡辺

近年、世界中のイベントを舞台に活躍する渡辺雄也(神奈川)の強さは凄まじいものがある。
今年のプロポイントレースも、現在は2位のStanislav Cifka(チェコ)に16ポイント差を付けての単独首位。

この圧倒的すぎる強さに対して、海外勢からも称賛の声は多く「禁止カード?まず、ワタナベを禁止にするべきだね(笑)」といったジョークも聞かれる程である。

そんな「マスター」渡辺が今回持ちこんだのは、ある条件の青黒赤コントロール。

渡辺 「全部のカードが2マナ以下のコントロールデッキだよ。(点数で見たマナコストが2の)《ラクドスの復活/Rakdos's Return》も入れてはいるけど、基本の勝ち手段は《群れネズミ/Pack Rat》。序盤のゲームを作ってコントロールできてしまえば、最近のカードは強いから勝ち手段なんて極論では何でもいいんだよね。」

ギャラリーからは「ふざけるな」「舐めやがって」という声が飛んできているが、残念なことに渡辺の成績は現在4勝1敗。文句を言わせない結果を出してきているのだ。

席に座った吉森も「ハンデ付きっていうデッキの概要を知ってるから負けたくないけど、全然負ける要素があるんだよな……」と楽な勝負とは見ていないようだ。

●Game 1
マジックの歴史を振り返ると、リミテッドで劇的に強いカードは、ブロック限定構築でも活躍を収めるケースがある。

そして、ブロック限定構築で主役級の活躍を収めたカードは、スタンダードにおいて活躍するケースも多い。

さて。現在遊ばれている『ラヴニカへの回帰』のリミテッドで猛威を奮う爆弾レアカードといえば?
100人中90人は《群れネズミ/Pack Rat》と答えるだろう。

通称『2キル』。対処が出来なければ、ネズミ算式にウヨウヨと数が増え、あっという間に圧倒的な場を作られてしまうというわけだ。

吉森 「2ターン目は、やめて、やめて!」

渡辺 「チュウ!」

そんな擬音付きで2ターン目に渡辺の場に登場したのは、もちろん《群れネズミ/Pack Rat》。

リミテッドでは「鬼」とされるスタートである。

そして、吉森のデッキは『白緑ビートダウン』。メインでは、これに対処する手段はほとんど無い。

起動! 起動!

2ターン目に登場した《ネズミ》はあっという間に大軍となり、吉森を投了に追い込んだ。

吉森 「負けました。っていうか、2キルされたーー!!!」

リミテッドの時と同じく、わずか1分の瞬殺劇だった。

渡辺 1-0 吉森

元千葉勢、吉森(神奈川)
●Game 2
先手の吉森、《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim》から2ターン目に《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter》と好調な立ち上がり。

渡辺も《究極の価格/Ultimate Price》で《アヴァシンの巡礼者》を殺してゲームスピードを緩やかにしようと試みるも、そもそも先手と後手の差があり、そう簡単にはいかない。

そして、吉森の手札からは白緑の強靭なクリーチャー達が続く。

吉森が《獰猛さの勝利/Triumph of Ferocity》をキャストして、攻め手が途切れないことを確認すると渡辺はアッサリと投了を告げた。

渡辺 1-1 吉森

吉森 「意地っていうか、いくら乗り手がナベだとしてもハンデ有りのデッキには負けたくはないよね。でも、勝ってきてるんだよなぁ(笑)」

渡辺 「負ける時は、普通に負けると思うよ(笑)」

●Game 3
渡辺は微妙な初手をマリガン。
1マリガンで、《群れネズミ》のある手札をキープする。

そして、再び2ターン目に《群れネズミ/Pack Rat》。

第1ゲームと同じく瞬殺劇になってしまうのかとも思われたが、吉森も《忘却の輪/Oblivion Ring》でこれを対処。サイドボード後なので、やはりそう簡単にはいかない。

こうして一波去ると、緩やかな中盤戦に突入。

渡辺が《ボーラスの占い師/Augur of Bolas》→《熟慮/Think Twice》→《捨て身の狂乱/Desperate Ravings》と着実にアドバンテージを稼いでいけば、吉森も《セレズニアの魔除け/Selesnya Charm》→《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter》と戦線を構築。

《ロクソドンの強打者》のサイズが活きる展開になるかと思われたが、渡辺はこの場を《悲劇的な過ち/Tragic Slip》→《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》でフラッシュバックと一気に盤面を捌く。

しかし、吉森も《スラーグ牙/Thragtusk》と後続を展開。

これには渡辺も参ったかと思われたが、渡辺は《究極の価格/Ultimate Price》+《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》のフラッシュバックでトークンもろとも一掃。

《瞬唱の魔道士》が強いのか、渡辺が強いのか、もしくは両方なのか。
とても渡辺がハンデ有りのデッキとは思えない攻防になっている。

渡辺の息切れが心配されるところだが、《捨て身の狂乱》のフラッシュバックがここで活きる。
よくデッキが出来ている。

しかし、現実はそんなに甘くない。
吉森の手札からは、2枚目の《スラーグ牙/Thragtusk》が。

吉森 「通っちゃう?(笑)」

渡辺の手札は土地2枚で、カウンター呪文は飛ばない。

更に、吉森の手札から《情け知らずのガラク/Garruk Relentless》の追い打ちもあり、これは勝負あり。

渡辺 1-2 吉森

渡辺 「やっぱ、《スラーグ牙/Thragtusk》はカードとして別格の強さだな。身に染みるわ(笑」

こうして試合は終わったのだが、渡辺の友人が面白い話をカバレッジ班に持ってきた。

友人A 「ナベが《群れネズミ/Pack Rat》使ってるからだろうね。今さっき、トレーダーが必死になって《群れネズミ》をトレードで集めてたよ(笑) ナベの影響力ありすぎでしょう(笑)」

確かに、これは冗談みたいな話である。しかし、渡辺の近年の活躍はそれ程までに凄まじいものがあり、ある種の絶対的信頼感があるということを象徴する1エピソードとして伝説になるかもしれない。




「URB Control」 / Yuuya Watanabe
『関東Finals2012』初日スタンダード
Main Deck Side Board
3《島/Island》
1《沼/Swamp》
4《蒸気孔/Steam Vents》
4《血の墓所/Blood Crypt》
4《硫黄の滝/Sulfur Falls》
4《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》
4《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
1《僻地の灯台/Desolate Lighthouse》

4《群れネズミ/Pack Rat》
4《ボーラスの占い師/Augur of Bolas》
4《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》

4《火柱/Pillar of Flame》
4《灼熱の槍/Searing Spear》
3《究極の価格/Ultimate Price》
4《熟慮/Think Twice》
2《捨て身の狂乱/Desperate Ravings》
3《中略/Syncopate》
3《ラクドスの復活/Rakdos's Return》
4《否認/Negate》
3《ラクドスの魔除け/Rakdos Charm》
3《強迫/Duress》
2《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
2《ネファリアの溺墓/Nephalia Drownyard》
1《戦慄掘り/Dreadbore》