■Round 5: 行弘 賢(和歌山) vs. 菊地 翔(東京)

By Masami Kaneko


一攫千金。

賞品の大きな大会では当然、賞品を狙って強豪プレイヤーも訪れる。

その中でも日本に4人しか居ない、トッププレイヤーの称号であるプラチナレベルを保持している行弘の鼻息は荒い。なにしろ彼は、和歌山から東京まで遠征してきたのだ。当然賞品の配分も気になるところ、主催の梅咲にしきりと「Foilカードセットは何位までですか!?」と訊ねていた。

「真剣さが違う」とここまできっちり4-0してきている。

菊地はPWCを始めとした関東草の根で練習を積む若手勢。こちらもここまで4-0、勢いにのっている。ここで賞金首を狩ることが出来るのか。

●Game 1
《墓所這い/Gravecrawler》《夜の犠牲/Victim of Night》といった手札をキープした菊地。
一度マリガンするも十分な手札をキープした行弘。

先手の《墓所這い/Gravecrawler》に対して、後手2ターン目の《議事会の招集》も《夜の犠牲》で対処され少々苦しい行弘。しかし《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim》《議事会の招集/Call of the Conclave》を重ねて盤面を止める。

いや、止まらない。《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》が追加され、盤面は止まらなかった。さらに《魂の洞窟/Cavern of Souls》からの宣言が「デビル」であり、《地獄乗り/Hellrider》を匂わせている。ライフはまだ多少余裕が有るように見えるが、《地獄乗り》も考えるといつ死んでもおかしくない。

《地獄乗り》は覚悟しているが、攻めていかなくてはならないと《教区の勇者/Champion of the Parish》《銀刃の聖騎士/Silverblade Paladin》と連続展開。【3/3】のケンタウルストークンと結魂し、ついに菊地に初めてのダメージを与えた。

菊地は予定調和の《地獄乗り/Hellrider》。ここからのフルアタックに対して、行弘はブロックを考えていく。

和歌山からの遠征、行弘
というのも、行弘の現在の盤面のクロックは13点。そして菊地のライフは14点。
《教区の勇者》を強化する人間カードを引くか、《怨恨/Rancor》や《セレズニアの魔除け/Selesnya Charm》を引ければ、それで勝利なのだ。

行弘は意を決して、一方的に勝てる《墓所這い》以外はブロックせず。ライフは2点まで落ち込む。つまり、次のターンに勝てなければほぼ負けだろう。

菊地もそれはわかっている。祈るようにターンを返す。何か引かれれば負け。引かれなければ勝ち。

祈るように、カードを重ねて、力を込めてドローした行弘。しかしそのカードを見てもまだ動かない。いや、動けない。フルタップである対戦相手に対して遠慮する理由は無い。勝てるカードを引いたのなら叩きつければ良い。それだけだ。ならば。動かないということは、勝てるカードを引かなかったのだ。菊地はどこか安心した顔をしている。ターンさえ来れば。

行弘はとりあえずとばかりに《銀刃の聖騎士》と3/3トークンで攻撃し、10点のダメージを与える。
そして、何もせずにターンを返す。

菊地の勝利は目前だ。戦闘ダメージを与える必要すらない。ただ単に攻撃すれば、《地獄乗り》の能力だけで削りきれる。いや、そもそも攻撃宣言さえする必要は無い。手札のこの、《火柱/Pillar of Flame》さえ打てばそれで勝ちだ。
菊地は《火柱》をプレイした。

だが。



文字通り"窮地"だった行弘を、たったの1枚のカードが救ってくれた。
行弘の祈りは勝てるカードを引きはしなかったが、しかしその信仰はこのターンの《火柱/Pillar of Flame》を、《地獄乗り/Hellrider》の能力を、戦闘ダメージを全て防いだのだ。

そして。
その信仰心によってターンを手にした行弘。再び祈るように、力を込めてドローした行弘の元には。



祈りは、通じた。

行弘 1-0 菊地

『黒赤ミッドレンジ』菊地
●Game 2
後手ながら《アヴァシンの巡礼者》からの《議事会の招集》というロケットスタートの行弘、《悪名の騎士》《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger》も気にせず《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter》を続けていく。
返しの賛美での《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger》の攻撃は《アヴァシンの巡礼者》が早めのチャンプブロック。

【3/3】トークンが攻撃にいくがそこには《灼熱の槍》。盤面が厳しくなったに見えたが、《情け知らずのガラク/Garruk Relentless》が即座に《悪名の騎士》を屠り、そして反転する。

しかし、菊地の手札は高カロリー。《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》、《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》の選択肢から《士気溢れる徴集兵》で《ヴェールの呪いのガラク》を奪い去り、マイナス1能力を使用。
《ヴェールの呪いのガラク》に対処すると共に、手札に追加の《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》を加えることになった。

行弘も《銀刃の聖騎士》で《ロクソドンの強打者》に二段攻撃を与え攻撃。これは《士気溢れる徴集兵》が犠牲になる。行弘はさらに《議事会の招集》で後続を。菊地も返しで《究極の価格/Ultimate Price》で《銀刃の聖騎士》を除去したうえで《墓所這い》につなげる。両者一歩も譲らない。





《銀刃の聖騎士》2枚目にも《ゲラルフの伝書使》でブロックしたうえで行弘のライフを削り、さらに自身のターンで《士気溢れる徴集兵》により《ロクソドンの強打者》を奪い、結魂を解除する。

結魂が解除されてしまった行弘だが、《教区の勇者》を引き込み改めて《銀刃の聖騎士》と結魂。クロックを維持していく。が、菊地の《雷口のヘルカイト》で一旦盤面がストップ。行弘も流石に攻められずターンを返す。

そしてこの時の勢いは菊地にあった。《ゲラルフの伝書使》《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》とトップデッキを重ね菊地が勝利をもぎ取ったのだった。

行弘 1-1 菊地


●Game 3
先手の行弘、《議事会の招集》をはじめテンポ良く展開できそうな手札をキープ。
菊地は《破壊的なかがり火/Consuming Bonfire》2枚や《悪名の騎士/Knight of Infamy》をはじめとしてこのマッチアップで強そうな手札だが、赤マナが無い。菊地は意を決してキープする。赤マナさえ引ければ。

《議事会の招集》で【3/3】を展開した行弘に対して《悪名の騎士》。さらに《栄光の騎士/Knight of Glory》に対して2体目の《悪名の騎士》と両者負けじと展開していく。

白い騎士が不可避の攻撃を加え、さらに行弘の場に《情け知らずのガラク/Garruk Relentless》と共に狼トークンが展開される。

《悪名の騎士》の1体がガラクに攻撃を加えにいくが、これは【3/3】ケンタウルストークンと相打ち。ガラクを除去出来ない。

仕方ないと《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger》《戦墓のグール》と展開するが、しかしこれはこれで十分に強力だ。

しかし行弘の展開は上を行く。《栄光の騎士》の2体目を追加したうえでガラクの能力で《悪名の騎士》を打ち倒し、狼トークンによって4点のダメージを与える。さらには《ガヴォニーの居住区/Gavony Township》を置いて、次のターンにも勝ちそうな盤面を作り上げる。盤面の攻めも守りも完璧だ。盤石の体制である。そう、盤面は。

この一見盤石に見える盤面が、実は薄氷の盤面であることを行弘は知らないだろう。もしも菊地がここでアンタップでプレイ出来る赤マナを引けば、行弘のパーマネントは全て失われるのだ。

祈るようにカードを引く菊地。赤マナを、赤マナを引ければ。

しかし祈りは通じない。赤マナが引けない。
行弘は落ち着いて《ガヴォニーの居住区/Gavony Township》で自陣を強化しながら攻撃していく。
そして菊地の祈りは、最後まで神に通じることは無かったのだった。

行弘 2-1 菊地

行弘賢 5-0!