■Round 11: 寺内 辰也(京都)VS牛島 正規(埼玉)

By Jyunya Takahashi

初日全勝からモダンラウンドも3連勝の合計10連勝のロケットスタートを切った絶好調の牛島に、モダンラウンド4連勝の寺内が食らいつく。

牛島が使用しているデッキは、今年の春に行われたGP横浜にて旋風を巻き起こした『Kiki-Pod』の改良型だ。純粋な3色のものではなく、アメリカ型と呼ばれる青入りの構成で《詐欺師の総督/Deceiver Exarch》や《幻影の像/Phantasmal Image》がアクセントになっている。

対する寺内の使用デッキはオーソドックスな無色トロンだが、ところどころで《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》などの興味深い選択がされている。


●Game 1
先手をとったのは寺内。初手の7枚を開くと、すこし悩んだもののキープを宣言した。
《ウルザの塔/Urza's Tower》から《彩色の宝球/Chromatic Sphere》と寺内は始めるが、2ターン目に土地が詰まってしまった。次のターンに期待を託して《彩色の星/Chromatic Star》を場に出す。

対する牛島は好調で《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》と《森/Forest》から《根の壁/Wall of Roots》《貴族の教主/Noble Hierarch》を展開して着実に盤面を作り上げている。

土地を切望する寺内の3ターン目だったが未だに2枚目の土地の姿は見えない。とりあえず《彩色の星》を生贄にして土地を探すも希望は空振る。

足踏みする寺内をよそに牛島は、《根の壁》、《幻影の像》(コピー《根の壁》)、《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》と盤面を一気に拡張する。残る手札は《召喚の調べ/Chord of Calling》で、きっとフィニッシュまでの時間はそう長くない。

やっと《幽霊街/Ghost Quarter》を見つけた寺内は《彩色の星》と《探検の地図/Expedition Map》を並べて遅れの挽回を図るが、そのエンド時に牛島が動いた。

本大会も10連勝と抜群の成績、『GP横浜2012』Top8の牛島。

牛島はX=3の《召喚の調べ/Chord of Calling》から《永遠の証人/Eternal Witness》を呼び出すと、今しがたプレイした《召喚の調べ》を回収する。そしてターンが移ったメインで《召喚の調べ》をX=4でプレイして《修復の天使/Restoration Angel》からの《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》で無限コンボを狙う。

……が、若干マナが足りないようだ。唱えてしまった以上、とりあえずはと《修復の天使》を呼び出し《永遠の証人》を明滅して虎の子の《召喚の調べ》を手に返す。このままターンを返すのはやや癪だが、次のターンには確実にコンボが決まるため我慢の選択をする。

これは好機と《彩色の星》を生贄に赤マナを生成して《紅蓮地獄/Pyroclasm》に手をかけた寺内だったが、よく見ると牛島の場がどうやっても《召喚の調べ》をX=5でプレイできる状況になってしまっている。やはり序盤の遅れが響いたか。

寺内 0-1 牛島

緑赤トロン』、寺内
●Game 2
先手はふたたび寺内。今度はいい塩梅だったようで、速やかにキープの声を返す。

ここで運に恵まれなかったのが牛島で、痛恨のダブルマリガンに見舞われてしまった。

寺内は《ウルザの塔/Urza's Tower》から《彩色の宝球》、2枚目の《ウルザの塔》を置くと《森の占術/Sylvan Scrying》で《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》をサーチしてリーチがかかる。

この動きを前にダブルマリガンのビハインドのある牛島は《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》を力なく展開する。

寺内は《探検の地図》から《ウルザの鉱山/Urza's Mine》をサーチすると、2回ほど《彩色の星》でドローを進めて《ウギンの目/Eye of Ugin》までたどり着いた。これで次のターンはサーチにとどまるものの、その次には何かしらのエルドラージが召喚されるだろう。もう牛島に猶予は残されていない。

だが、そこで牛島に残されていた選択肢はX=1の《召喚の調べ》でマナベースを拡張するのみだった。辛うじて《修復の天使》からの《鏡割りのキキジキ》が見えるものの、その希望は寺内の《無限に廻るもの、ウラモグ/Ulamog, the Infinite Gyre》が刈り取った。

寺内 1-1 牛島

●Game 3
先手をとった牛島は簡単にキープを宣言したものの、寺内は土地が《ウルザの塔》が1枚のみの手札で大いに悩んでいる。Game1のように《ウルザの塔》1枚で止まってしまう展開がよぎったのか悩みに悩みぬく。即座にキープできる内容なのだが、これも大型トーナメントならではのプレッシャーが惑わせているのだろう。

しばらく唸った後にキープを決めると、寺内は《ウルザの塔》から《彩色の宝球》を場に出した。続くターンには《古きものの活性/Ancient Stirrings》から待望の《ウルザの鉱山》を見つけてひとまずは安心できる展開だ。

対する牛島は土地が1枚で止まってしまったものの、1ターン遅れで2枚目の土地にたどり着き《根の壁》を場に出した。

注目の寺内の3ターン目の《古きものの活性》は《ウルザの魔力炉》を見つけ出すことはなく、コンボを妨害する《減衰のマトリックス/Damping Matrix》が手札に入る。これじゃないけどこれでもいい、というもやもやは残るが、《森/Forest》を置けたことで文句は言えない状況だ。

牛島は遅れを取り戻すように《根の壁》と《極楽鳥/Birds of Paradise》を場に出してなんとかマナの基盤を整える。

この動きを見て寺内は「なんか嫌な予感がするんだよな」とこぼしながらも、今引き込んだ《探検の地図》で《ウルザの魔力炉》に到達した。これで次のターンには大量のマナが寺内に届けられるはずだ。



だが、ここで寺内の予感は悪くも的中する。牛島の残された手札から繰り出されたのは《塩まき/Sowing Salt》だったのだ。
せっかく揃ったウルザトロンは瓦解する。寺内の手札に眠った重量スペルがとたんにおとなしくなった。

さらに続くターンには2枚目の《塩まき/Sowing Salt》が飛び、残ったウルザ地形は僅かに1種類のみとなり寺内の肩ががっくりと落ちる。

一応牛島のコンボとサーチを《減衰のマトリックス》で制限しているものの、寺内の勝機はなかなか見えない。牛島の《鏡割りのキキジキ》と《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》がじわじわとライフを削り落としていく。

だが、勝機は見えなくとも寺内はみすみす負ける訳にはいかない。《紅蓮地獄》と《全ては塵》で牛島の攻勢をはねのける。試合時間の終わりが迫り、手が早まる両者だったが、消耗戦の末、お互いになかなか決定打に巡り合えない。

延長ターンにもつれ込んでようやく7枚の土地を揃えた寺内は《解放された者、カーン》にたどり着いたが、もはや自分が勝利するにはターンが残されておらず、牛島の勝利を遠ざけることに専念する。

それでも薄い勝ち筋を見出した牛島は、《解放された者、カーン》の+能力に対応して《召喚の調べ》から《鏡割りのキキジキ》を呼び出すものの、それを寺内は即座に《紅蓮地獄》で焼き払った。

これで両者に勝利条件がなくなったため、フルタイムの消耗戦の末、強者たちの戦いは引き分けで幕を閉じた。

寺内 1-1-1 牛島