■Round 1:岡田 尚也(東京) vs. 寺内 辰也(東京)

By Masami Kaneko


Finals。
かつて「若手の登竜門」と言われたFinalsは、数々のトッププレイヤーを排出してきた。
"現役最強"こと渡辺雄也も、スタートはFinalsだった。本人も自身の"思い出"として「Finals準優勝」と語っている。
"鬼神"八十岡翔太もまた、トーナメントシーンに現れたのはかつてのFinalsが初めてである。


その、伝統あるその大会の中止が発表された。
Finalsという大会の歴史に終止符が打たれた。
歴史と伝統の終焉。時代の移り変わり。終わっていくもの。
「年末といえばFinals」。そう言われた時代は終わってしまったのだ。

……しかし。
今、Finalsは、ここにある。

この大会を、終わらせてはならないと。
そう感じたDCI認定Lv3ジャッジの梅咲は、せめて、関東ローカルだとしても、"Finals"の名を冠した大会を開きたいと考えた。そしてその想いは人を呼び、参加者総勢224名の大きな大会となって実ったのだ。

これからブレイクを狙う若手から、トッププロまで実に様々な人が集まったこの大会。大きなイベントに、商品の豪華な大会に、年末のお祭りに、梅咲の想いに、それぞれ色々な物を抱えながらこの大会に集まったのだ。

昨年のFinalsをオリジナルの「感染デッキ」で優勝した岡田は、今年もまたオリジナルのデッキを持ってきた。《蒸気孔/Steam Vents》と《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger》の共存する禍々しいデッキだが、そのパワーはレシピに入っているカードの強さを見ればよく分かる。GP名古屋でも二日目に抜けており、十分な調整をしてきたようだ。

一方の寺内は関東のカードショップ晴れる屋で日頃から練習を重ねており、店が出来た時から通い続けているとのこと。
お互い勝って勢いに乗りたい1回戦。
"Finals"が、今、はじまる。

昨年度『Finals』王者、岡田 

『黒赤ミッドレンジ』、寺内
●Game 1
《火柱/Pillar of Flame》《夜の犠牲/Victim of Night》《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger》に土地の手札をキープした寺内。
序盤のクロックに不安はあるものの、土地も揃っており十分な手札だ。

一方の岡田、《ゲラルフの伝書使》2枚に《蒸気孔/Steam Vents》が2枚、そして《魂の洞窟/Cavern of Souls》2枚という悩ましいスリーペアが揃っている手札を熟考の末にマリガンした。
マリガンした手札は《灼熱の槍/Searing Spear》2枚に《強迫/Duress》と土地というものだが、土地から赤マナが出ない。これも悩んだ末に、意を決してキープする。

ゲームは岡田の2ターン目の《強迫》から動き出す。
寺内の《ラクドスの魔鍵/Rakdos Keyrune》を落とし、しかし返しに《ゲラルフの伝書使》。
赤マナが引けない岡田は動けない。いや、あの伝書使は例え赤マナを引いたとしてもカード1枚では対処出来ない。さらに《墓所這い/Gravecrawler》を引いた寺内、対処しにくいクロックで岡田のライフを着実に削っていく。追加の《強迫》で《火柱》を落とすものの、盤面に対処出来ていない岡田は辛い。

寺内はダメ押しの《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》をトップデッキ。これも含めて盤面に全く対応出来ない岡田、無念の投了。

岡田 「無理だな。」

岡田 0-1 寺内

少ない情報からサイドボードを考える寺内。結局見せてもらえたのは、《沼》、《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》、それに《強迫》が2枚だけだ。相手のデッキは一体何なのか。想像しながらサイドボードを検討していく。

一方の岡田は、対戦相手のデッキを知っている。当然想定してきた相手、サイドボーディングもスムーズだ。

●Game 2

土地が《魂の洞窟》しか無いハンドをマリガンする岡田。
寺内も土地が2枚であり、さらに一番要らない《山》が含まれているためマリガン。

岡田は結局《蒸気孔》《魂の洞窟》《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》2枚といった手札をキープする。
寺内は土地が1枚ながらも軽量クロックの多い手札をキープ。

《墓所這い》《戦墓のグール》と並べるが土地が1枚で止まってしまった寺内。
岡田は2ターン目に《魂の洞窟/Cavern of Souls》を吸血鬼指定で置いていく。《吸血鬼の夜鷲》へリーチだ。

3ターン目に着地した《吸血鬼の夜鷲》に対しても寺内は土地が引けない。攻撃するわけにもいかず、岡田にターンを返す。
土地を置いたうえで《吸血鬼の夜鷲》で攻撃した岡田、《究極の価格/Ultimate Price》を《戦墓のグール》に打ち込み、ダメージレースでも完全に逆転した。

ようやく2枚目の土地を引けた寺内は《灼熱の槍》で《吸血鬼の夜鷲》には対処するものの、そのまま駆け抜けてくる《雷口のヘルカイト》。既にライフは残り9だ。

なんとか土地を引いて《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》でヘルカイトに対処するものの、すぐに2匹目の《雷口のヘルカイト》の駆け込まれ、寺内はこの2体目のドラゴンには対処出来なかった。

岡田 1-1 寺内

「思ってたデッキと違いました?」と問いかける岡田、オリジナルデッキの喜びだ。

●Game 3
またもお互いマリガンでスタート、寺内の土地無しvs《魂の洞窟/Cavern of Souls》1枚。それにしても、岡田はこの土地に好かれ過ぎている。

土地が2枚ながらも《戦墓のグール》《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger》《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》2枚などで高カロリーの手札を寺内キープ。《戦墓のグール》から3ターン目に《ゲラルフの伝書使》を無事プレイした。

岡田も悩みに悩んだうえキープ。今度の土地は《蒸気孔/Steam Vents》と《魂の洞窟》、本当に好かれている。2ターン目には吸血鬼と宣言し《魂の洞窟》を。黒マナさえ引ければ、《吸血鬼の夜鷲》がプレイ出来る構えだ。



無事黒マナが引けた岡田は、「とりあえず」、と《脳食願望/Appetite for Brains》をプレイ。
……が、見えたのは《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》2枚と《雷口のヘルカイト》という土地を置かれればたたみたくなるような手札。「とりあえず」、と貴種のうち1枚を落とす。あとは土地を引かれないように祈るだけだ。

まずは1ターン祈りが通じた岡田、じっくり考えて《魂の洞窟/Cavern of Souls》で「ドラゴン」を宣言し、《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》のリーチ宣言だ。場には《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》を出し、あとは土地さえ引かれなければ……!

しかし現実は非情である。二回目の祈りは通じなかった。《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》が飛んできてしまう。

仕方なく《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》が《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat》のブロックに向かうが、勿論これは《戦墓のグール/Diregraf Ghoul》が生贄に捧げられるだけだ。

岡田の追加の土地は3枚目の《魂の洞窟》、宣言は「ゾンビ」で「吸血鬼」「ドラゴン」と共に盤面に並び異様な光景となっている。《雷口のヘルカイト》が登場するが、これもまた《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger》が"不死"するだけだ。

ブロッカーとして立たせた岡田のヘルカイトは、同じく出てきた寺内の《雷口のヘルカイト》によってタップされ、岡田のライフは削りきられてしまうのだった。

岡田 1-2 寺内

寺内Win!