■Final Match: 牛島 正規(埼玉) vs. 遠藤 亮太(埼玉)

By Masami Kaneko

『関東Finals2012』もついに決勝戦。その席についたのは、共に同じコミュニティでマジックをする2人だった。

牛島は、トリコフラッシュで初日全勝からポールポジションでTop8一番乗り。圧倒的なパフォーマンスを見せつけた。
遠藤もまた、グレイビー組の安定した強さを見せつけた。準決勝では2人と同じコミュニティの四本を倒しての決勝戦進出である。「今日はツキまくりです!」と言いながらも決してツキだけではない実力を見せた。

共に練習し、戦った"仲間"。
時に勝ちの喜びを分かち合い、時に負けを愚痴りあった、大切な"仲間"
しかし、この一時。

お互いは、最大の"敵"だ。

『青白赤フラッシュ』牛島

●Game 1
遠藤の先手ではじまったゲーム。

《森》1枚とマナクリーチャーの手札を、流石にこれはプレイ出来ないとマリガンした遠藤。

《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》2枚に《ルーン唱えの長槍/Runechanter's Pike》、《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》と土地3枚の手札をキープした牛島。

お互いに談笑しながらも目は真剣だ。

遠藤が再度見た6枚は、《セレズニアの魔除け/Selesnya Charm》《大軍のワーム/Armada Wurm》に《ガヴォニーの居住区/Gavony Township》を含む土地が4枚というもの。
なんとも立ち上がりの遅そうな手札に首を傾げるが、しかし贅沢は言えずキープ。

2ターン目に《アヴァシンの巡礼者》を引いた遠藤、3ターン目に攻撃に向かわせるが、ここには《アゾリウスの魔除け》が飛ぶ。が、しかし遠藤の場には追加戦力《ロクソドンの強打者》が。流石今日一日ツいてきた男、引きも違う。

対して牛島は《ボーラスの占い師/Augur of Bolas》をプレイするものの、能力は不発。《ロクソドンの強打者》の攻撃に《アゾリウスの魔除け》を合わせれば、追加は《大軍のワーム》。後手に回ってしまい牛島はなんとも苦しい。

5マナをオープンして返した牛島に、遠藤はどのように攻撃するか少考する。2体の【5/5・トランプル】で攻撃してみると、10点が通りこれには遠藤も驚きの表情。全体除去を警戒し《ロクソドンの強打者》は展開せずに《ガヴォニーの居住区/Gavony Township》を構えていく。しかし牛島、自身のメインでも動かない。遠藤は改めて全軍突撃。今度は【6/6・トランプル】が2体に【2/2】が1体、さらに《ガヴォニーの居住区》の起動態勢も整っている。


とりあえずは、とワームトークンが《送還/Unsummon》され、さらに《アヴァシンの巡礼者》は《ボーラスの占い師》でブロック。そのうえで《大軍のワーム》自体には3枚目の《アゾリウスの魔除け》が飛ぶ。

さらにエンドに《ムーアランドの憑依地/Moorland Haunt》から出したスピリットに《ルーン唱えの長槍》を纏わせ有利な盤面を作るものの、ライフ差が有り過ぎて攻撃出来ない。

遠藤は改めて《大軍のワーム》を、《魂の洞窟/Cavern of Souls》経由で。手札の《本質の散乱/Essence Scatter》を牛島は恨めしそうに見つめている。また盤面に戻ってきた10点のクロックを、スピリットが長槍を携えて待ち受けるがなんとも心細い。そしてその牛島を守っていたスピリットさえも《セレズニアの魔除け》で撃ち落され、牛島の身を守る物は何も無くなってしまった。

牛島 0-1 遠藤


"現役最強"渡辺雄也を評して、かつて"2011世界チャンプ"彌永はこう語ったことがある。

「ナベはもともと、同世代のマジックプレイヤーと比較すればかなり下手だったし、センスも無かった。」

しかし渡辺は今、世界で一番強いと言われるプレイヤーの一人であり、それは彌永も認めるところだ。

「ナベの凄いところは、それでもとにかくマジックを続けて、ずっとちゃんと練習してきたところ。今のナベの強さは、真剣に続けてきたことの強さ。」

"マジックを続ける"こと。言葉にしてしまえばそれだけかもしれないが、簡単なことではない。本人のやる気だけでなく、就職を機に、進学を機になどの環境の変化で一線を退いていったプレイヤーは数知れず。
その中での渡辺の強さが"続けてきたこと"に対するものだとすれば、続けていくことが出来た原動力とは。

そしてこの関東Finals。決勝でぶつかったのは、共にマジックをしてきた、続けてきた2人だった。
2人のコミュニティは先日のGP横浜2012(モダン)でも「Kiki-Pod」を作り上げ、Top8に複数のメンバーを送り込んだことで記憶に新しい。
そして今回もTop4に3人のメンバーを送り込んだことで、そのパフォーマンスの高さを見せつけた。コミュニティの強さの原動力とは。

今大会において圧倒的な強さを見せたコミュニティの2人が、たった一つの"優勝"という称号を目指して戦う。
大切な、"仲間"同士で。


●Game 2
土地が1枚の手札を即座にマリガンした牛島に対して、《アヴァシンの巡礼者》《ロクソドンの強打者》《スラーグ牙/Thragtusk》、そして今日何度も勝ちを拾ってきたサイドボードカード《獰猛さの勝利/Triumph of Ferocity》が揃った強力なハンドをキープした遠藤。

遠藤の2ターン目には当然のように《ロクソドンの強打者》が場に現れ、《本質の散乱/Essence Scatter》を構えていた牛島は苦笑い。





《ロクソドンの強打者》の攻撃には《アゾリウスの魔除け》が合わさるものの、なんとここでの展開は追加の《ロクソドンの強打者》と《アヴァシンの巡礼者》!

とりあえずとばかりに《思考掃き/Thought Scour》で遠藤の《ロクソドンの強打者》と《魂の洞窟/Cavern of Souls》を落とし、さらに《イゼットの静電術師/Izzet Staticaster》で《アヴァシンの巡礼者》を同時に2体対処するが、《ロクソドンの強打者》自体は止まっていない。

4ターン目にはついに《獰猛さの勝利/Triumph of Ferocity》が追加され、これにも対処出来ない牛島は半永続的なアドバンテージエンジンの存在を許してしまうことになった。

《ロクソドンの強打者》の攻撃を受けながら解決策を探す牛島。遠藤はどのように攻めるべきか考えていく。《至高の評決/Supreme Verdict》は有るのか?ドコまで展開するべきか?《スフィンクスの啓示》で解決策を求める牛島に、遠藤が《ガヴォニーの居住区》でプレッシャーをかけていく。

《ロクソドンの強打者》の攻撃に《アゾリウスの魔除け》を合わせ、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》から《思考掃き》をプレイすると盤面は一旦静かになった。……かに見えるが、実際のところ《獰猛さの勝利》自体がなんとかなったわけではない。

が、しかし盤面は少しずつ、少しずつであるが牛島有利になってきている。追加の《スラーグ牙/Thragtusk》には《本質の散乱/Essence Scatter》を合わせ、盤面では攻めさせない。《獰猛さの勝利》の追加がプレイされるが、こちらの《スフィンクスの啓示》のドローも負けてはいない、とばかりにX=4でプレイ。《絡み根の霊/Strangleroot Geist》にも《イゼットの静電術師》の2枚目と《火柱/Pillar of Flame》を合わせ、盤面から排除し、ついに遠藤の場のクリーチャーを全て排除。ついに、《獰猛さの勝利》が機能しない場を作り上げた。

……が、しかし。攻め手も《スラーグ牙》が出てくればストップ。さらに《獰猛さの勝利》の3枚目も追加され、なんとも酷いアドバンテージ差が。このドローは獰猛過ぎる。

なんとかこれには《火柱》から《修復の天使/Restoration Angel》→《瞬唱の魔道士》能力誘発による《火柱》フラッシュバックと対応するが、更に追加された《スラーグ牙》には対処出来ない。

戦闘を絡めて《スラーグ牙》をとりあえずは対処しようとすれば、そこには《修復の天使》が。本体が残ると共にビーストトークンまで出てきてしまい、盤面・手札共に格差が酷いことに。
《ルーン唱えの長槍》を引くも、遠藤のライフは現在28。長槍は現在【+7】の修正だが、なんとも遠い数字だ。が、最大パワーは取れる。これなら、《獰猛さの勝利》も機能しない。

……と思いきや、アップキープには《セレズニアの魔除け》が装備しているスピリットに飛び、このターンもまた3+1ドロー。
この獰猛すぎるカード達に、大切なブロッカーを失った牛島が対抗する術は無いのだった。

"獰猛なる男"遠藤がカードの質、量共に圧倒し完勝!

牛島 0-2 遠藤

決勝戦が終わった直後から、2人の周りには、祝辞とマジックの話をする仲間が続々と集まっていた。
遠藤がビデオインタビューに呼ばれて行ってしまっても同じで、今回Top8に入った牛島や四本をはじめ、仲間同士で遠藤を待ちながら楽しそうに話をしていた。

マジックを続けていくうえで、一番大切なものは何だろうか?
デッキ構築力?プレイの上手さ?カードを買う資金力?
どれももしかしたら必要なことかもしれない。しかしそれだけでマジックを続けていくことは難しい。

この決勝の二人に訊けばこう答えるのではないだろうか。
この仲間が居るから、マジックが出来る。この仲間が居るから、マジックを続けていける。

共にマジックを続ける、"仲間"だ、と。

おめでとう! 『関東Finals2012』Champion、遠藤"くーぴー"亮太(埼玉)!

『関東Finals2012』優勝者、遠藤!