■DeckTech: 遠藤 亮太(埼玉)の『White Jund』  

By Jyunya Takahashi

初日のスタンダードを6勝1敗で乗り切った遠藤 亮太(埼玉)がプレーオフを見据えて二日目の相棒にと手にとったデッキは『WhiteJund』だった。

これは初日全勝の行弘 賢(和歌山)渡辺 雄也(神奈川)を筆頭としたトッププレイヤーたちの多くが選択している、まさに今大会注目のデッキだといえるだろう。

「White Jund」 / Ryouta Endou
『関東Finals2012』2日目モダン、成績優秀者デッキ
Main Deck Side Board
1《森/Forest》
1《沼/Swamp》
1《平地/Plains》
1《寺院の庭/Temple Garden(RTR)》
1《神無き祭殿/Godless Shrine(GPT)》
1《踏み鳴らされる地/Stomping Ground(GPT)》
1《草むした墓/Overgrown Tomb(RTR)》
4《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs(SOM)》
4《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs(ZEN)》
4《湿地の干潟/Marsh Flats(ZEN)》
4《怒り狂う山峡/Raging Ravine(WWK)》
1《樹上の村/Treetop Village(10E)》

4《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman(RTR)》
4《タルモゴイフ/Tarmogoyf(FUT)》
4《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》
4《未練ある魂/Lingering Souls(DKA)》
4《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf(ARB)》

3《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil(ISD)》

4《稲妻/Lightning Bolt(M11)》
2《突然の衰微/Abrupt Decay(RTR)》
2《終止/Terminate(ARB)》
3《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek(ROE)》
2《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》
2《石のような静寂/Stony Silence》
2《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》
2《ラクドスの魔除け/Rakdos Charm》
2《法の定め/Rule of Law》
1《塩まき/Sowing Salt》
1《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》
1《粉砕の嵐/Shatterstorm》
1《古えの遺恨/Ancient Grudge》
1《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》
1《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren》
1《殴打頭蓋/Batterskull》

2011年にモダンというフォーマットが設立されてから約2年が経ち、数々のコンボデッキが禁止カードの制約を受けて落ち着いてからというもの、かつてのスタンダードの覇者である『Jund』は常にモダン環境を牽引するトップランナーだ。

今年の夏に行われたプレイヤー選手権とPTラヴニカへの回帰では、渡辺 雄也(神奈川)が『Jund』を手に好成績を収めている。この環境の定番とも言うべき『Jund』だが、昨今は黒と緑と赤というジャンドカラー3色の他に4色目として白が加えられている構成が見られるようになった。これが今回紹介する『White Jund』であり、ここではその4色目の秘密に迫ってみよう。

《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》が加わってスタンダードの頃のような出足の遅いイメージは払拭され、環境に存在する他のデッキに比べて対策されにくく安定したパフォーマンスを発揮できることが評価されて3色の『Jund』はPTラヴニカへの回帰を機に一気に流行した。

何かが突出しているわけでもないのだが、スピード、妨害、アドバンテージといった基本的なパラメータが安定して高いデッキなのだ。  《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》《闇の腹心/Dark Confidant》が枚数のアドバンテージを稼ぎ出し、《稲妻/Lightning Bolt》《思考囲い/Thoughtseize》が軽快に対戦相手に干渉する。そうしてもつれ込んだゲームを《タルモゴイフ/Tarmogoyf》や《怒り狂う山峡/Raging Ravine》というヘビーパンチャーが速やかに殴り切る。

このマジックの基礎を固めたようなお手本のようなコンセプトは、デッキの構造的に不利なデッキ(無色トロンや親和、感染など)には勝てないものの、環境に存在するその他のデッキには堅実な成績を保ってくれる。  ただ、いくつかの不満が3色の『Jund』にはあった。

それは苦手なデッキをとことん苦手とする点や、ミラーマッチが不毛な消耗戦でどちらが有利ともつかない展開になりやすいところだったのだが、それらの不満を解消する工夫をしたのが『Team Channel Fireball』のJosh Utter-Leyton(USA)の『White Jund』だったのだ。GPシカゴでお披露目となったこのデッキは快進撃を続け、その決勝戦は『White Jund』のミラーマッチで幕を閉じた。

クリスマスなのでケーキを食べる遠藤。


その快進撃の鍵は《未練ある魂/Lingering Souls》にある。

ミラーマッチにおける消耗戦を克服し、苦手な親和や感染には貴重な飛行ブロッカーを生み出すことができるからだ。元来より『Jund』にはトークン戦術が有効だという標語にはじまり、《未練ある魂》は『Jund』対策の代名詞でもあったのだが、ついには『Jund』自身が採用することとなった。

また、サイドボードに採用されている《石のような静寂/Stony Silence》は、親和とSecondSunrise、無色トロンといった苦手なデッキたちへのキラーカードである。白という4色目を加えたことで得意なマッチアップをより有利に、苦手なマッチアップを改善することに成功している。

最近ではWilly Edel(ブラジル)が開発した『White Jund』ミラーマッチを想定して《未練ある魂》対策の《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》を積んだ形も見られるが、『Jund』らしさである高い安定性が失われているという指摘もあってあまり流行はしていない。

このような具体的な対策ですら成立しないとなると、『White Jund』を打ち倒すのはひどく骨が折れそうだ。

遠藤 「俺が現在のモダン環境を十分に理解しているとはいえないけど、とりあえず、この『White Jund』に明らかな欠陥が見えない以上は使わない理由はないってことくらいはわかるよ。そして今回使ってみて、その明らかな欠陥ってのが早々見つからないってこともわかったね。これを使うのが安定プレイ。」

10回戦が終了して9勝1敗、モダンラウンド3連勝を決めた遠藤は上機嫌に語ってくれた。彼も現状では『White Jund』を倒すベストな方法は環境にないとしている。はたして今大会では、この最強と噂される『White Jund』を攻略するデッキは現れるのだろうか。