■Deck Tech: 寺内 辰也の『赤緑トロン』

by Atsushi Ito

 PTQドラゴンの迷路のシーズンに入り、再びモダンの季節がやってきた。

 依然としてデッキの種類が多く、どのデッキを選べばいいのか悩みがちなこのモダン環境。 そんな中、メタゲームを見据えたデッキ選択と綿密なディテールの調整で、関東ファイナルズ2日目モダンのスタンディング上位をキープし、見事トップ8に滑り込んだ者がいた。

 赤緑トロンを駆る寺内だ。

 既にモダン環境では馴染み深いアーキタイプとなったこの赤緑トロンだが、今メタゲームでどのようなポジションにあるのか、そしてどのようなレシピが良いのか。 赤緑トロンを使用して好成績を残した彼にインタビューしてみることにした。

−− 「今回赤緑トロンを選択したのは、どのような理由からでしょうか。」

寺内 「やはりモダン環境の中心で必ず一定数はいるジャンドに対し、かなり勝ちやすいのが大きいですね。2日目7回戦やったら2回は当たるだろうと踏んでいました。まあ実際はエルフ、トリココン、緑白Hate-Bears、Tribal Zoo、ラクドスゾンビ、Kiki-Pod2回と、1回も踏まなかったんですけどね。今年開かれたグランプリ横浜では青白《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》を使用して46位に入賞したのですが、その時と違って《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》がある今、安定のジャンドを選択するプレイヤーは多いだろうと読んで、トップメタを倒しにいくことにしました。」

−− 「なるほど、参考になるメタゲーム読みです。それに、結果的にジャンドに当たらなくても勝てたということは、そもそも赤緑トロンというアーキタイプのデッキパワーが高いというのもあるんでしょうね。」

寺内 「そうですね。ウルザ土地2種と《探検の地図/Expedition Map》あるいは《森の占術/Sylvan Scrying》という手札が結構来るので、相手のデッキに関係なく、圧倒的なマナ量からの《解放された者、カーン/Karn Liberated》《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine》といった大技でひねり潰せるのが魅力だと思います。」

−− 「デッキレシピの話に移ると、メインボードではデッキの骨子は一般的なリストと大差ないですが、いくつかセンスが光るカード選択をされていますね。《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》と《全ては塵/All Is Dust》は、どういった意図に基づく採用でしょうか。」

寺内 「前者はコンボデッキを意識した採用ですね。《ワームとぐろエンジン》と違って2回のアタックで十分なので、プレッシャーがかけやすいです。それと、Kiki-Podの《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》など、一時的にコントロールを奪うカードに耐性があるのも良いですね。それから後者は、これはサイドからの《石のような静寂/Stony Silence》をケアした形になっています。最近はジャンドにも白が足されており、親和とトロン、そしてサニーサイドアップといった複数の主要メタデッキに効く《石のような静寂》は、置かれる確率がかなり増えているので、サイド後は機能不全に陥りやすい《忘却石/Oblivion Stone》と入れ替える形になりますね。サイドに2枚でも良いのですが、サイド候補が16枚あってはみ出たので1枚メインに移しました。」



『赤緑トロン』、寺内。

−− 「さすが、1枚1枚とてもよく考えられていますね。次にサイドボードについては、《自然の要求/Nature's Claim》《古えの遺恨/Ancient Grudge》《焼却/Combust》あたりはメジャーだと思いますが、残りは枚数も含めて、経緯が気になる構築ですね。」

寺内 「サイドボードの構築にあたっては、このトロンの開発者であるうんぽぴんさんにアドバイスをもらいつつ、最終的に自分で検討して作りました。枚数については、こういう1枚とか2枚を組み合わせたサイドボードが好きなんですよね。相手に読まれにくいのが良いんですよ。」

−− 「確かに、サイドカードを相手に読み切られてしまうのは不利につながりますからね。それでは、個々のカードの採用理由をお伺いしたいのですが。」

寺内 「まず《スラーグ牙/Thragtusk》については、《ワームとぐろエンジン》と違って《流刑への道/Path to Exile》に強いのと、バウンスに耐性があるのが《風景の変容/Scapeshift》デッキ相手などで重宝しますね。《精神壊しの罠/Mindbreak Trap》については、見た目通りストームとあとついでにサニーサイドアップ対策ですが、《法の定め/Rule of Law》などと違って非公開情報なので相手がぶっぱしてくるのをシャクりやすいというのが採用の決め手です。《精神隷属器/Mindslaver》は、コンボデッキ相手の必殺技ですね。」

−− 「トロンのサイドボードによく見る《呪文滑り/Spellskite》が採用されていないというのも少し特徴的だなと思うのですが、この点はどうなんでしょうか。」

寺内 「《呪文滑り》は主に《欠片の双子/Splinter Twin》デッキ対策ですが、《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》を防げないので対策としては不完全なんですよね。それで《減衰のマトリックス/Damping Matrix》と《倦怠の宝珠/Torpor Orb》にしています。これらは同じく《鏡割りのキキジキ》をコンボパーツにする《出産の殻/Birthing Pod》デッキにも効きますし。それでも、《出産の殻》デッキに対しては起動型能力と誘発型能力はどちらを封殺するにしても裏目がありえるので、1枚ずつ散らしてあります。あと一応《減衰のマトリックス》はトロン同型にもサイドインしますね。」

−− 「そういえばこの《減衰のマトリックス》というカード、自分のアーティファクトの起動が封じられるのは大丈夫なんでしょうか。」

寺内 「好きなタイミングで《自然の要求》で自分で割ることができるので、被害はありますがそこまで負担ではないですね。メリットの方が大きいと判断しました。」

−− 「最後に、モダンラウンドを終えて、この75枚については何か不満はありましたか。」

寺内 「これが明日以降も完璧な75枚だと言うつもりはないですけど、少なくとも今日戦い抜く分には、変えようと思った部分はないですね。とても満足いくレシピでした。」

−− 「丁寧なご説明、ありがとうございました。」

 寺内については、デッキのどの部分について質問しても、打てば響くように明確な回答が返ってきたのが印象的だった。

 加えて、既存のレシピに胡坐をかくことなく、メタゲームや相手側のサイドボーディングまで見据えたこの緻密な構築。 寺内と彼の赤緑トロンには、今後も活躍が期待できそうだ。
「GR Tron」 / Tatsuya Terauchi
『関東Finals2012』2日目モダン【5-1-1】
Main Deck Side Board
2《森/Forest》
4《ウルザの塔/Urza's Tower》
4《ウルザの鉱山/Urza's Mine》
4《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》
4《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》
1《ウギンの目/Eye of Ugin》
1《幽霊街/Ghost Quarter》

2《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine》
1《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》
1《無限に廻るもの、ウラモグ/Ulamog, the Infinite Gyre》
1《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》

4《解放された者、カーン/Karn Liberated》

4《彩色の宝球/Chromatic Sphere》
4《彩色の星/Chromatic Star》
4《探検の地図/Expedition Map》
4《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
2《忘却石/Oblivion Stone》

4《古きものの活性/Ancient Stirrings》
4《森の占術/Sylvan Scrying》
4《紅蓮地獄/Pyroclasm》
1《全ては塵/All Is Dust》
3《自然の要求/Nature's Claim》
2《古えの遺恨/Ancient Grudge》
2《焼却/Combust》
2《スラーグ牙/Thragtusk》
2《精神壊しの罠/Mindbreak Trap》
1《減衰のマトリックス/Damping Matrix》
1《倦怠の宝珠/Torpor Orb》
1《精神隷属器/Mindslaver》
1《全ては塵/All Is Dust》