そうだ、メタゲームについて考えてみよう!2

By Naoaki Umesaki   


ある偉大な先人は言った。

「メタゲームを制する者が、世界を制する。」

マジックは対戦ゲームであり、デッキ相性というものが存在するのだから、例えば「最近は○○デッキが多いことが予想されるから、明日の大会には○○デッキに相性の良いデッキを持っていこう」といった感じに、現在の環境を分析した上でデッキ構築・選択をしたり、デッキに入れるカードを調整しようねという話である。

さて。 "シャドウムーア"が発売され、メタゲームはどのように変化したのだろうか?
『日本選手権予選 東京1次』直前の開催となった『第56回 五竜杯』のメタを、デッキタイプ別に紹介していきたい。


■使用者数1位:ヒバリ系 (20人:20%)

前環境でも人気の高かったヒバリデッキが使用者ランキングの1位に。
この使用者の多さも驚きであるが、それ以上に驚きなのがヒバリ系デッキを選択したプレイヤーの勝率である。 なんと、ヒバリ系デッキを使用した20人のうち、8人ものプレイヤーが5勝2敗以上の成績を上げ成績上位に食い込んできているのだ。

そして、"シャドウムーア"により、一口にヒバリデッキと言ってもデッキの形に様々なバージョンが見受けられるようになった。
もちろん『グランプリ静岡』で活躍を収めた青白2色のバージョンが大多数なのだが、三原槙仁(千葉・5位)が使用した《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》の為に赤をタッチしたバージョンや、渡辺雄也(神奈川・12位)が使用した《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》をメインから搭載した青黒タッチ白というカラーコンビネーションのヒバリデッキも好成績を残した。

三原 「単純に《ガルガドン》は強いカードですし、《誘惑蒔き/Sower of Temptation》でパクられる危険性に怯えず生物を展開して攻めれたり、同系・フェアリーとの対決において強いんですよ。」

渡辺 「"シャドウムーア"で加わった土地カードが優秀で、無理なく3色でデッキを組めるようになった。純正2色に拘らず、色々な可能性を試すべきですね。 《大爆発の魔道士》が強かったかって? そりゃあ、《目覚ましヒバリ》で戻ってきたら強いでしょう!」

また、『グランプリ静岡』で青黒フェアリーを使用して優勝を飾った高橋優太(東京・2位)が、愛着あるはずの青黒フェアリーを捨て、青白ヒバリを選択したのも印象的だ。

高橋 「実は、『グランプリ静岡』の段階で青黒フェアリーはメタゲーム的に厳しかったんですよ。デッキ相性が悪い赤バーンが増えてきてましたからね。 そして、その赤バーンは"シャドウムーア"で《炎の投げ槍/Flame Javelin》《ぼろ布食いの偏執狂/Tattermunge Maniac》といった強力カードを得てパワーアップ。使用者も増えるでしょうから、青黒フェアリーは当分封印かも? そんな青黒フェアリーに比べて、ヒバリデッキは横綱相撲的な強さがありながら、サイドボードの柔軟性もあり魅力的です。」

これから始まる2008年日本選手権予選シーズンは、《目覚ましヒバリ/Reveillark》を中心に回るのかもしれない。
一時代を築きつつある1枚
「UW Reveillark Blink」 / Takahashi Yuuta
【3rd・6-1】
Main Deck Side Board
8《島/Island》
6《平地/Plains》
3《アダーカー荒原/Adarkar Wastes》
3《秘教の門/Mystic Gate》
4《変わり谷/Mutavault》

4《熟考漂い/Mulldrifter》
3《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》
2《エイヴンの裂け目追い/Aven Riftwatcher》
3《誘惑蒔き/Sower of Temptation》
4《目覚ましヒバリ/Reveillark》

3《冷鉄の心臓/Coldsteel Heart》
2《精神石/Mind Stone》
4《ルーンのほつれ/Rune Snag》
3《入念な考慮/Careful Consideration》
3《一瞬の瞬き/Momentary Blink》
2《今わの際/Last Breath》
3《神の怒り/Wrath of God》
2《エイヴンの裂け目追い/Aven Riftwatcher》
2《テフェリーの濠/Teferi's Moat》
3《隆盛なる勇士クロウヴァクス/Crovax, Ascendant Hero》
2《影武者/Body Double》
3《否定の契約/Pact of Negation》
1《誘惑蒔き/Sower of Temptation》
1《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》
1《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》

■使用者数2位:赤バーン系 (15人:15%)

使用者数2位は、赤バーン系のデッキとなった。
『グランプリ静岡』直前のトライアル大会にて優勝を飾り、突如としてメタゲーム上に現れて"エルフ・ヒバリ・フェアリー"という3大メタデッキに切り込んだ赤バーンだが、『グランプリ静岡』本戦では既に対策の包囲網が敷かれており全体的に成績は振るわなかった。
"ひたすら火力を相手に叩き込む"と、やることが単純であるが故に存在を知ってしまえば対策もされやすかったからである。

前環境ではそんな対策の前に屈した赤バーンだが、"シャドウムーア"により《炎の投げ槍/Flame Javelin》《ぼろ布食いの偏執狂/Tattermunge Maniac》といった強力カードを手に入れ、《火の灯る茂み/Fire-Lit Thicket》で《タルモゴイフ》をタッチしやすくなったりと非常にプラス要素が多いデッキタイプで復権されることが予想されていた。

そして、使用者の多さを裏付け・後押しするような証言も。

池袋某大型カードショップ店員 「発売後1週間で一番売れたカードは、《炎の投げ槍/Flame Javelin》と《ぼろ布食いの偏執狂/Tattermunge Maniac》ですね。 一緒にライフゲイン阻止カードである《恒久の拷問/Everlasting Torment》を買っていかれる方が多いのも印象的でした。」

しかし、本大会において赤バーン系デッキの成績は振るわなかったようだ。 一番成績が良かったのが町田の15位。 しかも、5勝2敗以上の成績を残せたのは町田だけというこの事実。

メタゲーム的に対策が少しでも緩めば分のいい戦いができそうだが、『グランプリ静岡』の時と同様に『日本選手権予選』シーズンでも赤バーンには厳しい道が待っていそうである。

新たな《黒焦げ/Char》
「Mono Red Burm」 / Machida Kenji
【15th・5-2】
Main Deck Side Board
16《山/Mountain》
4《ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment》
4《変わり谷/Mutavault》

4《モグの狂信者/Mogg Fanatic》
4《ぼろ布食いの偏執狂/Tattermunge Maniac》
4《ケルドの匪賊/Keldon Marauders》

3《ショック/Shock》
4《裂け目の稲妻/Rift Bolt》
4《欠片の飛来/Shard Volley》
4《火葬/Incinerate》
2《つっかかり/Lash Out》
4《炎の投げ槍/Flame Javelin》
3《怒鳴りつけ/Browbeat》
3《ドラゴンの爪/Dragon's Claw》
4《硫黄破/Sulfurous Blast》
1《つっかかり/Lash Out》
4《月の大魔術師/Magus of the Moon》
3《恒久の拷問/Everlasting Torment》

■使用者数3位:ビックマナ系 (13人:13%)

かつてビックマナといえば緑赤であったが、本大会においては様々なカラーバリエーションのビックマナが見られた。  以前の多数派であった緑赤ビックマナも、"シャドウムーア"によって《炎渦竜巻/Firespout》といった強力カードを手に入れているので、もちろん復権も十分に考えられる。

・緑黒・・・・・・5人 (4位・9位入賞)
・赤緑・・・・・・3人
・緑白・・・・・・3人
・緑単・・・・・・1人 (2位入賞)
・緑黒白・・・・1人

緑黒ビックマナはメジャーな存在ではないが、前環境でも『グランプリ静岡』直前トライアル優勝や、高い2日目進出率で玄人には知られたデッキタイプであった。 メタゲームが進み、使用者も増えて結果も出てきたというところであろうか。 緑白ビックマナも同様にメジャーな存在ではないが、昨年末の『Magic Online』年越し大トーナメントを優勝して『Magic Online』上で一時期流行したことがあるのでポテンシャルは十分にあると思われ、今後リアルで遅れて流行なんてこともあるかもしれない。

そして、本大会2位入賞の緑単ビックマナは、完全なるニューカマー。
《夜の群れの雄叫び/Howl of the Night Pack》によってトークンを大量に並べて勝つ光景は、かつて『The Finals』を制した浅原晃の緑単ビックマナ"Coming-out"を彷彿とさせるデッキだ。
使用者の砂川も「まだ調整が足らず、レシピは全然未完成。"Coming-out"の時のように何か色をタッチするかも」と語っていたが、中々に可能性を感じさせるデッキである。
メタが回り、その強さが復活
「Mono Green BigMana」 / Sunakawa Yasuhiro
【2nd・6-1】
Main Deck Side Board
15《冠雪の森/Snow-Covered Forest》
2《樹上の村/Treetop Village》
2《苔汁の橋/Mosswort Bridge》
2《樹液染みの森/Sapseep Forest》
3《ロノムの口/Mouth of Ronom》

4《根の壁/Wall of Roots》
1《薄暮の大霊/Oversoul of Dusk》
1《剃刀毛のマスティコア/Razormane Masticore》
1《活力/Vigor》
1《トリスケラバス/Triskelavus》
1《不気味な戯れ児/Grim Poppet》
1《森滅ぼしの最長老/Woodfall Primus》
3《雲打ち/Cloudthresher》

3《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》
3《北方行/Into the North》
4《未開の狩り/Hunting Wilds》
4《調和/Harmonize》
4《原初の命令/Primal Command》
3《夜の群れの雄叫び/Howl of the Night Pack》
2《突風線/Squall Line》
4《スパイクの飼育係/Spike Feeder》
3《裂け目掃き/Riftsweeper》
4《ムウォンヴーリーの酸苔/Mwonvuli Acid-Moss》
2《クローサの掌握/Krosan Grip》
2《木化/Lignify》

■その他の有力デッキタイプ
赤黒ランデス (7人:7%)
青黒フェアリー (6人:6%)
白鳥コンボ (4人:4%)
緑黒エルフ (4人:4%)
青黒マネキン (4人:4%)
赤黒ゴブリンパクト (4人:4%)


前環境ではヒバリと並んで「3大メタデッキ」と呼ばれていた緑黒エルフ・青黒フェアリーが本大会においては勢力を小さくしているが、工夫を凝らした青黒フェアリーを使用した高梨光(埼玉)が優勝を飾っており、緑黒エルフも全体的に成績が悪かった訳ではないので引き続き注意が必要なのは間違いない。

次に、今までは優秀なランデスカードの数が足りずデッキとして成立しなかったランデスだが、"シャドウムーア"によって《大爆発の魔道士》を得てメタゲーム上に名乗りをあげてきた。 前環境には無かったデッキタイプなのでレシピは人によってまちまちだが、《大爆発の魔道士》《なだれ乗り》《涙の雨》に加えて、《その場しのぎの人形》も実質的にランデスカードとして機能するという構成が多かった。
当たり前だが、マナが無くては試合にならない。 やっかいなデッキタイプがメタゲームに浮上してきたといえる。

そして最後に、"シャドウムーア"注目カードの一つである《ブリン・アーゴルの白鳥》+《突撃の地鳴り》+《ダクムーアの回収場》のコンボデッキ。
本大会では使用者も少なく上位入賞も無かったデッキタイプだが、『世界選手権2007』Top8入賞などの戦績で知られるPatrick Chapinがコラムにて「白鳥はヒバリと同じくらいヤバい!」と紹介しており、会場内でも噂になっていた。

簡単にどんな感じでコンボが決まるかを説明すると…
・ 《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》と《突撃の地鳴り/Seismic Assault》を場に出す

・《ダクムーアの回収場/Dakmor Salvage》を《突撃の地鳴り》を能力で捨てて《ブリン・アーゴルの白鳥》に2点ダメージを入れる

・《ブリン・アーゴルの白鳥》の能力が誘発して2ドロー、そのドローの片方を《ダクムーアの回収場》発掘に

・発掘を繰り返し、《ダクムーアの回収場》2枚目が手札か墓地にきたら、2枚目の《ダクムーアの回収場》は《突撃の地鳴り》で対戦相手に2点ダメージ。後は、ループ作業である。《ガイアの祝福/Gaea's Blessing》がデッキに入っているのでほぼライブラリーアウトはしない。
…といった感じだ。

《ブリン・アーゴルの白鳥》と《突撃の地鳴り》が場に出ていれば手札にある土地カードが2枚ドローになるので、《ダクムーアの回収場》が手札になくても不要な土地カードをドローに変えているうちに《ダクムーアの回収場》を引いてきてコンボが決まることもある。 強いコンボデッキの条件として、コンボを決めるために必要なカード枚数の少なさという要素があるが、実質的には2枚コンボともいえる白鳥コンボは大きく可能性を感じさせる。
《不毛の大地/Wasteland》君

第2の《ヒバリ》?
「Seismic Swans」 / Patrick Chapin
Main Deck Side Board
4《ダクムーアの回収場/Dakmor Salvage
4《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》
4《地平線の梢/Horizon Canopy》
4《反射池/Reflecting Pool》
3《宝石鉱山/Gemstone Mine》
4《鮮烈な草地/Vivid Meadow》
1《鮮烈な岩山/Vivid Crag》
1《鮮烈な林/Vivid Grove》
1《樹木茂る砦/Wooded Bastion》
1《偶像の石塚/Graven Cairns》
1《溶鉄の金屑場/Molten Slagheap》
1《涙の川/River of Tears》

3《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll
1《難問の鎮め屋/Vexing Shusher

4《突撃の地鳴り/Seismic Assault
4《女王への懇願/Beseech the Queen
4《きらめく願い/Glittering Wish》
2《牧歌的な教示者/Idyllic Tutor
2《森の占術/Sylvan Scrying》
2《ガイアの祝福/Gaea's Blessing
4《睡蓮の花/Lotus Bloom》
1《炎渦竜巻/Firespout》
1《掻き集める梢/Raking Canopy》
1《テフェリーの濠/Teferi's Moat》
1《忘却の輪/Oblivion Ring》
1《肥沃な大地/Fertile Ground》
1《豊穣/Abundance》
1《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》
1《ガドック・ティーグ/Gaddock Teeg》
1《調和スリヴァー/Harmonic Sliver》
2《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》
3《難問の鎮め屋/Vexing Shusher》
1《結界師ズアー/Zur the Enchanter》
1《耳障りな反応/Guttural Response》
1《魔力変/Manamorphose》
1《炎渦竜巻/Firespout》
1《虚空/Void》
1《テフェリーの濠/Teferi's Moat》
1《太陽と月の輪/Wheel of Sun and Moon》

Road to   
■そして、『日本選手権 東京1次』へ.........

さて。これから、スタンダードのメタゲームはどう動いていくのだろうか。
本大会の6日後(5月11日)に行われる『日本選手権 東京1次予選』においてもカバレッジを行う予定なので是非そちらも見ていただいて、これからの日本選手権予選シーズンを戦う上での参考にしてもらいたい。

そして、これからのメタゲームについて考えてみよう。