■準決勝: 山川 洋明(東京) vs. 三ツ井 英郎(東京)

By 工藤 耕一

 185名が参加した第100回五竜杯、長い長いスイスドロー8回戦と準決勝が終わり勝ち残ったプレイヤーは4名、残すは準決勝と決勝のみ。
 隣のテーブルでは中村修平vs.渡辺雄也という世界で活躍する二人による準決勝が行われているが、対照的にこちらのテーブルは草の根で活躍を続ける二人が決勝のイスを賭けて戦うこととなった。

 ラヴニカの都〜時のらせん時期のスタンダードで世界的な流行を見せた「太陽拳」、去年のGP仙台でTop8入りした青白コントロールに《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara》を組み込んだ「瞬獄殺」、エクステンデッド環境での《長毛のソクター/Woolly Thoctar》を出した次のターンに《謎めいた命令/Cryptic Command》が飛んでくる「びゅーてぃーにゃあや」。
 一度は話に聞いたことがあるであろうこれらの数々の名作デッキを作り上げてきたプレイヤー、それが山川洋明である。

 本日の使用デッキはバントカラーの《出産の殻/Birthing Pod》コントロール。《出産の殻》デッキといえば今年のフランス選手権でOlivier Ruelが使用していたものが記憶に新しいが、山川のデッキは《精神隷属器/Mindslaver》と《埋没した廃墟/Buried Ruin》のシナジーが投入されているなど、実に「らしい」仕上がりになっている。

 対する三ツ井は典型的なビートダウンフリークである。軽量クリーチャーと火力を愛する彼は、今までにゴブリンの群れを率い、《黒こげ/Char》と《稲妻のらせん/Lighting Helix》を対戦相手に叩きつけ、《カルシダーム/Calciderm》で戦場を蹂躙し、《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》と《板金鎧の土百足/Plated Geopede》で相手の軍勢を踏み荒ら続けてきた。

 本日のデッキは赤単。本人曰く「五竜杯だし《カルガの竜王/Kargan Dragonlord》入れてきたよ」とのこと。だがこれは単なる言葉遊びではなく、《カルガの竜王》と《チャンドラのフェニックス/Chandra's Phoenix》が搭載されている彼の赤単は対コントロール、特に最近流行の《機を見た援軍/Timely Reinforcements》に対して非常に耐性のある仕上がりになっている。

《カルガの竜王》を指差しアピールする『赤単』、三ツ井


Game 1

 先手は山川、両者マリガン無しでキープ。

 山川は《ヴィリジアンの密使/Viridian Emissary》を出し、更に《ファイレクシアの変形者/Phyrexian Metamorph》でそれをコピーする立ち上がり。

 普通の赤単ならゲンナリしてしまうところだが、三ツ井の赤単は一味違う。《カルガの竜王》、《チャンドラのフェニックス》と展開し、航空戦力が山川に襲い掛かる。

 山川は《ヴィリジアンの密使》になった《ファイレクシアの変形者》で攻撃し、三ツ井の2枚目の《チャンドラのフェニックス》を《マナ漏出/Mana Leak》するものの、さらに三ツ井の手札からは3枚目の《チャンドラのフェニックス》!

 このままではジリ貧の山川、意を決して《精神隷属機》!
 飛行クリーチャーでビートダウンは出来ているものの土地が3枚で止まっている三ツ井。これを受けて《チャンドラのフェニックス》2体でアタックし、2体目の《カルガの竜王》を展開、《稲妻/Lightning Bolt》を山川に。山川はブロッカーに《極楽鳥/Bird of Paradise》を出して《精神隷属器》を起動。

 山川に操られた三ツ井のターン。山川としては三ツ井の手札を使って《チャンドラのフェニックス》をどうにかしたいところだが、オープンされた三ツ井の手札は《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》、《竜王》、《燃え上がる憤怒の祭殿/Shrine of Burning Rage》、《槌のコス/koth the Hammer》。そしてドローは《溶岩使い》。盤面を好転させられない。

 山川はがっかりしながらも、三ツ井のサイドボードの内容を確認し土地をフルタップとする。
 《ファイレクシアの変形者》を《フェニックス》のコピーとして出して三ツ井の攻勢を押しとどめようとするが、ここで三ツ井が4枚目の土地をトップデッキ。満を持して《槌のコス》が登場する。

 このターンのアタックで戦線が崩壊してしまうことを確認して山川が投了。デッキの持ち味を存分に発揮した三ツ井が1本目を先取した。

山川 0−1 三ツ井


Game 2

 両者マリガン無しでゲームを開始…する前に、山川は一言「じゃ、0ターン目に」。 《神聖の力線/Leyline of Sanctity》が戦場に出てのスタートとなる。火力がプレイヤーに撃てなくなり、三ツ井は渋い顔。




 先手の山川が3ターン目に《海門の神官/Sea Gate Oracle》で手札を整える。三ツ井は即座にこれを《稲妻》で焼き、返しに《チャンドラのフェニックス》を展開しアタック。1ゲーム目の再現となるか!?

 山川は三ツ井の動きが早くないことを受けてか《予感/Foresee》で手札を整えることを選択する。三ツ井は《フェニックス》の2体目を出してアタックし山川のライフを13とするが、またも土地が3枚で止まってしまっている。

 山川は《石角の高官/Stonehorn Dignitary》で三ツ井のアタックを止める。土地が引けない三ツ井は《カルガの竜王》を出すのみでターンを返す。

 《フェニックス》を《忘却の輪/Oblivion Ring》で追放し、少しずつ攻め手を削っていく山川。三ツ井はまたも土地が引けず《竜王》と《フェニックス》の2体でアタック。山川のライフを11とし、竜王をブロックした《高官》を《稲妻》で焼こうとするが、山川はこれを《瞬間凍結/Flashfreeze》。追加戦力として《溶岩使い》が戦場に登場する。

 山川は6マナが使える状態で小考。まだまだ盤面に余裕有りと見たか、《予感》→《森のレインジャー/Sylvan Ranger》で《島/Island》をサーチ→そのまま《島》をセットランド後《定業/Preorderin》と一気にデッキを掘り進める。

 エンドフェイズに三ツ井の《四肢切断/Dismember》が《高官》に飛ぶ。そして三ツ井はついに値千金の4マナ目をトップデッキ!《竜王》を一気にレベルアップし《フェニックス》と共に飛行アタック、一気に山川のライフが5に。

 《忘却の輪》で《竜王》はすぐに対処されるものの、続くターンも《フェニックス》がアタックし山川のライフは残りわずか3に。三ツ井は《燃え上がる憤怒の祭殿》をキャストする。


風前の灯かと思われた山川だが、ついに《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》に辿り着き、二番目の能力で《フェニックス》が墜ちる。更には《地盤の際/Tectonic Edge》で三ツ井の《ぐらつく峰》を割ってマナを自由に使わせない。

 三ツ井の盤面に残されたクリーチャーはわずかに《溶岩使い》のみに。苦悶しながら《躁の蛮人》が《燃え上がる憤怒の祭殿》を割りつつ戦場に。
 山川は涼しい顔で《太陽のタイタン/Sun Titan》を展開し墓地から《海門の神官》を呼び戻し、《ギデオン・ジュラ》の一番目の能力を起動。

 「火力めっちゃ引くんだけど」とぼやきながら三ツ井は《太陽のタイタン》を除去するが、既に完全に盤面が固まってしまっているため山川の《ギデオン・ジュラ》がどうにもならない。

 山川は《高官》で次の三ツ井のアタックを封じ、安全を確保してから《ギデオン・ジュラ》を生物化し一転攻勢のフルアタック!
 解決策を引けなかった三ツ井はそのまま投了。その手札にはずっと《焼尽の猛火/Searing Blaze》が握られていた。

山川 1−1 三ツ井


Game 3

 三ツ井が初手を見るなり「弱っ」とつぶやきワンマリガン、山川はキープ。 三ツ井は土地を置こうとして、恐る恐る「メイン入ってもいいですか?」と一言。既にゲームは山川ペースなのか?

 《神聖の力線/Leyline of Sanctity》は山川の手札には無く、お互いが《渋面の溶岩使い》と《極楽鳥》を出し合う展開でゲームがスタート。三ツ井は即座に《噴出の稲妻/Burst Lightning》で《極楽鳥》を焼いて《溶岩使い》がアタック、山川はドローゴー。

 三ツ井は《カルガの竜王》を呼び出すが土地が2枚でストップしてしまっている。山川は再びドローゴー。

 三ツ井はまたも土地を引けず、《竜王》をレベルアップし2体でアタック。

『青緑白コントロール』、山川

 苦しむ三ツ井を尻目に、山川は悠々と《予感》で手札を整える。 力のこもった三ツ井のドロー。…が、未だ追加の土地が引けない。引き続きアタックで山川のライフを10まで落とすが、何もキャストできずターンを返す。

 山川は《審判の日/Day of Judgement》で戦場をまっさらにし、《極楽鳥》をキャスト。三ツ井は土地が遠い。何もできずターンを返す。山川の《太陽のタイタン》が盤面に登場し《極楽鳥》が戦場に戻る。

 ようやく3枚目の土地にたどり着いた三ツ井、《チャンドラのフェニックス》を出してアタック。山川はこれを《極楽鳥》でチャンプブロックせずライフが8に。
山川は《海門の神官》で手札を整え、《石角の高官》で三ツ井のアタックを封じ、《太陽のタイタン》でアタック。

 三ツ井はまたもドローゴー。手札をチラっと見るとそこには申し訳無さそうな《コス》3兄弟と《魔力のとげ》が…
 《フェニックス》が《忘却の輪》で追放され、山川のフルアタックでライフ8になってしまった三ツ井。ここからの逆転は間に合わないと判断し土地を片付けた。

山川 2−1 三ツ井

山川洋明、決勝進出!