■ Round8 串上 康寛(東京) vs. 高橋 純也(神奈川)

By Ume-Nao

 スイスドロー最終ラウンドのフィーチャーマッチテーブルに呼ばれたのは、『月刊ゲームジャパン』誌で連載を持つ「ブレーキの壊れたデッキビルダー」こと高橋"ラッシュ"純也と、「五竜杯参加はまだ2回目なので、思い出はこれから作る」と語る串上康寛。

 お互いに5勝2敗。 僅かに可能性が残っているTop8進出を目指すと同時に、少しでも良い成績で終えてより多くの賞品パックを持ちかえるためにも、このマッチを勝利で終えたいところだろう。

高橋 「初めて五竜杯に参加したのは、オデッセイブロックとオンスロートブロックが使えた2003年頃。 まだ東板橋体育館の会議室で開催されている頃で、サブ会場の小さな会議室でマクドナルドのナゲットを喰いまくる意味不明なゲームをやったのが思い出深いですね(笑)」

 どうやら、高橋のブレーキが壊れているのは昔からだったようだ。


Game 1

 青黒い土地を並べながら2ターン目に《漸増爆弾/Ratchet Bomb》を置く串上に対して、高橋は《定業/Preordain》《探検/Explore》と繋げて、3ターン目に《面晶体のカニ/Hedron Crab》をプレイ。

 どうやら、串上のデッキは『青黒コントロール』。高橋は『青緑ライブラリーアウト』デッキのようだ。

 串上はすぐ《漸増爆弾》を起動して《面晶体のカニ》を除去するが、高橋は対応して2枚のフェッチランドを起動。串上のライブラリーを削り、ただでは死なない。

明らかに3代目《ジェイス》を意識した
髪形のラッシュ高橋

 戦場がいったん空になったところで、串上が《倦怠の宝珠/Torpor Orb》、高橋は2枚目の《面晶体のカニ》と後続を展開するのだが、ここから始まる中盤戦の攻防で上回ったのは串上だった。

 《面晶体のカニ》をすぐさま《破滅の刃/Doom Blade》で対処すると、高橋が満を持して唱えたフィニッシュカード《記憶の熟達者、ジェイス/Jace, Memory Adept》も《マナ漏出/Mana Leak》でカウンター。

 高橋の攻めを捌いたところで《ボーラスの工作員、テゼレット/Tezzeret, Agent of Bolas》を戦場に送りこみ、場の有利を作りだすことに成功する。

 《テゼレット》の能力により【5/5】クリーチャーとなった《倦怠の宝珠》が攻撃を開始され、高橋が再び唱えた《記憶の熟達者、ジェイス》は戦場に着地するも生存は許されない。

 更に、串上は《テゼレット》コントロール下では【5/5】クリーチャーの素となる《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》を戦場に追加。 2体の【5/5】と《忍び寄るタール坑/Creeping Tar Pit》による攻撃を宣言したところで高橋の投了となった。

串上 1-0 高橋

串上 「ジャッジいいですか? カニのテキストについてなのですが…」

高橋 「本物のカニ見せましょうか?」

串上 「あ、ありがとうございます、タフネス知りたかったんですよね」

高橋 「やっぱりそうでしたか、タフネスは2ですね。実際、結構聞かれるんですよね(笑) 赤いデッキの人が聞いてきた時は《紅蓮地獄/Pyroclasm》入れられる臭いしかしないっていう(笑」

 流石は「ブレーキの壊れたデッキビルダー」と呼ばれる高橋、今日も独創的なデッキを大会に持ちこみ対戦相手を困惑させているようだ。


Game 2

 高橋は1ターン目に《面晶体のカニ》。ライブラリーアウトデッキとしては、最高の立ち上がりだ。
 しかし、2ターン目に《探検/Explore》を打つも、呪文の効果による追加の土地を置くことが出来ないアクシデント。 どうやら高橋の手札には土地が無く、何もかも上手く行くとはいかない様子。

青黒コントロール、串上

 対する串上は2ターン目に《漸増爆弾》を置き、《カニ》の除去をタイマー予約。

 すぐに場を離れることが決まっている《カニ》の次の攻め手を用意したい高橋だが、前にターンに続けて《探検》を打つも置ける土地は《進化する未開地/Evolving Wilds》の1枚のみ。 《漸増爆弾》で《カニ》が墓地行きとなる中、「1枚のカードを引く」として《彼方の映像/Visions of Beyond》を唱えたりと不自由な展開を強いられる。

 そんな高橋を尻目に、串上は《永遠溢れの杯》を連打して順調にマナブーストすることに成功。

 「これは串上優勢か」。そう思われたこのタイミング、高橋が仕掛けた。

 まず、《カニ》の能力によって墓地に落ちていた串上の《マナ漏出》を対象に《外科的摘出/Surgical Extraction》をキャスト。

 串上は《マナ漏出》を打って応戦するのだが、高橋はこの《マナ漏出》に対して3マナを支払わず《外科的摘出》が打ち消されることを選択する。「3マナ払わないの?」と疑問を感じるかもしれないが、これは高橋の作戦で《外科的摘出》は"おとり"だったのである。

 串上のマナがフルタップとなったところで、高橋は《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》を戦場に着地させ、《霧深い雨林/Misty Rainforest》をセット→即起動で5マナを捻出して《記憶の熟達者、ジェイス》を戦場に登場させることに成功。

 土地に恵まれず理想的な展開とは行かなかった高橋だが、ドロースペルを打つ中で《霧深い雨林》を引き、このゲームプランを想像して有利な展開に持ち込んだ。

 戦場に登場した《記憶の熟達者、ジェイス》の「0」能力が串上のライブラリーを削り始める。

 串上も《ボーラスの工作員、テゼレット》を唱え、先程のゲームと同様に能力で《永遠溢れの杯》を【5/5】クリーチャーにして《ジェイス》に攻撃を宣言するが…。

 先程とは違い、高橋の戦場には《水蓮のコブラ》がブロッカーとして居るので《ジェイス》は生き残る。

 《ジェイス》が生き残った状態でターンが返ってしまうと、あとは高橋の時間帯だった。《定業》→「3枚のカードを引く」の《彼方の映像》で手札を補充すると、《面晶体のカニ》を唱えてライブラリーアウトを高速化。 更なる《定業》の後、串上の《テゼレット》を《乱動への突入/Into the Roil》で手札に戻して勝負あり。

 ライブラリーアウトの速度に間に合わないことを確認した串上の投了となった。

串上 1-1 高橋


Game 3

 高橋は再び1ターン目に《面晶体のカニ》を戦場に着地させる絶好のスタートを切るが、串上もすぐさま《見栄え損ない》でこれを除去。

 続くターンは高橋が《水蓮のコブラ》、串上が《永遠溢れの杯》とお互いにマナブーストするのだが、そこから数ターンはお互い土地を置くのみで目立ったアクションも無く進んでいく。

高橋に髪形を真似された《ジェイス》



 お互いに手札が悪いだけなのか、それとも手札が十分だからこそ無言で牽制し合う展開となっているのか…。そんな沈黙を破ったのは高橋だった。

 串上のターンの終了ステップに《永遠溢れの杯》を対象に《乱動への突入》をキャスト。 串上は対応して《ジェイスの創意/Jace's Ingenuity》を唱えるのだが、これでマナがタップアウトとなってしまう。

 こうして妨害を受けない状況を作りだした高橋は、迎えた自身のターンに《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》を戦場に投入。一気に有利な状態とする。

 更には「2点を支払う」モードで《外科的摘出》を唱え、串上の《定業》を指定。公開された手札は《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》《定業》《永遠溢れの杯》と土地3枚。

 戦場に並ぶパーマネントが土地4枚だけとなった串上は、《永遠溢れの杯》の連打でマナを伸ばして次のターンでの反撃に向けて力を溜めてターンを返すのだが、高橋は《記憶の熟達者、ジェイス》と攻め手を緩めない。
 《聖別されたスフィンクス》のダメージ、《記憶の熟達者、ジェイス》のライブラリーアウトの両方に対処しないといけなくなった串上は相当に厳しいだろう。

 高橋の《聖別されたスフィンクス》はアドバンテージの差を生みだし、ついには串上のライブラリーから《外科的摘出》で《ボーラスの工作員、テゼレット》も抜き取られてしまう。

 《記憶の熟達者、ジェイス》は《ジェイス・ベレレン》で相殺して対処した串上だったが、《聖別されたスフィンクス》と《水蓮のコブラ》によるダメージまでには対処することが出来ず。そのまま、高橋の勝利となった。

串上 1-2 高橋

串上 「1本目が取れたので行けるかと思ったが、相手のデッキがメタ外だったので有効なサイドボードカードが無く厳しい戦いだった」

 相手が正解のプレイングに辿り着きづらいことや、多くのサイドボードを用意されたりすることが無いのもオリジナルデッキの強み・楽しさの一つなのだろう。
「UG Library Out」 / Jyunya Takahashi
第100回記念 五竜杯 / 7-2
Main Deck Side Board
7《島/Island》
4《森/Forest》
1《山/Mountain》
4《霧深い雨林/Misty Rainforest》
4《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
4《進化する未開地/Evolving Wilds》

4《面晶体のカニ/Hedron Crab》
4《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》

4《記憶の熟達者、ジェイス/Jace, Memory Adept》

4《思案/Ponder》
4《定業/Preordain》
4《彼方の映像/Visions of Beyond》
4《探検/Explore》
4《乱動への突入/Into the Roil》
4《書庫の罠/Archive Trap》
4《外科的摘出/Surgical Extraction》
4《強情なベイロス/Obstinate Baloth》
4《紅蓮地獄/Pyroclasm》
2《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》
1《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine》