■Round 4: 樋口大樹(板橋) vs. 田中久也(東京)

By Ume-Nao

 第4回戦のフィチャーマッチに呼ばれたのは、「グランプリ京都2002」準優勝などの戦績で知られる"古豪"田中久也と、板橋駅近辺にあるという「ナベテツハウス」で毎週水曜日に開催される社会人ドラフト会で腕を磨いていると語る樋口大樹のマッチアップ。

 お互い、ここまで3勝0敗1分と勝ち進んでおり、Top8進出を目指す上でここは踏ん張りどころだ。

樋口 「五竜杯には旧ミラディン(2004年)の頃から参加しています。第60回か70回の記念大会で貰った賞品のデッキケースが凄く嬉しくて、今でも使ってるんですよ。ウィザーズ社のロゴが大きくプリントされているクールなデッキケースなんです」

田中 「五竜杯には、第1回目か2回目から来てるよ。でも、まだ優勝経験が無いのが残念だなぁ。 そういえば、昔使ってた会場(東板橋体育館)は、エアコンが効かなくて凄く暑かったよね。夏とか大変だったんだよ(笑」


■Game 1

 ダイスロールで勝利した田中が早々にキープを宣言すると、樋口も即座にキープを宣言。 しっかりと「宜しくお願いします」と開始の挨拶が行われ、板橋という土地に所縁(ゆかり)が深い両者による一戦が始まった。

 田中は、1・2ターン目に《山/Mountain》を置くのみでターン終了を宣言。デッキは『赤単』の雰囲気だが、ゴブリンのように速い勝利を目指すタイプではなく、コントロールタイプだろうか。

 対する樋口は、青白の土地を並べながら《戦隊の鷹/Squadron Hawk》という立ちあがり。こちらのデッキは『青白Caw-Blade』の様子。

 田中は《テゼレットの計略》。樋口は《定業/Preordain》と、お互いに態勢を整えてゆくのだが、次のターンに待っていたのは突然の展開。

田中、今回のデッキはオリジナルの赤コン



 《大地のうねり/Geosurge》によるマナブーストから、田中の戦場に《業火のタイタン/Inferno Titan》が降臨したのである!

 樋口のクリーチャーは吹き飛び、形勢は一気に田中有利。

 《迫撃鞘/Mortarpod》で耐えにかかる樋口だが、これでは暴れん坊な《業火のタイタン》を止めるには至らず、次のターンには一気に12点のダメージを受けて追いこまれる。

 《忘却の輪/Oblivion Ring》で《タイタン》をリムーブされる展開を予想して、田中は樋口の様子を伺うが…

樋口 「うーん…。投了です」

田中 「リング無かったか(笑」

 中盤にさしかかった瞬間に待っていた、まさかの展開。 最初は呆気に取られていた樋口も笑みを浮かべながらカードを畳み、第1ゲームは僅か5分の高速決着!

樋口 1-0 田中


■Game 2

 樋口は《定業/Preordain》、田中は《太陽の宝球/Sphere of the Suns》から《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》とお互いに態勢を整える落ちついた序盤戦。 しかし、樋口がプレイした《純鋼の聖騎士/Puresteel Paladin》を見て田中が予想外の表情。

田中 「予想してたデッキと全然違った! 驚いたんだけど!」

樋口 「(笑」

 1ゲーム目があまりにも早く終わったので、田中は相手のデッキを見誤っていた? …もしかしたら、ベストなサイドボーディングが出来ていないかもしれない。
 …そんなことを考えながら観戦していたら、ゲームが動き出した。

 X=2の《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》で更にマナを伸ばす田中に対して、樋口は《迫撃鞘》《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》と繋げて攻撃態勢を整える。

 こうして樋口が押す展開になるか思われた瞬間、大量のマナを確保していた田中がキャストしたのは、誰も予想していたなかった《燃え立つチャンドラ/Chandra Ablaze》!

 『M12』の3代目チャンドラでもなく、一般的には評価が低いとされている『ゼンディカー』の2代目チャンドラである。

 樋口は少々悩んだ後、サイドインした《瞬間凍結/Flashfreeze》でカウンターするが、田中のオリジナルだと思われるデッキから「何が飛んでくるか分からない」といったただならぬ雰囲気を感じ始めた表情である。

 一刻も早く田中のライフを削りきるべく、樋口は《肉体と精神の剣/Sword of Body and Mind》《戦隊の鷹/Squadron Hawk》と展開して猛攻を開始。

 戦場だけを見ると、形勢は樋口が田中を追いこんだかのように見えるのだが、田中の手札から、再び驚くべきカードがキャストされる。

 『M12』の3代目チャンドラこと、《炬火のチャンドラ/Chandra, the Firebrand》である。

 間違いではなく、田中のデッキには2種類の《チャンドラ》が入っている…。そして、よく見ると田中の戦場には数ターン前に《島/Island》が置かれている…。 《テゼレットの計略》の為の青マナだと思いたいが、3代目チャンドラの呪文コピー能力を考えると凄まじい呪文が飛んできてもおかしくはない。

 その後、樋口のフルアタックによって田中は《炬火のチャンドラ》を失うのだが、どう試合が動いていくのかまったく予想がつかない。

 樋口が後続で《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》を出した返しに、田中が《無限に廻るもの、ウラモグ/Ulamog, the Infinite Gyre》をキャストして《英雄》を破壊する一進一退の攻防。

 しかし、樋口の手札にはまだ余力が残っており、《刃砦の英雄》2号・《戦隊の鷹》3枚と全展開!
 田中の戦場には《ウラモグ》が出ているが、樋口は数の暴力で襲いかかる。

板橋にある「ナベテツハウス」で実力を磨いているという樋口



田中 「やばいな、場で20点ありそうだな…。しかし…」

 田中は少し考えた後、《ウラモグ》のアタックを決断。樋口は土地を生贄えに捧げながら《ウラモグ》はブロックせずスルーしてライフは10。

 この時、田中の手札は《山/Mountain》1枚。マナ関係のカードを多く引き困っていたようで、仕方ない決断だったようだ。

 そして迎える樋口のターン。 樋口の軍勢が叩き出した総ダメージは19点。もしかして、足りてない? いやいや、《迫撃鞘》の能力でピッタリ20点。

 第1ゲームに続き、1パンチKOの熱い展開だった!

樋口 1-1 田中


■Game 3

 序盤の主導権を握ったのは田中だった。《永遠溢れの杯》でマナブーストし、樋口が唱える《呪文滑り》《純鋼の聖騎士》をそれぞれ《炎の斬りつけ/Flame Slash》《稲妻/Lightning Bolt》で丁寧に除去。

 樋口が《迫撃鞘》と迫力に欠けるアクションに留まる中、田中は《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》連打、《テゼレットの計略》で《永遠溢れの杯》のカウンターを「増幅」と調子の良い展開が続く。

 樋口は第2ゲームで見た2種類の《チャンドラ》から相当に危険な匂いを感じているのだろう。《神への捧げ物/Divine Offering》で《永遠溢れの杯》を破壊して田中の動きを阻害しにかかるが、既に田中のマナは十分。

 樋口も《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace》をキャスト→装備してのアタックと反撃をみせるが、田中の場には2体の《真面目な身代わり》が待ち構えており、田中にダメージは通らない。

 完全に自分の時間帯へと持ちこんだ田中は、満を持して《解放された者、カーン/Karn Liberated》をキャスト。

 樋口は《天界の列柱/Celestial Colonnade》を起動してのアグレッシブなアタックで《カーン》を攻めるが、田中は《カーン》の能力と《紅蓮地獄/Pyroclasm》《焼却/Combust》で樋口軍の攻撃をシャットアウト。

 更に、田中は《炬火のチャンドラ》を戦場に追加し、《テゼレットの計略》を能力でコピーすることにより「増幅」で《カーン》の忠誠値を一気に膨れ上がらせる。

 《カーン》の最終奥義が樋口の脳裏をかすめる…。

 しかし、田中は「まだまだ、やり足りない!」とばかりに《無限に廻るもの、ウラモグ》を手札からヒョロリ。

 田中のオリジナルデッキは、完全に水を得た魚の状態。

 これには、樋口も苦笑いするしかなかった。

樋口 1-2 田中


多くのギャラリーが興味深げに試合を見ていた
「Big Red」 / Hisaya Tanaka
第100回記念 五竜杯 / 10位 6-1-1
Main Deck Side Board
14《山/Mountain》
1《島/Island》
4《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
1《地盤の際/Tectonic Edge》

4《太陽の宝球/Sphere of the Suns》
4《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》

2《チャンドラのフェニックス/Chandra's Phoenix》
3《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》
3《業火のタイタン/Inferno Titan》
1《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine》
1《無限に廻るもの、ウラモグ/Ulamog, the Infinite Gyre》

2《燃え立つチャンドラ/Chandra Ablaze》
1《炬火のチャンドラ/Chandra, the Firebrand》
1《解放された者、カーン/Karn Liberated》

2《稲妻/Lightning Bolt》
3《噴出の稲妻/Burst Lightning》
3《炎の斬りつけ/Flame Slash》
4《テゼレットの計略/Tezzeret's Gambit》
2《予感/Foresee》
2《大地のうねり/Geosurge》
1《精神隷属器/Mindslaver》
1《赤の太陽の頂点/Red Sun's Zenith》
3《槌のコス/Koth of the Hammer》
3《紅蓮地獄/Pyroclasm》
2《焼却/Combust》
1《精神隷属器/Mindslaver》
1《跳ね返りの罠/Ricochet Trap》
1《解放された者、カーン/Karn Liberated》
2《攻撃的な行動/Act of Aggression》
1《核への投入/Into the Core》
1《殴打頭蓋/Batterskull》

「UW Puresteel Aggro」 / Daiki Higuchi
第100回記念 五竜杯 / 9位 6-1-1
Main Deck Side Board
7《平地/Plains》
1《島/Island》
4《金属海の沿岸/Seachrome Coast》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4《天界の列柱/Celestial Colonnade》
4《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
2《地盤の際/Tectonic Edge》

4《純鋼の聖騎士/Puresteel Paladin》
4《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
2《呪文滑り/Spellskite》
2《粗石の魔道士/Trinket Mage》
4《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》

3《皮剥ぎの鞘/Flayer Husk》
1《シルヴォクの生命杖/Sylvok Lifestaff》
1《バジリスクの首輪/Basilisk Collar》
1《速足のブーツ/Swiftfoot Boots》
4《迫撃鞘/Mortarpod》
2《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》
2《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace》

4《定業/Preordain》
4《瞬間凍結/Flashfreeze》
3《機を見た援軍/Timely Reinforcements》
3《審判の日/Day of Judgment》
2《神への捧げ物/Divine Offering》
2《天界の粛清/Celestial Purge》
1《バジリスクの首輪/Basilisk Collar》