■Round 3: 中尾 丈治(東京) vs. 山中 久(東京)

By Atsushi Itou  

 記念すべき大会で、記念すべきデュエルを。

 第100回記念・・・すなわち、2003年から今に至るまで。地道に開催を続け、五竜杯はついに記念すべき節目を迎えた。

 そのこともあってか、185名(!)と「これは本当にいち草の根大会なのか」と疑いたくなるほどの人数が、マジックを楽しみにここハイライフプラザ板橋まで来ている。

 しかし今でこそ100人規模が当たり前、空調完備の十分大きな会場で行われている五竜杯だが、開催し始めた当初からそうだったかというと、もちろんそうではない。

 板橋駅から徒歩17分ほどかかる東板橋体育館の会議室という、クーラーのない環境で行われていた時代もあったそうだ。

 そういうわけで、カバレッジがスタートする3回戦にまずフィーチャーマッチに呼ばれたのは、その五竜杯黎明期を知る中尾だ。

 ただ五竜杯に古くから参加していたというだけに限らず、ここ3年ほどの参加回数でもトップタイの21回ということで、五竜杯の歴史を語るならばこの人物は外せない、という五竜杯最古参プレイヤーの一人だろう。
 
記念すべき第100回目の五竜杯には、185名ものプレイヤーが集まった

 対する山中の方も、神河・ラヴニカ期くらいから五竜杯に出始めたそうであり、今回は久しぶりの参加だそうだが、中尾ほどではないにせよ十分古参の「五竜杯er」といえる。

 そんな二人に五竜杯にまつわる思い出などはないか伺ったところ、「昔はデッキ賞があったのが嬉しかったんですよね。今はなくなっちゃいましたけど」と語る中尾。オリジナルデッキを使用する頻度が高いのだろう。

 山中も「確かに、負けてもそれ狙いで頑張れますよね」と応える。2敗1分まで賞品が出る五竜杯で、いつも賞品ラインまであと1勝が遠いと語る山中。今日も既に0-2してしまっているが、ここからの巻き返しに期待したい。

Game 1

 先手は中尾。セット《溶岩爪の辺境/Lavaclaw Reaches》から赤黒吸血鬼かと思いきや、2ターン目に飛び出したのは何と《精神クランク/Mindcrank》!!

 確かにデッキ賞があったら十分狙えそうなカードチョイスである。

 しかし山中はこれを《レオニンの遺物囲い/Leonin Relic-Warder》で排除。中尾はめげずに2枚目の《精神クランク/Mindcrank》を設置するが、山中はこれも《忘却の輪/Oblivion Ring》で取り除く。

 続くターン、山中は《アジャニの群れ仲間/Ajani's Pridemate》をプレイしてから《審問官の総督/Inquisitor Exarch》で2点ゲイン。どうやら山中のデッキは白単ライフゲイン、別名ソウルシスターズのようで、《精神クランク/Mindcrank》+《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》コンボと思しき中尾のデッキと合わせて、マッチアップ的にはかなり珍しい対決となった。

 ここで中尾は《金屑の嵐/Slagstorm》で盤面を一掃。ゲームから除外されていた《精神クランク/Mindcrank》を盤面に取り戻す。さらに返す山中の《悪斬の天使/Baneslayer Angel》も《よろめきショック/Staggershock》と《稲妻/Lightning Bolt》の合わせ技で葬る。

 山中はやむなく無人の荒野に《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》を着地させるが、ここで中尾はコンボパーツである《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》を引き込む。

 攻め手を緩めるわけにもいかない山中が《フェリダーの君主/Felidar Sovereign》を出すものの、その第2メイン終了時と自身のアップキープの《よろめきショック/Staggershock》の反復で《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》にカウンターを2個載せた中尾は、さらにこれを《電位の負荷/Volt Charge》で増殖。

 《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》にクエスト達成となる3個目のカウンターを載せると、自身の《地盤の際/Tectonic Edge》で山中の《地盤の際/Tectonic Edge》を割ってコンボを完遂した。

中尾 1-0 山中

 「今日初めて決まりました」と嬉しそうに言う中尾。


Game 2

 お互いマリガン。山中の2ターン目《縫合の僧侶/Suture Priest》で幕を開ける。

 対する中尾は《燃え上がる憤怒の祭殿/Shrine of Burning Rage》を設置。これは山中の《忘却の輪/Oblivion Ring》で即座に取り除かれる。

 中尾は《チャンドラのフェニックス/Chandra's Phoenix》をプレイしてアタック。しかし豊富なライフゲイン手段を持つ山中のデッキをバーンで焼き殺すのは長い道のりになりそうだ。

 だが中尾が《地盤の際/Tectonic Edge》で《カビーラの交差路/Kabira Crossroads》を割ると、山中の土地が止まる。対象のいない《真心の光を放つ者/Devout Lightcaster》をキャストすることしかできない山中。

 ここで中尾が《チャンドラのフェニックス/Chandra's Phoenix》を立たせてターンエンドすると、これに《真心の光を放つ者/Devout Lightcaster》が突っ込んでいくが、不死鳥はためらわずブロック。戦闘後に《神聖の力線/Leyline of Sanctity》をプレイする山中だが、スタックで《電位の負荷/Volt Charge》を本体に撃たれ、フェニックスを回収されてしまう。

 さらに《縫合の僧侶/Suture Priest》も《噴出の稲妻/Burst Lightning》され、一時的とはいえ完全に捌かれた格好の山中。

 この隙に中尾は再召喚した《チャンドラのフェニックス/Chandra's Phoenix》と《溶岩爪の辺境/Lavaclaw Reaches》でビートダウンを始める。



今回もオリジナルデッキで参戦、中尾
 《神聖の力線/Leyline of Sanctity》があるとはいえ、火力はブロッカー排除に使えば問題ない。山中は《審問官の総督/Inquisitor Exarch》を召喚して時間を稼ごうとするが、中尾の火力は尽きておらず、2枚目の《噴出の稲妻/Burst Lightning》で処理されてなおもクロックが継続される。

 山中は仕方なく《魂の従者/Soul's Attendant》と、《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》用に取っておいた《テューンの戦僧/War Priest of Thune》をプレイ。さらにエンド前の《稲妻/Lightning Bolt》を虎の子の《精霊への挑戦/Brave the Elements》でかわす。だが地上の《溶岩爪の辺境/Lavaclaw Reaches》は何とか止まったものの、《チャンドラのフェニックス/Chandra's Phoenix》が止まらない。

 ついに山中はライフ3まで追い詰められてしまう。

 あわやラストターン・・・だが、この局面で山中のトップデッキは《悪斬の天使/Baneslayer Angel》!!

 それに対し、ここにきて土地引きが続いてしまった中尾は、《弱者の消耗/Consume the Meek》で脇のクリーチャーこそなぎ払うものの、そのまま5マナの天使に撲殺されてしまった。

中尾 1-1 山中

Game 3

 先手は中尾に移る。山中の《魂の従者/Soul's Attendant》《アジャニの群れ仲間/Ajani's Pridemate》というロケットスタートに対し、《アジャニの群れ仲間/Ajani's Pridemate》を育てるわけにいかない中尾は《稲妻/Lightning Bolt》でこれを即墓地送りにする。

 さらにコンボの片割れである《精神クランク/Mindcrank》を設置する中尾だが、こちらも即座に《忘却の輪/Oblivion Ring》で応じる山中。中尾はこれに対して《漸増爆弾/Ratchet Bomb》を設置するが、これにも《忘却の輪/Oblivion Ring》が合わせられる。加えて《セラの高位僧/Serra Ascendant》をプレイし攻め立てる山中。

 中尾は《燃え上がる憤怒の祭殿/Shrine of Burning Rage》を設置するが、山中は《カビーラの交差路/Kabira Crossroads》での2点ゲイン、絆魂で1点ゲイン、さらに《コーの火歩き/Kor Firewalker》を展開と、デッキコンセプト通りに順調にライフを得る体制を作っていく。

 が、続くターンに山中は《忘却の輪/Oblivion Ring》で《燃え上がる憤怒の祭殿/Shrine of Burning Rage》を取り除こうとして、中尾のマナが立っていたために自身のパーマネントをリムーブするハメになってしまう。《コーの火歩き/Kor Firewalker》よりは、と《魂の従者/Soul's Attendant》をリムーブすることを選択する山中。

 その残った《コーの火歩き/Kor Firewalker》も《喉首狙い/Go for the Throat》で捌いたところで、満を持して中尾の《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》が設置される。山中の第2メイン終了時の《よろめきショック/Staggershock》からすぐに2個のカウンターがたまり、さらにエンド前の《電位の負荷/Volt Charge》でクエストが達成。

 《精神クランク/Mindcrank》はないため即死はないものの、今後山中のパーマネントを除去するたびに2点ドレインできるシステムが完成してしまう。

 山中はかまわず《アジャニの群れ仲間/Ajani's Pridemate》を出すが、さっきは引けていた《テューンの戦僧/War Priest of Thune》が今度は駆けつけない。中尾の《溶岩爪の辺境/Lavaclaw Reaches》への《地盤の際/Tectonic Edge》起動にも2点ドレインが誘発してしまう。《アジャニの群れ仲間/Ajani's Pridemate》が殴り続けるが、25もあった山中のライフも徐々に減っていき、いつしか中尾と山中のライフがひっくり返ってしまっている。

 それでもようやく《レオニンの遺物囲い/Leonin Relic-Warder》をトップした山中は《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》を取り除き、カウンターをリセット。中尾は《金屑の嵐/Slagstorm》ですぐに場に戻すものの、再びクエストを達成するほどの火力はなく、中尾もフィニッシャーが遠い。

 山中もクリーチャーを全て失ったものの、続けて《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》をトップ。プラス能力で忠誠値を増やしにいく。

『白単ライフ回復ウィニー』デッキ、山中

 その後はお互い動きがなく、《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》のカウンターが7個になった次のターン、「奥義」が発動し山中の場に20/20のアバタートークンが出現する。同時に《フェリダーの君主/Felidar Sovereign》をプレイ、中尾に回答を迫る。

 一転窮地に追い込まれた中尾だが、ここは冷静にあらかじめ設置しておいた《漸増爆弾/Ratchet Bomb》で《忘却の輪/Oblivion Ring》を吹き飛ばし、《精神クランク/Mindcrank》と《漸増爆弾/Ratchet Bomb》を呼び戻す。そして《フェリダーの君主/Felidar Sovereign》に《破滅の刃/Doom Blade》を合わせる。

 これには《精霊への挑戦/Brave the Elements》が飛んでくるも、《噴出の稲妻/Burst Lightning》キッカーと《稲妻/Lightning Bolt》でなんとか葬り、アバタートークンも《漸増爆弾/Ratchet Bomb》で除去。なんとか事なきをえる。


 「さよなライオン」
 この一連の攻防を経て、盤面は山中に忠誠値1の《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》、戦闘後プレイされた《魂の従者/Soul's Attendant》、中尾に《精神クランク/Mindcrank》、《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》と綺麗な場に。

 ここで山中は引き込んだ《神聖の力線/Leyline of Sanctity》をプレイ。中尾はコンボパーツは揃っているものの、ここから《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》のカウンターを3つ溜めるには、生物によるアタックが3回(もしくは増殖)も必要となってしまう。《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》が健在の中、これは苦しい。

 さらに2体目の《魂の従者/Soul's Attendant》、《アジャニの群れ仲間/Ajani's Pridemate》と攻め立てる山中。中尾はこれをトップデッキした《黒の太陽の頂点/Black Sun's Zenith》でなぎ払うが、《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》の脅威は続く。地道にライフゲインし続けた結果、一時は落ち込んでいた山中のライフも33まで回復している。

 続けてプレイされた《悪斬の天使/Baneslayer Angel》こそ《燃え上がる憤怒の祭殿/Shrine of Burning Rage》でなんとか処理する中尾だが、山中は《忘却の輪/Oblivion Ring》で《精神クランク/Mindcrank》を再び取り除き、即死の可能性をなくす。

 その返しで中尾はようやく引き込んだ《チャンドラのフェニックス/Chandra's Phoenix》でなんとか《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》のカウンターの1個目を載せるが、山中がついにこのゲーム2度目(!)となる《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》の「奥義」を発動すると、今度のアバタートークンのパワーは何と35だ。

 超長期戦のシーソーゲームを粘り強くプレイした中尾だったが。

 ついに追加3ターン目にして膝を屈したのだった。

中尾 1-2 山中
「RB Burn」 / Jyouji Nakao
Main Deck Side Board
7《山/Mountain》
3《沼/Swamp》
4《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
4《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》
3《溶岩爪の辺境/Lavaclaw Reaches》
1《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》
4《地盤の際/Tectonic Edge》

4《血の長の昇天/Bloodchief Ascension》
4《精神クランク/Mindcrank》

4《稲妻/Lightning Bolt》
4《噴出の稲妻/Burst Lightning》
2《火葬/Incinerate》
2《金屑の嵐/Slagstorm》
3《電位の負荷/Volt Charge》
4《よろめきショック/Staggershock》
4《燃え上がる憤怒の祭殿/Shrine of Burning Rage》
2《外科的摘出/Surgical Extraction》
2《破滅の刃/Doom Blade》
1《喉首狙い/Go for the Throat》
3《チャンドラのフェニックス/Chandra's Phoenix》
3《チャンドラの吐火/Chandra's Spitfire》
2《魔力のとげ/Manabarbs》
2《粉砕/Shatter》
2《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
1《黒の太陽の頂点/Black Sun's Zenith》
1《弱者の消耗/Consume the Meek》
1《躁の蛮人/Manic Vandal》

「Mono-White Weenie」 / Hisashi Yamanaka
Main Deck Side Board
20《平地/Plains》
2《カビーラの交差路/Kabira Crossroads》
2《地盤の際/Tectonic Edge》

4《魂の従者/Soul's Attendant》
3《セラの高位僧/Serra Ascendant》
4《アジャニの群れ仲間/Ajani's Pridemate》
4《縫合の僧侶/Suture Priest》
3《レオニンの遺物囲い/Leonin Relic-Warder》
1《審問官の総督/Inquisitor Exarch》
3《悪斬の天使/Baneslayer Angel》
3《太陽のタイタン/Sun Titan》
1《フェリダーの君主/Felidar Sovereign》

2《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》

3《精霊への挑戦/Brave the Elements》
2《生き残りの隠し場所/Survival Cache》
4《忘却の輪/Oblivion Ring》
4《コーの火歩き/Kor Firewalker》
3《審判の日/Day of Judgment》
2《神聖の力線/Leyline of Sanctity》
2《光輝王の昇天/Luminarch Ascension》
1《テューンの戦僧/War Priest of Thune》
1《真心の光を放つ者/Devout Lightcaster》
1《静寂の守り手、リンヴァーラ/Linvala, Keeper of Silence》
1《外科的摘出/Surgical Extraction》