Feature:《戦隊の鷹》は禁止後の世界を飛び回るのか?

By Daisuke Kawasaki


 今年、6年ぶりにスタンダードに禁止カードが誕生した。《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》と《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》だ。

 それぞれ、単体でも強力なカードであり、多くのデッキのキーとなるカードだったのだが、この二つをもっともうまく活用できるデッキがスタンダード環境を席巻してしまった。それが、青白のCaw-Bladeと呼ばれるデッキだ。

 今回の禁止カード制定は、事実上、この『Caw-Blade』というデッキを禁止するために行われたと言っていいだろう。そして、実際に、禁止カードが施行される前には『Caw-Blade』は死ぬだろう、という声が聞けた。
「UW Caw-Blade」 / Paulo Vitor Damo da Rosa
グランプリ・シンガポール2011 / 優勝
Main Deck Side Board
5 《島/Island》
4 《平地/Plains》
4 《天界の列柱/Celestial Colonnade》
4 《金属海の沿岸/Seachrome Coast》
3 《氷河の城砦/Glacial Fortress》
2 《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
4 《地盤の際/Tectonic Edge》

4 《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
4 《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》
1 《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》

1 《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》
1 《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace》
1 《殴打頭蓋/Batterskull》
1 《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》
4 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》

4 《定業/Preordain》
3 《呪文貫き/Spell Pierce》
4 《マナ漏出/Mana Leak》
2 《乱動への突入/Into the Roil》
1 《神への捧げ物/Divine Offering》
3 《四肢切断/Dismember》
1 《太陽のタイタン/Sun Titan》
3 《失脚/Oust》
2 《糾弾/Condemn》
2 《神への捧げ物/Divine Offering》
2 《瞬間凍結/Flashfreeze》
1 《天界の粛清/Celestial Purge》
1 《剥奪/Deprive》
1 《四肢切断/Dismember》
1 《審判の日/Day of Judgment》
1 《殴打頭蓋/Batterskull》

 しかし、その当時、そもそもの『Caw-go』を作った事でも知られる浅原 晃(神奈川)はこんなことを言っていた。

浅原 「いや、でもCaw(《戦隊の鷹/Squadron Hawk》)もBlade(《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》)もあるでしょ?」

 そんな浅原の予言通り、禁止直後にスタンダードで行われたPTQフィラディルフィアでは決勝の席にCaw-Bladeの姿があった。

 後に、「あんちゃん型」と呼ばれるCaw-Bladeの登場だ。

 日本選手権こそ、直前の白単鋼の流行もあり成績を残せなかったCaw-Bladeだが、その後の国別選手権などでの活躍は、たとえば、以下の公式サイトの津村 健志の記事でも言及されている通りだ。

・津村健志の『先取り』スタンダード・アナライズ:第64回:王者の復権〜新「Caw-Blade」分析
【http://mtg-jp.com/reading/tsumura/001919/】
「UW Caw-Blade Next」 / Yuuta Takahashi
PTQフィラデルフィア千葉/2位
Main Deck Side Board
4 《島/Island》
4 《平地/Plains》
4 《天界の列柱/Celestial Colonnade》
4 《金属海の沿岸/Seachrome Coast》
4 《氷河の城砦/Glacial Fortress》
3 《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
4 《地盤の際/Tectonic Edge》

4 《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
4 《刃の接合者/Blade Splicer》
4 《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》
1 《太陽のタイタン/Sun Titan》

3 《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》
2 《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》

4 《定業/Preordain》
3 《呪文貫き/Spell Pierce》
4 《マナ漏出/Mana Leak》
1 《糾弾/Condemn》
3 《四肢切断/Dismember》
3 《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》
3 《瞬間凍結/Flashfreeze》
2 《天界の粛清/Celestial Purge》
2 《糾弾/Condemn》
2 《失脚/Oust》
1 《未達への旅/Journey to Nowhere》
2 《神への捧げ物/Divine Offering》

 この第100回五竜杯の会場には、4人のグレービープレイヤー、つまりプロツアーへの参戦が確約された真のプロプレイヤーが参加している。

 そして、そのうち、「存在自体が《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」とまで言われるヴァラクートマスターである三原 槙仁(千葉)を除いた3人がCaw-Bladeを選択し持ち込んでいる。これは、禁止カード制定前と変わらないのではないか?

 というわけで、この大会にCaw-Bladeを持ち込んだ3人のプロプレイヤーに持ち込んだ理由と、現在のCaw-Bladeについてインタビューし、今後のメタゲームについて少し考えてみたいと思う。


■井川 良彦の場合

 まずは、先日の日本選手権でも見事トップ8に入賞した井川 良彦にきいてみよう。井川のデッキは、「あんちゃん型」Caw-Bladeの中でも直系、高橋 優太に直接レシピを聞いた形だということだ。
「UW Caw-Blade Next」 / Yoshihiko Ikawa
第100回記念 五竜杯
Main Deck Side Board
4《平地/Plains》
4《島/Island》
4《金属海の沿岸/Seachrome Coast》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4《天界の列柱/Celestial Colonnade》
4《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
3《地盤の際/Tectonic Edge》

4《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
3《刃の接合者/Blade Splicer》
4《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》
1《太陽のタイタン/Sun Titan》

3《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》
2《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》

4《定業/Preordain》
3《呪文貫き/Spell Pierce》
4《マナ漏出/Mana Leak》
2《四肢切断/Dismember》
3《未達への旅/Journey to Nowhere》
4《機を見た援軍/Timely Reinforcements》
3《レオニンの裁き人/Leonin Arbiter》
3《瞬間凍結/Flashfreeze》
2《神への捧げ物/Divine Offering》
2《家畜化/Domestication》
1《テューンの戦僧/War Priest of Thune》

井川 「Caw-Bladeのいいところは、どんなデッキとも五分以上に戦えるところですね。特別有利なマッチアップもないですけど、その代わり大抵のデッキに五分以上に戦える。それがこのデッキを選択する一番の理由になると思います」

 Caw-Bladeを現在のメタゲームで選択する理由として、対応力の高さを挙げる井川。実際、現在のチューンは、除去を増やして特に対応がしやすい形にしているという。

井川 「対応力という意味では《未達への旅/Journey to Nowhere》を《忘却の輪/Oblivion Ring》に変えたくなるかも知れないんですけど、このデッキでは、むしろその1マナの差が大きいと、あんちゃんに言われました。実際、その1マナが対応力につながっている部分はあると思います」

 単体で強力なクロックと軽量の除去が、現在のCaw-Bladeの最大の魅力だが、逆にそこのラインを崩さない構築が重要だという。

井川 「サイドボードに関してはかなり固定パーツが多いんですけど……あんちゃんが入れている《家畜化/Domestication》は同系相手に、《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》の返しでプレイしてドヤっってできるのがいいですね」

 実際に、同系戦を見据えた構築が今後のCaw-Bladeで重要になっていくのは必至である。この後話題に上がるカードだが、《エメリアの天使/Emeria Angel》なども返しで奪う事ができる《家畜化/Domestication》は、今後活躍することが期待されるカードだろう。

 Caw-Bladeというデッキの使い勝手にはほぼ文句がないという井川だが、日本選手権には青白の《鍛えられた鋼/Tempered Steel》デッキを持ち込んでいる。日本選手権の時にはCaw-Bladeという選択肢はなかったのだろうか?

井川 「うーん……今ならCaw-Bladeを使っているかも知れません。当時は練習量が足らなすぎてこのデッキがどれだけ強いデッキなのか、に気がつけていなかったというのはあります」

 現時点でもかなり完成度の高いレシピを提供されている井川だが、実際に使ってみての感想を聞いてみよう。

井川 「そうですね……強いて言えば《刃の接合者/Blade Splicer》はかえられる可能性があるかも知れません。ここを《呪文滑り/Spellskite》にすれば、決め手である《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》を守れる上に、《欠片の双子/Splinter Twin》デッキにも強い構成になりますからね」

 一見、0/4の壁に見える《呪文滑り/Spellskite》だが、実は防衛がないので、《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》を持たせればアタックする事が可能だ。実際、ここのスロットを《呪文滑り/Spellskite》にした形のCaw-Bladeを持ち込んだ中村 肇は、フィーチャリングマッチで《呪文滑り/Spellskite》に《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》を持たせて勝利している。



井川
 「ただ、だからといって、《刃の接合者/Blade Splicer》が弱いということでもないんですけどね。《呪文滑り/Spellskite》は単体ではほとんど機能しないカードですけど、《刃の接合者/Blade Splicer》は、3マナで4点のクロックとして機能してくれますから。このデッキはある程度クロックでプレッシャーをかけれないと苦しいので、単体での活躍としては《刃の接合者/Blade Splicer》が欲しい時もあります」

 このあたりのカード選択の機微に、現代のCaw-Bladeの特徴がありそうだ。


■中村 修平の場合


 続いて、2009年の日本王者であり、今期もLv8プレイヤーに向けて、順調にポイントを稼いでいる中村に話を聞いてみよう。

中村 「日本選手権の時には、ちょっと選択肢にはしにくかったですね。ちょうど、直前で《鍛えられた鋼/Tempered Steel》デッキが流行してしまっていたので、《審判の日/Day of Judgment》のようなカードを入れられないデッキではあまり出たくなかったというのがありますね」

 日本選手権では、同じカラーコンビネーションながら青白コントロールを使用していた中村だが、選択理由としてこのように語った。確かにCaw-Bladeは《審判の日/Day of Judgment》をメインから投入しにくいデッキなので、《鍛えられた鋼/Tempered Steel》には厳しいかもしれない。とはいえ、そこからメタが動いた今、来週日本選手権ならCaw-Bladeを使うでしょうね、と中村は付け加えた。

中村 「やはり、Caw-Bladeはすごく強いデッキだと思いますよ。基本的なマジックの押し引きを突き詰めたデッキであり、ものすごい攻撃的なカウンタースリバーですね。クロックパーミッションはプレイスキルがでるので、そういう意味で使いやすいデッキですね」
「UW Caw-Blade Next」 / Shuuhei Nakamura
第100回記念 五竜杯 / Top 4
Main Deck Side Board
4《島/Island》
4《平地/Plains》
4《金属海の沿岸/Seachrome Coast》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4《天界の列柱/Celestial Colonnade》
2《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
4《地盤の際/Tectonic Edge》

4《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
4《刃の接合者/Blade Splicer》
4《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》

3《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》
2《殴打頭蓋/Batterskull》
2《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》

4《定業/Preordain》
3《呪文貫き/Spell Pierce》
4《マナ漏出/Mana Leak》
2《四肢切断/Dismember》
2《未達への旅/Journey to Nowhere》
3《瞬間凍結/Flashfreeze》
3《レオニンの裁き人/Leonin Arbiter》
3《機を見た援軍/Timely Reinforcements》
3《審判の日/Day of Judgment》
2《忘却の輪/Oblivion Ring》
1《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》

中村 「ただ、逆に、プレイスキルを持ったプレイヤーが使わないと勝てないデッキになっているとは思いますけど」

 そんな中村に、Caw-Bladeでの戦い方について聞いてみた。

中村 「同系対決が特にそうなんですが、互いにクロックを用意しようという動きと、相手のクロックを邪魔しようという動きが均衡して、場が動かない事が多いです。そこで、よりうまく単体除去などを使えた側に天秤が傾いて、一気に勝負を決めていく感じのプレイになることが多いですね」

 今回使用している中村のデッキリストも、《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》や《刃の接合者/Blade Splicer》を採用した、そのような動きを実現しやすいレシピになっている。

中村 「今回のレシピは、ナベ(渡辺)と大体同じなんじゃないかな……互いに参考にしている部分はありますけど。ただ、ここまで同系が増えてくると、《刃の接合者/Blade Splicer》は少し微妙なカードに思えてきますね。先日のSCGオープンでGerry Thompsonが使用していた形は、完成度としてはまだ低いかもしれないけど、魅力的なアプローチに思えました」
「UW Caw-Blade Next」 / Gerry Thompson
StarCityGames.com Standard Open 2011-07-31/ 優勝
Main Deck Side Board
4《島/Island》
4《平地/Plains》
1《乾燥台地/Arid Mesa》
2《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
4《金属海の沿岸/Seachrome Coast》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
3《天界の列柱/Celestial Colonnade》
4《地盤の際/Tectonic Edge》

4《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
2《エメリアの天使/Emeria Angel》
1《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》

2《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》
2《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》
1《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》

1《思案/Ponder》
1《よじれた映像/Twisted Image》
3《定業/Preordain》
3《呪文貫き/Spell Pierce》
4《マナ漏出/Mana Leak》
1《四肢切断/Dismember》
2《乱動への突入/Into the Roil》
3《忘却の輪/Oblivion Ring》
2《機を見た援軍/Timely Reinforcements》
2《審判の日/Day of Judgment》
3《瞬間凍結/Flashfreeze》
2《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
2《精神的つまづき/Mental Misstep》
2《存在の破棄/Revoke Existence》
2《機を見た援軍/Timely Reinforcements》
1《審判の日/Day of Judgment》
1《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》
1《よじれた映像/Twisted Image》
1《剥奪/Deprive》

中村 「同系対決が増えて、コントロールよりの動きを要求されるようなゲームが増えるなら、《エメリアの天使/Emeria Angel》という選択肢はかなり魅力があります。あと、現時点のレシピでは《殴打頭蓋/Batterskull》がいらないように感じているので、ここを同系で強い《太陽のタイタン/Sun Titan》か《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》にしたい気もしますね」

 同系が増えてきていることを踏まえての構成変更が必要ではないかと考えている中村。《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》を選ぶか、《エメリアの天使/Emeria Angel》を選ぶかが今の構築の争点になるのではないかと語る。

 そこで、両方を同居させる事はできないか聞いてみた。

中村 「難しいですね。もちろん、マナ域の問題もあるんですが、デッキの軸として同居させるのは難しいカードだと思います。《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》は自分が殴りに行く盤面を作るためのカードで、《エメリアの天使/Emeria Angel》はじっくり攻める盤面を作るためのカードなので、他のカードの選択肢が変わって来ちゃいますからね」

−− 「たとえば、どの辺が変わりますか?」

中村 「さっき名前を挙げた《刃の接合者/Blade Splicer》なんかは典型です。これも自分から殴っていくためのカードですからね。今は、《刃の接合者/Blade Splicer》が微妙といったのもそれで、《エメリアの天使/Emeria Angel》を使うタイプの構築の方が同系を踏まえるといいかと思うから、それに伴って《刃の接合者/Blade Splicer》が抜ける、ってことです」

 《エメリアの天使/Emeria Angel》入りの形も見据えて、多くのバージョンが増えてくるだろうという中村。おそらく、中村のイメージでは、クロックパーミ色が強い形と、青白コントロールに寄せる形(それこそ元祖Caw-goのような形)の間で揺らぐアーキタイプとして認識されているのだろう。


■渡辺 雄也の場合

 それでは、最後に渡辺雄也のデッキについて聞いてみよう。

渡辺 「メタゲームによって、いくらでもカードを選択できるし、その上で、その時最も強い形に作り上げる事ができるのがCaw-Bladeの最大の魅力ですね」

 そう語る渡辺のデッキは、他の2名と違い、《乱動への突入/Into the Roil》の採用など、より軽いカードの選択が目立つ一方で、《太陽のタイタン/Sun Titan》などの決め手となるカードも投入されている。


「UW Caw-Blade Next」 / Yuuya Watanabe
第100回記念 五竜杯 / 優勝
Main Deck Side Board
4《島/Island》
4《平地/Plains》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4《金属海の沿岸/Seachrome Coast》
4《天界の列柱/Celestial Colonnade》
2《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
4《地盤の際/Tectonic Edge》

4《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
4《刃の接合者/Blade Splicer》
3《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》
1《太陽のタイタン/Sun Titan》

3《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》
2《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》

4《定業/Preordain》
3《呪文貫き/Spell Pierce》
4《マナ漏出/Mana Leak》
2《四肢切断/Dismember》
2《未達への旅/Journey to Nowhere》
2《乱動への突入/Into the Roil》
4《瞬間凍結/Flashfreeze》
4《機を見た援軍/Timely Reinforcements》
3《審判の日/Day of Judgment》
2《精神的つまづき/Mental Misstep》
2《忘却の輪/Oblivion Ring》

渡辺 「ベースとなってるのはPTQフィラデルフィアの時にあんちゃんが使っていたデッキですが、少しいじってありますね。具体的にはデッキの中の重いパーツを減らし、軽く、さらにインスタントで動けるカードを増やしています。個人的にはそうしないと《欠片の双子/Splinter Twin》デッキに対して苦しいかなと思うので」

 また、中村が不要ではないかと語っていた《殴打頭蓋/Batterskull》も、渡辺のデッキでは抜かれており、代わりに《太陽のタイタン/Sun Titan》となっている。

渡辺 「(双子デッキなどの)《酸のスライム/Acidic Slime》がきついデッキではあるんですけど、サンタイタン(《太陽のタイタン/Sun Titan》)がいれば戦えますからね。酸にはサンを。わぁい、コンボー」

 わぁい、コンボーとは言っていなかったが、同系だけでなく、双子相手の弱点を補う手段として効果的なカードとして《太陽のタイタン/Sun Titan》を採用したという。このマナ域のカードとしては《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》も強いため、選択は迷うところだとも、付け加えた。

渡辺 「とにかく、カードの選択によってメタに対応できるようになるのが、このデッキの最大の特徴だと思っています。今のデッキは日本のメタゲームにあわせて赤単やヴァラクートに強い殴れるカードである《刃の接合者/Blade Splicer》を使っていますが、コントロールや同系が増えるなら、《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》も抜いて、《エメリアの天使/Emeria Angel》にするのがいいかもしれません。別に、トークンが使いたいという理由だけで《刃の接合者/Blade Splicer》を使っているわけではないですよ」

 また、ちょうど同時期に開催中であったアメリカ選手権に持ち込まれたCaw-Bladeを指して、こうも語る。
「UW Caw-Blade Next」 / Luis Scott-Vargas
U.S Nationals Championship 2011 / Best 8
Main Deck Side Board
4《島/Island》
3《平地/Plains》
1《乾燥台地/Arid Mesa》
2《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
3《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4《金属海の沿岸/Seachrome Coast》
4《天界の列柱/Celestial Colonnade》
2《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
4《地盤の際/Tectonic Edge》

4《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
2《エメリアの天使/Emeria Angel》
2《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》

2《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》
1《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》
3《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》

4《定業/Preordain》
2《呪文貫き/Spell Pierce》
3《マナ漏出/Mana Leak》
3《四肢切断/Dismember》
3《乱動への突入/Into the Roil》
2《機を見た援軍/Timely Reinforcements》
2《審判の日/Day of Judgment》
4《瞬間凍結/Flashfreeze》
3《精神的つまづき/Mental Misstep》
2《蒼穹の魔道士/Azure Mage》
2《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
2《機を見た援軍/Timely Reinforcements》
1《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》
1《審判の日/Day of Judgment》

渡辺 「チャネル勢の持ち込んできたCaw-Bladeは、Caw-Bladeの可能性を広げた、非常に創造力を刺激されるレシピでしたね。ヴァラクートにはかなり厳しい代わりに、他のデッキへの勝率を上げてあります。日本でもヴァラクートが減ってくるようなら、こういう調整のデッキが勝てる様になっていくでしょうね」

 日本では依然ヴァラクートデッキが多いため、前のめりなチューンとして《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》《刃の接合者/Blade Splicer》を投入するべきだが、繰り返すように、メタゲームによって、無限の可能性を持っていると語る。

渡辺 「除去の選択一つとっても、色々と対応できるデッキが変わりますからね。《四肢切断/Dismember》は最優先で採用するべきカードだとは思いますが、他の除去はそれぞれ特徴があるカードだと思います。クリーチャーの選択もそうですが、様々なレシピをチェックして、それぞれのカードの選択にどういう意味があるのかを理解することが、自分と自分の地域にあったCaw-Bladeを作り上げる方法になるでしょうね」

 レシピに対する知識量が、デッキの完成度に寄与するだろうと渡辺は語るが、そんな中でデッキを成立させる一番のキモとなるカードについて語ってもらった。

渡辺
 「それはもちろん《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》です。このカードが強すぎるのが、このデッキが成立している理由ですね。僕は3枚採用できる形にしていますが、カードの選択によっては……たとえば、《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》を4枚入れるといったプランなどをとれば、《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》が4枚という戦い方もできると思います」

 以上、3名のプロプレイヤーに、簡単にではあるが、Caw-Bladeについて語ってもらった。


彼らの話を総合すると

・クロックを用意して、守るデッキなので、押し引きのプレイをしっかりとこなすスキルが必要。
・《刃砦の英雄/Hero of Bladehold》と《エメリアの天使/Emeria Angel》の選択や、除去のチョイスなど、カードの選択によって、戦えるデッキが変わる、柔軟性のある構築がある。
・《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》は強い。

 といったところが現在のCaw-Bladeの特徴と言えるだろう。

 まだまだ、未成熟なアーキタイプながら、使用期限は今月の10月まで。

 それまでに、あなたも、自分だけのCaw-Bladeを完成させてみてはいかがだろうか?