■Semi Final:川北 史郎(東京) vs. 高橋 優太(東京)

By Junya Takahashi

スイスドロー9回戦に加えて、決勝ラウンド3回戦。

全12回戦にも及ぶ長丁場のトーナメントにもようやく終わりが見えてきた。今なお生き残っているプレイヤーはわずかに4名のみ。開始時には会場中のテーブルが参加者で埋まっていたことを思うと、それが僅か2テーブルに収まっている現状は祭りの終わりに似た静けさに包まれている。

だが、その静けさに反した闘志を目に灯しているプレイヤーが2人。高橋と川北だ。2人は準決勝から公開となる互いのデッキリストに目を通し、 その淡々と記された文字列から、これから行われるゲーム像を必死にブートしている。

警戒すべきカードは何か。

サイドボードプランは。

ジャッジがリストを回収しにテーブルを訪れるまでの数分間 。
二人ともに脇目をふることなく向かい合うと、やっと顔を上げてテーブルの向こう側に座る対戦相手を見据えた。

今、準決勝が始まる。

●Game 1
ダイスロールの結果、貴重な先手を手にしたのは高橋だった。
《島/Island》から《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を場に出すと、2ターン目に《思案/Ponder》をめくって反転し、2枚の《思案》を
連打して地盤を整えていく。まさに『Delver』デッキのお手本といった軽快な動きだ。

それに対する川北は2ターン目のメインフェイズで《剣を鍬に/Swords to Plowshares》を《秘密を掘り下げる者》に打って脅威をどかすと、《師範
の占い独楽/Sensei's Divining Top》で次なるプランを練る。まだまだ序盤だ、と勢力争いの引き綱は緩めない。

その追随を突き放すように高橋が3ターン目に繰り出したものは乾坤一擲の《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》だった。

この被覆を持ったレジェンドを並の除去で捌くことは不可能で、おまけにこれは僅か1枚で6点ものクロックを生み出す特別製である。川北は早急にブロッカーか回答策の用意を迫られる。

『エスパー石鍛冶』、川北。

だが、無情にも川北の土地は2枚で止まってしまう。マナトラブルも合わさって《師範の占い独楽》の起動はもはや逆タイムワープである。占った3枚も待望の対抗策ではなく、泣く泣く手番を渡すこととなる。

それを見た高橋はここぞとばかりにアクセルを踏み抜く。《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》を追加した上で、待ったをかける川北の《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》と《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》をもカウンターで弾き飛ばすと、トップスピードのままチェッカーフラッグを受けた。

高橋 1-0 川北


●Game 2
川北も知っていた。このマッチを大きく左右する一枚こそが《聖トラフトの霊》だと。Game1は早いターンでプレイできた高橋にとって都合のいい展開だったことは事実なのだ。いったん盤面が落ち着いてしまえば川北に分があるのだから。

川北は焦った様子を見せず先手で始めることを宣言すると、豊富な単体除去と呪禁キラーこと《ヴェールのリリアナ》が含まれた7枚をキープした。

高橋は《思案》と《渦まく知識/Brainstorm》で攻撃の準備を着々と整える。

『青白クロックパーミ』、高橋

川北は3ターン目に引き込んだ《石鍛冶の神秘家》を繰り出してみると、それは高橋の《Force of Will》に阻まれてしまう。ただこれは川北にとって悪い結果ではない。こちらはスローゲームを目論んでいるのだから、高橋側がリソースを費やして防御に回るのは問題ないのだ。

だが、返すターンに高橋の手札から飛び出したのは《聖トラフトの霊》だった。川北の目にGame1の悪夢がちらつくが、このゲームでは高橋のリソースを削った上、手札には対抗策である《ヴェールのリリアナ》も握っている。

心配なのはこちらに3枚の土地しかないことだ。高橋はマナをすべて使用しているものの、レガシー環境には、その状態でもこちらを阻害する手段がいくつかある。その一つは先ほどの《Force of Will》だ。手札を1枚費やすものの確実に対象を打ち消す優れもの。もう一つは、《島》を手札に戻すことで呪文のコントローラーに1マナの支払いを要求する《目くらまし/Daze》である。

前者は仕方がないだろう。だが、後者はこちらが後僅か1マナさえ用意できてしまえばこれからのゲームを通して無駄になりうる1枚なのだ。ここで4枚目の土地に巡り会えるかどうかは以降のゲーム展開を確実に決定づける。

デッキにかけた指に力が入る。目を閉じてカードを引いた川北は、ゆっくりと目を開くとそれが土地でないことを確認した。

さて、ここからは《ヴェールのリリアナ》をプレイするか、まだ耐えられるとターンを返すか、という二つの選択肢と向き合わなければならない。
ただ実際のところ、その答えは一つだろう。高橋の勝利条件は紛れもなく現状を維持することだろうし、次のターン、あるいはその次にこちらが土地を引く確証はどこにもない。手札には6枚の可能性が握られ、場にはアンタップ状態の土地が3枚もあるにも拘らず、前に進む川北の歩く道は一本しか残されていない。

逡巡の後に川北は諦めたように土地を寝かせると《ヴェールのリリアナ》を高橋に見せた。

だが。

無情にも、想像通りにも。

高橋は素早く手札から《目くらまし》をテーブルに滑らせると、川北の淡い希望を打ち払った。

高橋 2-0 川北