■Round5: 田中 久也(東京) vs. 小笠原 翔(東京)

By Junya Takahashi

 このラウンドは、全勝テーブルを離れて3勝1敗の崖っぷちのテーブルからゲームの模様をお届けする。

 プレーオフに進出するために必要だと思われる成績は、おそらく最低でも2敗以上となるだろう。テーブルに座って開始を待つ両名は、今以上の敗北は避けなければならないと、デッキをシャッフルする手には力がこもっているように見える。
 予選ラウンドの折り返し地点を迎えた『Eternal Festival Tokyo 2012』。ゴールを目指す権利を継続するのはどちらだろうか。

●Game1
 ダイスロールの結果、先手を宣言したのは小笠原だった。配られた7枚をゆっくりと開くと、満足した表情でキープを宣言した。

 対する田中はやや悩んだそぶりを見せたが、最終的にその7枚でゲームを始めることにしたようだ。
 その苦悩の7枚は、小笠原の《Underground Sea》→《思考囲い/Thoughtseize》によって暴かれた。

小笠原 

『GP京都』準優勝、田中久也

・《極楽鳥/Birds of Paradise》
・《極楽鳥/Birds of Paradise》
・《極楽鳥/Birds of Paradise》
・《変幻の大男/Protean Hulk》
・《緑の太陽の頂点/Green Sun's Zenith》
・《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》
・《霧深い雨林/Misty Rainforest》

 なるほど。一見すると呪文が少なく映るが、マナ要素5枚の手札と言い換えられる内容だ。肝心のアクティブな呪文が少ないことが懸念点だったのだろう。確かに悪くはないが良くもない。

 小笠原もそれを確認した後に、とりあえず上の7枚の中から攻撃的な一枚である《緑の太陽の頂点/Green Sun's Zenith》を墓地に置いた。

 田中に選択肢はない。《霧深い雨林》から《Bayou》をサーチすると《極楽鳥》の1羽を場に出した。

 続くターン、アクション数に不安がある田中に差し出されたのは2枚目の《思考囲い》だった。ドローステップで引き込んでいた《緑の太陽の頂点》が落とされてしまう。

 《極楽鳥》にも《殺し/Snuff Out》が飛び、手札にある《変幻の大男》への道も遠ざかった田中の前に、小笠原の《死の影/Death's Shadow》と《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》の強力なクロックが迫る。

 田中は2枚目の《極楽鳥》と《死儀礼のシャーマン》を繰り出し、続くターンには《アカデミーの学長/Academy Rector》で小笠原を牽制する。

 小笠原は《アカデミーの学長/Academy Rector(UDS)》を前に苦い顔を見せたものの、できることは限られている。《湿った墓/Watery Grave(RAV)》をアンタップインして《死の影/Death's Shadow(WWK)》を成長させるとすばやくレッドゾーンへと送り込む。

 巨大な《死の影》の攻撃に《アカデミーの学長/Academy Rector》が犠牲になり、その能力で田中のライブラリーから場に出されたのは《再誕のパターン/Pattern of Rebirth》だ。

 田中はアンタップすると《自然の秩序/Natural Order》をプレイし、《再誕のパターン》のエンチャントされた《極楽鳥》を生贄に捧げる。

 小笠原はせめてもの抵抗と《Force of Will》で《自然の秩序》を打ち消すものの、スタック上には二の太刀の《再誕のパターンの誘発がある。案の定導かれたのは《変幻の大男》であり、現状を打破できない小笠原は投了した。

田中 1-0 小笠原


●Game2
 田中のデッキは《変幻の大男》を軸にしたコンボデッキで、それを《自然の秩序》と《再誕のパターン》でサポートしているようだ。場に出した《変幻の大男》が墓地に落ちると《影武者/Body Double》と《臓物の予見者/Viscera Seer》がサーチされ、《変幻の大男》に変化した《影武者》が《目覚ましヒバリ/Reveillark》をサーチすることで無限循環の完成というわけである。

 小笠原は、そのコンボを妨害しつつ、より早いゲームプランの構築を検討する。だが、幸運なことに小笠原のデッキコンセプトは田中の天敵といっても差し支えないものだった。手札破壊とカウンターのバックアップを受けたアタッカーによる攻撃。弱点らしい弱点であるライフの問題も、ライフへのプレッシャーの少ない田中のデッキでは問題にならないレベルだろう。

 ゲーム2は正にそれを象徴するようなゲーム展開となった。

 先手を取った小笠原は、《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》で田中の手札を確認すると、《秘密を掘り下げる者》を繰り出す。

 続くターンには《思考囲い》をフリップして《秘密を掘り下げる者》を反転させると、2枚の《思考囲い》をプレイし、田中の手札から《緑の太陽の頂点》と《自然の秩序》を抜き去る。

 全ての攻撃手段を取り除かれた田中はマナクリーチャーを並べて虎視眈々と逆転の機会をうかがう。

 だが、小笠原はついに最後まで田中を寄せ付けることはなかった。《ギタクシア派の調査》から三度の《思考囲い》で安全確認すると《森の知恵/Sylvan Library》、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を繰り出す。

 田中の逆転の一手であった《再誕のパターン》にも《突然の衰微/Abrupt Decay》で対応し、《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》を追加すると残り一息を一気に寄り切った。

田中 1-1 小笠原

《死の影》 


《再誕のパターン》 


●Game3
 お互いにデッキの力を見せ付けての3本目は、田中の先手で開始された。
 田中は7枚を即座にキープし、小笠原はやや難しい初手に悩まされる。理想的な青いカード群と《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》があるのだが、たった1枚だけ含まれている土地が《草むした墓/Overgrown Tomb(RAV)》だったのだ。

 青マナにたどり着けなかった場合は、田中のすばやいキープ宣言から察するに厳しいゲーム展開が予想される。ポーラライズされた判断に小笠原が下した決断はキープだった。
 後手ということも後押ししたのだろう。果たして小笠原は待望の青マナに辿り着くことができた。

 翻って初手から3ターン連続で土地を引いた田中は、小笠原の手札からあふれ出す呪文の数々に圧倒されてしまう。勝機はただ一点、小笠原のライフを攻めることだ。
 《森の知恵》、《思考囲い》、《ギタクシア派の調査》。《死の影》を強化するために費やしたライフの損失で僅か8にまで落ち込んだ小笠原のライフを田中は愚直に攻撃する。

 《臓物の予見者》と《飢えたルサルカ/Starved Rusalka》が3にまで数値を減らすも、小笠原は2枚目の《死の影》を場に出すと、手札に《Force of Will》を握り締める。
 僅かな隙間をねじ込む一手に願いをこめて引いた田中のドローは、無情にも最後まで土地だった。

田中 1-2 小笠原