■Round 4: 高橋徹(東京) vs. 洞口健一(千葉)

By Naoaki Umesaki

●Game 1

先攻の洞口が1ターン目に出したのは《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》。
先週に発売されたばかりの『ラヴニカへの回帰』に収録されているカードで、墓地対策としてレガシーでも活躍されるのではと噂されていたが、この『エタフェス2012』においてもサイドボードを中心に少なくないプレイヤーが採用しているようだ。

しかし、洞口はメインからの採用。発売から間もなく、まだまだ暗中模索の時期だが、実はメインデッキからでも輝ける程の強さを持っているカードなのだろうか。

そんなことを考えていると、堀口が《思考囲い/Thoughtseize》で高橋の手札から《Force of Will》を抜いて安全確認が完了。ゲームが動き始めた。

堀口が3ターン目に出したのは《ロッテスのトロール/Lotleth Troll》。
これもまた『ラヴニカへの回帰』のカードで、手札からクリーチャー・カードを捨てることによって強化されていくゾンビだ。

洞口のデッキは、いったいどんなデッキなのだろうか。 未知のデッキに対して、高橋は少し考えたあと様子を伺うように自身のターンを返すのだが、待っていたのは突然の大攻勢だった。

洞口 「そちらのエンドステップに《ロッテスのトロール》で《日を浴びるルートワラ/Basking Rootwalla》を捨てて、マッドネスでプレイします」

《野生の雑種犬/Wild Mongrel》と《ロッテスのトロール》の違いはあるが、約10年前のスタンダードで猛威を奮った『青緑マッドネス』の黄金ムーブである。

洞口の動きは、まだまだ止まらない。

洞口 「続けて、もう1枚《ルートワラ》マッドネス。さらに、《墓所這い/Gravecrawler》を捨てます」

いにしえの黄金ムーブに、新スタンダードで有望視されるゾンビ軍団のコンボが組み合わさり、洞口のデッキが躍動する。

洞口 「こっちのターンに入って、アタックで11点です」

つい先程までMAXだったはずの高橋のライフは、一気に危険域に追い込まれる。
続くターン、高橋はX=1の《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》で耐えにかかるが、全ての脅威を取り除ける訳ではないのでライフは4に。

半ば諦め気味に《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を出した高橋に対して、洞口は《生き埋め/Buried Alive》で大量の《墓所這い/Gravecrawler》を墓地に送り込む。これで、簡単には洞口の攻め手が切れることもなくなった。

まさに、爆発的な戦線構築。 1ゲーム目、洞口が圧巻の勝利だった。

高橋 0-1 洞口


●Game2

先攻の高橋は、1マリガンでのスタート。
しかし、マリガン後の手札も良くないのか表情はすぐれない。

洞口が《死儀礼のシャーマン》→《墓所這い》と展開する中、高橋のファースト・アクションは《安らかなる眠り/Rest in Peace》。

『ラヴニカへの回帰』に収録されている墓地対策カードで、相手の墓地を吹き飛ばすだけではなく恒久的に使用不可にする優れモノだ。
先程、《生き埋め》から大量の《墓所這い》をサーチしてくるギミックを見ているので、それを対策したサイドインだろう。

これに対して、洞口は後続のクリーチャーが続かない。レガシー環境においては《死儀礼のシャーマン》と《墓所這い》だけでは十分なプレッシャーとは言えず、良くはない展開に見える。

そんな中、高橋は4ターン目に《精神を刻む者、ジェイス》を着地させてゲームをコントロールしにかかる。これは、高橋のペースか。

そう思われた瞬間、洞口が貯め込んでいた手札を一気に爆発させる。

『ラヴニカへの回帰』のカードを多用する洞口

青白《石鍛冶の神秘家》デッキ、高橋

まず、高橋のエンドステップに《突然の衰微/Abrupt Decay》で《安らかなる眠り》を破壊。

続けて、自身のターンで《ロッテスのトロール》を着地させると、先程のゲームと同じように高橋のエンドステップにトロールで《日を浴びるルートワラ》を2体マッドネスでプレイ。

一気に、爆発的なダメージクロックを用意する。

高橋も《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》を出して受けに回るが、こんなものでは洞口のビートダウンは止まらない。

《渦まく知識/Brainstorm》を連打しながらの《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》で《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》をサーチして何とか一粘りと行きたい高橋だったが、洞口の場に出ている《死儀礼のシャーマン》が「2点のライフを失わせる」能力でジリジリと高橋のライフを削っていく体制に入っているので、粘りは許されない。

瞬間の出来事だったが、これにて勝負あり。
『ラヴニカへの回帰』のカードが、そのポテンシャルを大きく見せつける試合展開だった。

高橋 0-2 洞口

洞口 「《ロッテスのトロール》と《死儀礼のシャーマン》は本当に強い。前評判通りですね。また、ゲームには登場しなかったのですが、このデッキは《復讐蔦/Vengevine》も搭載しています。《墓所這い》の墓地からのプレイがあるので、墓地から帰ってきやすいんです。最速で2ターン目から《復讐蔦》が殴り始めることもあります。その他には、デッキに柔軟性を持たせるために《生き埋め/Buried Alive》からのリアニ戦略も組み込んでいたりもします」

『ラヴニカへの回帰』を多用した洞口のデッキは、非常に興味深い。もし、このまま『エタフェス2012』を勝ちあがってくれば、レガシー環境に一石を投じることになるかもしれない。