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2016年12月24日(土曜)〜25日(日曜)開催 『Eternal Festival Tokyo 2016』カバレージページ

カバレージCaverage

■『Eternal Festival Tokyo 2016』決勝戦:小林龍海(東京) vs 土屋洋紀(東京)

By Yuuya Hosokawa
マジックをやる理由は、人それぞれ様々だ。

プロツアーで勝ちたい。
競技が大好きだ。
自分が組んだデッキで戦うのが好きだ。
友人とわいわい遊びたい。

人の数だけ、遊ぶ理由が存在する。MTGほど沢山の遊び方があるカードゲームならば、それこそ千差万別に違いない。

だが一つだけ、確かなこともある。

全員が、マジックを愛しているということだ。

決勝のテーブルに着いている2人が、マジックのどんな部分が好きなのかまではわからない。だが、マジックが好きであることは確かだ。

土屋洋紀は、幾度となくレガシーのトーナメントで優勝しているプレイヤーだ。レガシーの大会に出たことがあるのなら、土屋を知っているに違いない。いつも上位テーブルで戦うその姿を見たことがあるはずだ。

強豪ひしめくこの「Eternal Festival Tokyo」(以下、エタフェス)でもトップ8に入ったことは一度ではない。何年もレガシーに打ち込み、勝ち続けている。それはレガシーへの惜しみない愛があるからだろう。

だからこそ、エタフェスに対する思いも強いはずだ。土屋は過去に何度もトップ8に入賞しながら、優勝経験はまだないのだ。

カナディアンスレッショルド、グリクシスデルバー。《秘密を掘り下げる者》と《稲妻》を使わせたら右に出る者はいない土屋だが、エタフェスには奇跡を持ち込んでいる。
土屋はたっぷりと奇跡を使い込んできた。レガシーを愛する土屋にとって、練習時間など厭わないのだ。


そしてそんな土屋と同じぐらい、レガシーに愛を持っている男。

それが小林龍海だ。
小林はレガシーを主戦場としているプレイヤーで、特に奇跡を愛用していることで知られている。奇跡を愛する姿は誰にも負けないだろう。

その証拠に、小林はいつでも奇跡を回している。大会に奇跡で参加するのは勿論だが、小林はその大会の途中でも奇跡を一人回ししている。

準決勝で景山との死闘を制した後、小林は息を吐いた。疲労しているであろう小林に、ジャッジは「決勝戦は10分後でよろしいですか?」と訊ねた。
小林は「はい」と答え、トイレに行った。そして2分ほどで戻ってくると、なんと奇跡の一人回しを始めたのだ。
誰よりも小林は、奇跡を愛している。

レガシーを愛する2人が、今頂点を目指して対峙する。
その手に奇跡を携えて。

土屋 洋紀


小林龍海 
■Game 1

奇跡対決は、激しい呪文の応酬で幕を開けた。

土屋は1ターン目に《思案/Ponder》、2ターン目に《相殺/Counterbalance》を唱えると、小林はこの《相殺》に《意志の力/Force of Will》。だが土屋も《意志の力》を持っており、まず《相殺》が着地する。

が、小林も負けてはいない。こちらも《相殺》を置き、まずはイーブン。

状況が変わったのは3ターン目だった。土屋はまず《予報/Predict》をキャスト。《思案》を宣言して2ドローすると、小林の唱えた《思案》は《相殺》で打ち消す。

そして伝家の宝刀、《僧院の導師/Monastery Mentor》。小林の手札に回答はない。

土屋の《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》には《対抗呪文/Counterspell》を合わせるも、モンクトークンが場に出てしまう。

更に《議会の採決/Council's Judgment》が《相殺》でめくれた《僧院の導師》で打ち消されてしまい、万事休す。

土屋は《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》を唱えて小林の手札に脅威がないことを確認すると、果敢を駆使して小林のライフを削りきった。

土屋 1-0 小林


小林「ナチュラル相殺が2回決まったー(笑)」
土屋「流石に強すぎた」

ナチュラル相殺とは、ライブラリートップを操作していない状態から《相殺》で相手の呪文を打ち消すことだ。

これが1度ならず2度決まってしまったというのは、小林にとって不運としか言いようがないだろう。

にも関わらず、小林はその不運を嘆かない。
そればかりか、《ヴェンディリオン三人衆》を《カラカス/Karakas》で戻すタイミングにミスがあったかを土屋に訊いている。

そしてまだもう1ゲームあるというのに、土屋もその難しい質問に真剣に答えている。

真剣勝負の場でも、議論を交わす。レガシーを愛する2人だからこそだ。
■Game 2

先手後手を選ぶ権利を持っている小林は後手を選ぶ。

お互いに土地を並べ合い、ファーストアクションは土屋の《渦まく知識/Brainstorm》となった。
次のターンに土屋は《思案》を使うと、対応して小林は《渦まく知識》を打つ。
そしてフェッチランドでライブラリートップを新鮮なものに変えると、《狼狽の嵐/Flusterstorm》で《思案》をカウンター。

ゲームが動いたのは次のターン。土屋の土地が3枚で止まったところで、小林は《ヴェンディリオン三人衆》を唱えたのだ。

コントロールミラーマッチにおいて土地を伸ばすことは何よりも重要だ。小林の後手選びが活きている。

《ヴェンディリオン三人衆》で見た土屋の手札は2枚の《ヴェンディリオン三人衆》に《意志の力》、そして《紅蓮破/Pyroblast》。ちなみに土屋の戦場に赤マナはない。

ここから小林は《意志の力》をチョイス。そして自分のターンに入ろうとするが、土屋はそれを制して《ヴェンディリオン三人衆》をこちらもキャスト。

小林の手札は2枚の《紅蓮破》に《師範の占い独楽》、そして《意志の力》と強烈なもの。土屋はここから《師範の占い独楽》をデッキのボトムに送り込む。

だがしかし、小林は《師範の占い独楽》をドロー。これには土屋も顔を歪める。続けて《相殺》をプレイするが、土屋も強い。《意志の力》を引き込んでおり、一方的なゲームを許可しない。

そして《師範の占い独楽》に辿り着いた小林に遅れぬよう、こちらは《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をプレイ。《ヴェンディリオン三人衆》により《紅蓮破》を見ているため、即座に0能力を起動する。

小林は土屋の《ヴェンディリオン三人衆》を《カラカス》で戻し、《精神を刻む者、ジェイス》を打ち落とす。

と、クリーチャー戦闘はここで一度ストップ。土屋が《ヴェンディリオン三人衆》に対処し、戦場は一旦静寂に包まれる。

ならばと、今度はクリーチャー以外のプレッシャーを小林は突きつける。そう、《相殺》だ。たまらず土屋は《渦まく知識》を打つが、この《相殺》は結局通ってしまう。

スペルが、少なくとも1マナのカードは通らなくなってしまった土屋。
こちらも《相殺》を唱え、これを打ち消そうとした《紅蓮破》を《意志の力》で返し、なんとか着地させたのだが、《師範の占い独楽》《相殺》を揃えた小林は万全の体勢で、《精神を刻む者、ジェイス》に手を伸ばす。

念のため《相殺》の誘発を宣言する土屋だったが、ナチュラル相殺はならず。

《精神を刻む者、ジェイス》が土屋のライブラリーの検閲を始めると、エターナルフェスティバル決勝戦は、最終ゲームまでもつれることとなった。

土屋 1-1 小林


奇跡を使い込み、《僧院の導師》をメインボードに入れることに決め、まさにそのカードでゲーム1を先取した土屋。

奇跡を使い込み、奇跡ミラーマッチでは先手の利が薄く、それならば1枚多くのカードを引ける後手の方が有利だと判断し、後手を選び、事実土屋の土地を1ターン止めてゲーム2を取った小林。

レガシーを愛している2人の濃厚な奇跡対決。

ずっと見ていたい。そして2人もできることならば、ずっとこのミラーマッチをプレイしていたいだろう。

名残惜しい。だが、誰がどれだけ望んだとしても、次が最後のゲームだ。


■Game 3

土屋も後手を取り、エターナルフェスティバルの最後の戦いが小林の《師範の占い独楽》で始まった。2ターン目には早速この《師範の占い独楽》を回し、土屋は《渦まく知識》で手札の充実を図る。

まず刃を突きつけたのは小林。《カラカス》を立たせて《相殺》を唱える。レスポンスで土屋は《渦まく知識》を唱えた後、《意志の力》で《相殺》を打ち消す。

そして土屋も《師範の占い独楽》に辿り着く。

だが、小林は一息つけさせる間を与えない。2枚目の《相殺》をキャストし、土屋の《対抗呪文》を狙い済ました《紅蓮破》でカウンター。《師範の占い独楽》《相殺》のコンボを先に決めることに成功したのだ。

有利なのは間違いなく小林だ。だが、土屋には伝家の宝刀がある。何度も土屋を救い、対戦相手に土をつけさせた、あのカードが。

《僧院の導師/Monastery Mentor》だ。
これが通れば、後は何をカウンターされても良い。

場に出れば。

小林は《相殺》の誘発を宣言し、ニヤリと口元を歪めた。公開したのは《僧院の導師》!

うめきながら、土屋は《僧院の導師》を墓地に置く。

そして小林の場に着地する《僧院の導師》。生み出されていくトークン達。

この状況を打破できるカードは《終末/Terminus》しかない。《師範の占い独楽》を回し、《予報/Predict》を唱え、再び《師範の占い独楽》。

《紅蓮破》、《狼狽の嵐》。打ち消しが土屋の手札とライブラリーに集まっていく。

土屋にできることは、もう一つしかなかった。

持っていた手札を全て置く土屋。
その手は、最後は勝者を讃えるために。

土屋 1-2 小林


奇跡を愛した男は、決勝ではその愛する奇跡を倒し、300人を超えるエターナルフェスティバルの頂点に立った。

小林の第一声は、喜びの言葉ではなかった。
疲労を漏らす一言でもなかった。

小林「あのプレイなんだけどさ」

そう、小林は決勝戦の自らのプレイについて、仲間と議論を始めた。

沢山の賞品に目もくれず、奇跡について語り始める小林。優勝者の写真撮影が終わっても、奇跡の話を続けている。それを聞く仲間たちの表情は真剣そのものだ。
これからもずっと小林は、《師範の占い独楽》を回し、《相殺》でロックし、《天使への願い》で4/4の天使を並べていくだろう。

誰よりも、奇跡を愛しているのだから。

「Eternal Festival Tokyo 2016」優勝、おめでとう! 小林 龍海!