By Naoaki Umesaki |
2015年で6年目の開催となった『Eternal Festival Tokyo』(通称:エタフェス)。 2015年は最終週となる12月26日~27日に開催され、年末の忙しいタイミングにも関わらず300名を超える参加者が集まる大盛況のうちに終了した。 このコラムでは、2015年に開催されたレガシー大型イベントにおいて『Eternal Festival Tokyo』準優勝、『グランプリ京都』10位入賞といった好成績を残した青柳元彦(神奈川)をゲストに迎えて、簡単に2015年のレガシー界総括。そして『グランプリ千葉2016<レガシー>』に向けての話をしていきたい。 -「2日間の激闘、お疲れ様でした。2015年も終わりですが、これから始まる2016年もレガシー界では『グランプリ千葉』などの大規模イベントが控えています。ここで今一度、2015年のレガシー界を振り返り、総括してみたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。」 青柳「宜しくお願い致します。そうですね、2015年のレガシー界を語る上で大きな要素としては『日本で初めてレガシー・フォーマットのグランプリが開催されたこと』。そして、『《時を越えた探索/Dig Through Time 》の禁止』。この2つがあったと思います。」 -「なるほど。それでは、順番にお伺いしていきたいと思います。」 |
『エタフェス2015』準優勝、『グランプリ京都』10位 青柳元彦(神奈川) |
●《時を越えた探索/Dig Through Time》の禁止 青柳「改めて振り返ると、2015年は探査呪文に振り回された1年でしたね。」 -「2015年1月に《宝船の巡航/Treasure Cruise》が、9月に《時を越えた探索/Dig Through Time》がレガシー・フォーマットで禁止となりました。」 青柳「悔しい、でも使っちゃうって感じでした。少し強すぎましたね。」 -「文字通り、猛威を振るっていましたね。『タルキール覇王譚』を代表するカードが揃って禁止されたことで、レガシー環境は『タルキール覇王譚』発売前のメタゲームに戻るのかと思いきや、現在は少し違ったメタゲームとなっています。具体的に、メタゲームはどのように変わったでしょうか。」 青柳「《時を越えた探索》が禁止されたことによって、それまで幅を利かせていた『Show Tell』が弱体化して数が減りました。環境のバランスが取れているのでしょう、色々なデッキタイプが勝つようになりました。」 -「ゲームの性質としては、どのような変化がありましたか?」 青柳「パワーカードの《時を越えた探索》が使えなくなったことにより、《渦まく知識/Brainstorm》などの軽量ドロー呪文の評価・使われ方が正しいものに戻りましたね。」 -「正しくなった? どういったことでしょうか?」 青柳「《時を越えた探索》などの探査呪文が使えた頃は、墓地にカードを貯めるためにゲーム序盤から《渦まく知識》や《思案/Ponder》などを、ある意味雑に使っていくプレイが正当化されていました。でも、《渦まく知識》が雑に使われるってゲームとしてオカシイ感じですよね。」 -「確かに、そうですね。」 青柳「今は本当に必要な時に打つのが正しいプレイになり、適当に《渦まく知識》を打つ人は勝てないゲームになっています。感覚として健全なゲームになり、メタゲームには様々なデッキタイプが生存できています。禁止裁定が続いていますが、個人的にはこれ以上の禁止カードを出す必要は無いように感じています。」 -「しかし、印象としては『ANT』と『UW Miracle』が抜けて成績を残している気がします。」 青柳「ええ。しかし、『ANT』や『UW Miracle』のデッキパワーがズバ抜けている訳ではないと考えています。この2つのデッキはゲームの中で分岐が多く、使いこなすのが難しい『やりこみ系デッキ』なんです。なので、慣れない人が使っても強い訳ではありません。日本だけではなく、アメリカの大型大会の結果を見ても『UW Miracle』や『ANT』で勝っているのは毎回同じ人です。どちらかと言うと、デッキ性能よりもパイロットが強かったということだと思っています」 -「なるほど」 青柳「今回の『Eternal Festival Tokyo 2015』で優勝したのは『赤単ペインターコンボ』でしたよね。これも、今までの経験や調整が活きた『やり込み系デッキの勝利』なのだと思います。《時を越えた探索》が使用できた時とは違って、そういった経験や調整が報われる感がある。やはり、今のレガシーは健全だなと感じます。」 ●2015年に発売されたカードで、レガシー環境に影響を与えたもの -「少し話は逸れますが、2015年に発売されたエキスパンションはレガシー環境にどのような影響を与えていたのでしょうか。簡単に振り返ってみたいと思います。」 青柳「すぐに思いつくのは、《僧院の導師/Monastery Mentor》と《グルマグのアンコウ/Gurmag Angler》でしょうか。」 -「どちらも、2015年1月に発売された『運命再編』のカードですね。」 青柳「《僧院の導師》は今回のイベントで自分が使ったデッキのサイドボードにも入っています。『UW Miracle』がこのカードをサイドインしてくるのはバレバレだと思うのですが、対戦相手としては活躍しない瞬間も多いクリーチャー除去を残したりサイドインしたくないんですね。しかし、戦場に残ってしまうとダメージクロックは半端無い。厄介な1枚です。」 ー「《グルマグのアンコウ》についても、お願い致します。」 青柳「こちらは『UBRデルバー』などで使われています。5/5と《タルモゴイフ/Tarmogoyf》にも戦えるサイズがあり、コンボデッキ側から見ても5点はデカいダメージクロックです。」 -「数年前までは見なかった『UBRデルバー』というデッキタイプも、今ではメジャーになりました。やはり、あまり動きがないと言われるレガシー環境も、何だかんだで新しいカードの影響を受けているんですね。」 青柳「また、去年に印刷されたカードなのですが『統率者2014』の《封じ込める僧侶/Containment Priest》は2015年になってから評価が高まり、一般的に使われ始めたカードです。色々なカードがあるとは思いますが、こういったカード達がレガシー環境に影響を与えた2015年の新顔として挙げられそうです。」 ●『グランプリ京都2015』<レガシー>の開催 ー「ゲーム内容については簡単に振り返ることが出来たので、次はレガシーを遊ぶ環境について振り返りたいと思います。先ほど青柳さんから話題を出して頂きましたが、2015年は日本で初めてとなるレガシーのグランプリが京都で開催されました。結果は2000人近い参加者を集める大盛況。こうした背景もあってか、2016年も千葉でレガシーのグランプリが開催されることになりました。レガシーが、一気にメジャーなフォーマットになったと感じる1年でした。」 青柳「そうですね。初めてレガシーのグランプリが開催されたことによって、新しくレガシーをプレイするようになった人も増えましたし、古いカードを懐かしんでレガシーからマジックに復帰する人も多く見ました。やはり、グランプリが開催されるフォーマットになったというのは大きいと思います。」 -「グランプリが開催されたことによって、レガシーの大会も増えましたか?」 青柳「少し前まで、レガシー・フォーマットは目標となるような大きなイベントが少なく、スタンダードと比べると寂しい印象もありました。しかし今は違います。グランプリという大きな目標があります。そして、『エタフェス』もそうですが、『Big Magic Open』や『神決定戦』といった地域の大規模イベントもあります。」 -「やはり、目標となるような大きなイベントがあると違いますよね。安心して遊べるフォーマットになりました。こうしてレガシーの大会も増え、遊ぶ人口が増えたことにより、何か良かったこと、エピソードなどはありますか?」 青柳「グランプリのフォーマットになったことにより、それまではレガシーをプレイしたなかったプロプレイヤーの方々もレガシーの大会で見かけるようになりました。今回の『エタフェス』でも、スイスドローラウンドでモリカツさん(※森勝洋氏)と対戦することが出来ました。自分が高校生の時代から世界で活躍していた方で、嬉しかったですね。」 -「改めて振り返ると、2015年でレガシーを取り巻く環境が大きく変わったことがよく分かります。」 ●『グランプリ千葉2016』<レガシー>に向けて -「最後に、2016年11月に開催される『グランプリ千葉』<レガシー>に向けた話をしたいと思います。まだまだ先の話ですが、これからのレガシー環境がどうなっていくか、何か予想されていることなどはありますでしょうか?」 青柳「日本では青いデッキがよく研究・調整されており、結果も残しています。しかし、アメリカで開催されている大型大会の結果を見ると、日本ではあまり活躍していないデッキタイプも多く結果を残しています。例えば『Death & Taxes』(通称:デスタク)とかは、よく勝っていますよね。」 -「日本のメタゲームが偏っている部分があるという指摘ですね。確かに、日本ではあまり流行っていない有力デッキを研究・調整する人が日本でも出てくれば、まだまだメタゲームも動きそうですね。しかし、未知に近いデッキタイプを練習するのは何かと大変そうです。」 青柳「自分はノブ君(※斉藤伸夫)達と『UW Miracle』の練習グループを作って、普段からラインなどで意見交換をしたりしています。結果、グループとして良い結果を残せた1年になったと思います。1人で強くなるのには限界もあるので、同じデッキを調整する仲間同士でグループを作って練習するのがいいかなと思います。」 -「なるほど。『GP千葉2016』では、これから『デスタク』を研究・調整するグループが結果を残すなんてこともあるかもしれませんね。」 青柳「そうですね。今回の『エタフェス』を優勝した『赤単ペインターコンボ』もノーガードでしたが、よく研究・練習をしていた方で、手強かった。こういったように、実は強くて戦えるデッキがまだまだあるんだと思います。」 -「まだ《時を越えた探索》が禁止になってから数ヶ月。まだまだ研究の余地ありということですね。『GP千葉2016』までには新エスパンションも何個か出ますし、まだまだレガシーのメタゲームは動きがありそうです。楽しみですね。本日はお疲れの中、お付き合い頂きありがとうございました。」 青柳「ありがとうございました。」 |
【2015年1月禁止】 【2015年9月禁止】 |