■Round 6: 窪寺 雄輝(東京) vs. 仙波恒太郎(千葉)

By Ume-Nao

 慣れた様子でフィーチャーエリアへの移動を済ませ、「そろそろ呼ばれると思いましたよ!」と語りながら試合の準備を進めているのは、昨年度のFinals王者、 仙波恒太郎(千葉)。

 今のところ5戦全勝で勝ち進んでいる仙波、少し前までスタンダード環境で大暴れしていた『青白Caw-Go』を彷彿とさせるようなデッキタイプを使用しているという。

 《戦隊の鷹/Squadron Hawk》《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》という御馴染の顔ぶれはそのままに、黒をタッチしてメインの《名誉回復/Vindicate》やサイドの《強迫/Duress》を用意。《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》のカードパワーを更に向上させているようだが。

仙波 「イニストラードで新しく入った《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》はタダ強さ!《名誉回復/Vindicate》はクリーチャーだけじゃなくてプレインズウォーカーに対処できるのがナイス。 僕はアドバンテージ廚なんで、手札をすり減らしながら耐える『CTG』みたいなデッキは無理。このデッキはむしろ手札を増やしながら有利を拡大していくんだ。」

 スタンダードでは圧倒的なパフォーマンスを見せた『Caw-Go』と仙波、レガシー環境でも自信を見せる。

 対する窪寺が使用するのは、『緑単エルフ』。普通にクリーチャー展開をしてビートダウンで勝利を目指すのはもちろん、《遺産のドルイド/Heritage Druid》と《イラクサの歩哨/Nettle Sentinel》のマナ製造コンボ+《垣間見る自然/Glimpse of Nature》による大量ドローで爆発的クリーチャー展開をするコンボデッキ的な要素も持っているデッキだ。

 窪寺は関東圏で行われていたトライアル大会でも『緑単エルフ』を使用して上位入賞を果たしており、このデッキタイプに絞って練習・調整をしてきた成果がここまで全勝という成績に出ているように見うけられる。

2010年度構築王者、仙波

 構築王者vs.やりこみエルフ強者。6連勝を決めるのは、どちらか。

Game 1

 窪寺がアイスエイジ産の《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》こと《Fyndhorn Elves》で好調なスタートを切るが、これは仙波がすぐに《剣を鍬に/Swords to Plowshares》で対処。『緑単エルフ』が理想的とする順調なクリーチャー展開を許さない。

 続けて窪寺は《エルフの幻想家/Elvish Visionary》でドローを進めるが、仙波が《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》で《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》をサーチしてきたことで状況が慌ただしくなってきた。
 窪寺の使う『緑単エルフ』は、クリーチャーを展開しながら勝利に向かうデッキ。恒久的にクリーチャーを除去されてしまう《梅澤の十手》は非常にマズいカードだろう。

 《梅澤の十手》が活躍するような展開となる前に勝負を決めるべく、窪寺は《イラクサの歩哨/Nettle Sentinel》《遺産のドルイド/Heritage Druid》とクリーチャー展開を進めるのだが、再び仙波の《剣を鍬に》がエルフの爆発的展開を許さない。

 窪寺は《ワイアウッドの共生虫/Wirewood Symbiote》によって、《梅澤の十手》にカウンターが乗ることを防ぎながら《エルフの幻想家/Elvish Visionary》でドローを進め、クリーチャー展開を続けていくのだが…。

 仙波は窪寺のエンドステップに《瞬唱の魔道士》をキャストして、《剣を鍬に》のフラッシュバックで《ワイアウッドの共生虫》を除去。
 これまで、《ワイアウッドの共生虫》によって押さえ込まれていた《梅澤の十手》が機能する状態となってしまう。

 《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》にカウンターが乗り始めると、仙波は《石鍛冶の神秘家》2号で《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》をサーチしてリードを広げにかかる。

 《梅澤の十手》と《饗宴と飢餓の剣》。この2枚が機能し始め、窪寺の戦線がどんどんと壊滅してゆく。

 《召喚士の契約/Summoner's Pact》から《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》をサーチし、傍若無人な装備品への対処を試みるのだが…。

 仙波はこの反撃を《対抗呪文/Counterspell》でシャットアウト。窪寺の投了となった。

 窪寺 0-1 仙波

エルフ、窪寺

Game 2

 再び窪寺のマナクリーチャーを仙波が《剣を鍬に》で追放し、《石鍛冶の神秘家》で《梅澤の十手》を持ってくる立ち上がり。第1ゲームでの殺戮劇が思い返される。

 窪寺は《クウィリーオン・レインジャー/Quirion Ranger》《Fyndhorn Elves》と後続を展開したところで、仙波は《石鍛冶の神秘家》の能力で《梅澤の十手》ではなく《殴打頭蓋》を戦場に登場させた。
 能力で《梅澤の十手》を戦場に出しても装備させる先が《石鍛冶の神秘家》しかなく、相手にブロックされると《石鍛冶の神秘家》が死んでしまうことを考え《殴打頭蓋》を先に出したのだろう。もちろん、相手がアーティファクト破壊をサイドインしてきていることもある。

 こうして、3ターン目にして【4/4 警戒+ライフリンク】が攻撃を始めるのだが、窪寺は土地が1枚で止まっており非常に厳しい状況に追い込まれた。

 これを見た仙波は《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を急がない。《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をキャストして、《Fyndhorn Elves》のバウンスで窪寺のマナを縛る。

 溜まらず窪寺は《クローサの掌握》をキャストして《殴打頭蓋/Batterskull》を破壊するのだが、これで仙波の《梅澤の十手》が活躍になってしまった!

 仙波が目指した《精神を刻む者、ジェイス》と《梅澤の十手》が大暴れする展開。この対処は容易ではない。

 窪寺は《ヴィリジアンのシャーマン》で《梅澤の十手》に対処するのだが、《精神を刻む者、ジェイス》は未だ大暴れしておりゲームの優位差は広がっていくばかり。
 更に言うと、仙波は手札に《対抗呪文/Counterspell》を持っていたが、先ほどの《ヴィリジアンのシャーマン》をカウンターせず様子を伺っていたのだ。

 仙波は《神の怒り/Wrath of God》で場を一層すると、窪寺が追加の戦力を得るために本当に通したかったであろう《暴走の先導/Lead the Stampede》を温存していた《対抗呪文》でカウンターとゲームを完全に読み切ったプレイ。

 窪寺も《背教の主導者、エズーリ/Ezuri, Renegade Leader》を出したりと最後まで抵抗は続けるが、最後は《精神を刻む者、ジェイス》の奥義がさく裂して勝負あり。構築王者に軍配があがった。

窪寺 0-2 仙波

 昨年の『エタフェス』で『緑単エルフ』を使いTop8入賞を果たしている細川が、この勝負を見てこう溢した。

細川 「今の環境はエルフきついと思う。特に《石鍛冶の神秘家》が終わってる。持ってこられる装備品3枚が全部キツいもん。あと、去年と違って《瞬唱の魔道士》で《剣を鍬に》を使いまわされるみたいな酷いパターンもあるからね。俺もエルフを使いたかったけど、今年は違うデッキ使ってる。」

 これに窪寺も「ドレッジみたいなもんでメインは勝率高いんですけど、サイド後は特に厳しいです」と同意。環境の変化と共に、エルフには厳しい風が吹いているのかもしれない。