■Round 5: 吉原 知基(神奈川) vs. 玉田 遼一(大阪)

By Daisuke Kawasaki

 2010年の3月。

 国内屈指の人数を集めたグランプリ横浜。その、森 勝洋と黒田 正城の決勝の横で、これもまた、日本史上に残る人数を集めた大会の決勝戦が行われていた。

 197人という当時最大の人数を集めたレガシートーナメント、www.gamingetc.com協賛の決勝戦だ。

 その決勝で成田 修平と対戦していたのが、吉原 知基(神奈川)。例えばZooのような、フェッチランドとのシナジーがほとんど無いデッキでも、フェッチランドを温存するプレイをしてしまうほどのCTGの権化、CTGの化身であり、この大会もCTGによって優勝した。

 《精神的つまづき/Mental Misstep》の跋扈により、CTGが完全に息の根を止められていた時期こそ、青入りのZooなど、様々なデッキをプレイしていた吉原だが、《精神的つまづき/Mental Misstep》なきあとの今大会には、当然のように最新型のCTGを持ち込んでいる。

 対するのは、昨年の日本選手権トップ4の玉田 遼一(大阪)だ。

 日本選手権での戦績はもちろん、昨年のメタゲームを制した赤緑ヴァラクートを一足早く完成させるなど、デッキビルダーとしての才覚でも注目を集めている。

 そんな玉田が持ち込んだデッキが何か、にも注目したい。

Game 1

 ダイスロールで先手は玉田。玉田は1ターン目に《渦まく知識/Brainstorm》を打つが、対する吉原は、フェッチを即起動できる2ターン目まで温存する。

 そして、その《渦まく知識/Brainstorm》を撃とうと待ち構えていた玉田の3ターン目のターンエンド。玉田のキャストした1枚のカードが、玉田のデッキの正体を完璧に吉原に伝える。

『CTG』愛好家、吉原
 《Candelabra of Tawnos》。

 このカードを使うデッキなど、ひとつしか存在しない。ハイタイドだ。


 これを受けて吉原は2枚の《渦まく知識/Brainstorm》をフェッチを挟んで使用し手札の充実をはかる。そして、さらに《闇の腹心/Dark Confidant》をプレイし、クロックを用意しつつ、手札に回答策が来ることを目指す。

 玉田は改めて《島/Island(ISD)》を置くだけでターンを返す。吉原は《闇の腹心/Dark Confidant》でめくれた《四肢切断/Dismember》によって3点のダメージを喰らいつつも、さらに追加の《渦まく知識/Brainstorm》と《闇の腹心/Dark Confidant》によって手札とクロックを充実させる。

 だが、続くターン。玉田の手からは《High Tide》がプレイされる。《島/Island(ISD)》は4枚。手札は5。吉原は小考の末に、これを許可。続いて玉田のプレイする《瞑想/Meditate》には、《Force of Will》。ここから激しいカウンター合戦が繰り広げられる。

 まず、吉原の《Force of Will》を玉田も《Force of Will》。これが一旦解決されたあとで、吉原は再びの《Force of Will》をプレイ。これに対して、玉田は全ての《島/Island(ISD)》をタップして3マナを生み出すと、《Candelabra of Tawnos》で《島/Island(ISD)》を3枚アンタップ。そして、そこから生み出される6マナで《Force of Will》をピッチではなくプレイ。2度のカウンターをくぐり抜けてカウンターできるほど吉原にも余裕はなく、結果《瞑想/Meditate》は解決されてしまう。

 だが、2回のカウンター合戦は、むしろ吉原にこそ利した。ここでほとんどのマナを使い切ってしまった玉田は、結局《瞑想/Meditate》で手に入れた手札を使う事がほとんどできなかったのだ。

 続くターンに《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を戦場に追加した吉原は、《瞑想/Meditate》によって得た追加ターンで玉田のライフを削りきったのだった。

 吉原 1-0 玉田
Game 2

 先手の玉田は1ターン目に《渦まく知識/Brainstorm》をプレイすると、2ターン目にはさらに《定業/Preordain》をプレイし、手札を充実させる。そして、余った1マナで《Candelabra of Tawnos》をプレイする。

 だが、この《Candelabra of Tawnos》はさすがに吉原も許さない。《呪文貫き/Spell Pierce》でカウンターすると、自身のターンに《闇の腹心/Dark Confidant》をプレイする。

 毎ターン2点のクロックというだけでなく、ターンが進めば進むほどアドバンテージ差によって不利になることが確定した玉田。土地こそ止まってしまったものの、2枚目の《Candelabra of Tawnos》をプレイしてターンを終える。

 《闇の腹心/Dark Confidant》でめくれた《思考囲い/Thoughtseize》をプレイした吉原。玉田の手札をのぞいてみると……《時のらせん/Time Spiral》が2枚に《High Tide》が2枚、そして《転換/Turnabout》という非常に厳しい内容。一旦、その手札でゲームが終わるかどうかを検討した上で、《時のらせん/Time Spiral》をディスカードさせることを選ぶ。そして《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》をプレイするとマナを残さずにターンを終える。

 改めて、玉田のターン。土地は引けず。

 小考の末に、玉田は意を決してコンボをスタートさせる。まず、《High Tide》をプレイし、《島/Island(ISD)》から出た2マナで《Candelabra of Tawnos》の能力を起動して《島/Island》を2枚アンタップさせる。そして、改めて2マナを《島/Island(ISD)》から産みだして、《High Tide》の2枚目をプレイ。

 余らせた1マナと、3マナ生み出せるようになった《島/Island(ISD)》とであわせて4マナを生み出すと、《転換/Turnabout》。これで《島/Island(ISD)》を2枚アンタップして、6マナうみだし、《時のらせん/Time Spiral》!

「日本選手権2010」Best4、玉田

 ……ここには無情に《Force of Will》。

 吉原も土地が止まってしまい、厳しい状況には違いなかったが、先の攻防でリソースを使い果たしてしまっていた玉田は、その機に乗じることはできなかった。

 吉原 2-0 玉田

 意外にも、メタからは外れているものの、メジャーなデッキであるハイタイドを持ち込んできた、玉田。その理由を聞いてみた。

玉田 「フィラデルフィアに行ったとき、《Candelabra of Tawnos》がすごくやすかったから買ったんですよね……」

 たしかに、《Candelabra of Tawnos》を買ってしまったら、ハイタイドを使わざるを得ない。