■Round 3: 中村 修平(東京) vs. 山口 貴生(愛知)

By Daisuke Kawasaki

 今年の世界選手権の会場の、殿堂セレモニーにて、殿堂表彰を受けることが決定している「達観した審美眼」こと中村 修平(東京)。もはや、日本を代表するプレイヤーなのだから達観している場合でもないのだろうが、シーズン最後の追い込みを前に、今日、このエターナルフェスティバルの会場に足を運んでいる。

 中村と言えば、世界中のグランプリを回ってプロポイントを稼いでいることで知られるが、そんな中村がスケジュールの都合などではなく、能動的に回避しているグランプリがある。それがレガシーのグランプリだ。中村曰く、「練習に時間がかかりすぎる上に、効率が悪いから」とのことで、レガシーのグランプリに膨大な時間を費やすのであれば他のレギュレーションを習熟した方がいいと考えているのだろう。

 そんな中村が今回、レガシーの大会に参加している。どういった心づもりだろう?

中村 「いやぁ、プロポイントをかけて戦わないでいいなら、レガシーも楽しいですわ」

 勝ってるから楽しいんじゃないの?とも思ったが、なにはともあれ、2連勝を飾った中村 修平。使用しているデッキは先週末のグランプリ広島の併載イベントで八十岡翔太が使用していた白青石鍛治デッキをそのまま持ち込んできたらしい。

 そんな中村に対するのは、名古屋の山口 貴生(愛知)。以前から緑白のマーベリック系のデッキを使用してきた山口だが、今回は黒を入れた形で東京へと遠征してきた。

 先日30歳の誕生日を迎えた殿堂プレイヤー相手に、山口は大金星を上げることができるのか?

殿堂入りプレイヤー、中村修平 

Game 1

 先手の山口は1ターン目に《老練の探険者/Veteran Explorer》をプレイ。これに対して、中村は「なんですか、そのカード」とテキストを確認する。中村ほどのプレイヤーでも把握できていないカードプールなのがレガシーというフォーマットなのだ。

 山口は続く2ターン目にも《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》をプレイし着々と盤面を構築していく。対して中村は山口のターンエンドに《渦まく知識/Brainstorm》をプレイし、自身のターンに《汚染された三角州/Polluted Delta》をセットする。

 《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》とフェッチランドを駆使して手札を充実させていく山口。対する中村も《汚染された三角州/Polluted Delta》で山札をリフレッシュし、土地を並べていく。互いに大きな動きは無く、《老練の探険者/Veteran Explorer》が殴り続ける場。

 ここで山口がプレイした《陰謀団式療法/Cabal Therapy》がゲームを大きく動かし始める。このフラッシュバックによって《老練の探険者/Veteran Explorer》の能力がトリガーされることは誰の目から見ても明らかで、それが自分にとって得か損かを中村は検討する。

 結果、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》は「《Force of Will》」の宣言でプレイされ、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》《呪文嵌め/Spell Snare》《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》に《Karakas》《激浪の研究室/Riptide Laboratory》を含む4枚の土地という手札が公開される。

 対戦風景
 続いて、フラッシュバック。《老練の探険者/Veteran Explorer》の能力で互いに土地を持ってきたところで中村は《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》を墓地の《渦まく知識/Brainstorm》対象でプレイ。手札の重要カードを山札の上に逃がす。山口の宣言は「《呪文嵌め/Spell Snare》」で、中村は手札から2枚の《呪文嵌め/Spell Snare》を捨てることとなる。山口は《老練の探険者/Veteran Explorer》をプレイしてターンを終了する。

 中村は山札のトップに詰んでいた《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をプレイ。<0>能力で先ほど隠した手札を取り戻す。石鍛治ジェイスデッキのマウントポジションだ。だが、そのターンエンドに山口も《エラダムリーの呼び声/Eladamri's Call》をプレイし、《最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll》を手札に持ってくるという抵抗をみせる。



 さらに、中村のキャストした《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》に対しても、石鍛治こそ除去できなかったものの、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》で《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》を宣言するというプレイで対応し、さらにフラッシュバックで2枚の《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》を捨てさせるという動きを見せ、容易に中村がマウントをとることを許さない。

 だが、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》は《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》だった。<0>能力が徐々に手札の枚数・質共に差をつけていく。《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を使って2枚の《剣を鍬に/Swords to Plowshares》を手に入れ、ブロッカーを排除し《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》へのアタックを通すことに成功した《最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll》だったが、中村の手札からは2枚目の《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》。この《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が<+2>能力によって《最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll》の攻撃を一度防げるまで忠誠カウンターが上がると、もう、《最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll》の3度目の攻撃が通ることはなかった。

 《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》が《激浪の研究室/Riptide Laboratory》でブロックしては戻され、時間を稼いでいるウチに、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が中村へと対抗策を用意する。《繰り返す悪夢/Recurring Nightmare》によって《老練の探険者/Veteran Explorer》を使い回せ、なおかつカウンターへもわずかに耐性を持つこととなった山口だったが、この《繰り返す悪夢/Recurring Nightmare》は《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》で山札の下に送り込まれ、そこで偶然にもドローした《太陽のタイタン/Sun Titan》も《対抗呪文/Counterspell》されてしまう。

 最終的に、この《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》が《殴打頭蓋/Batterskull》を装備し山口のライフを削りはじめ、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》の<+2>能力が逆転の目を完全に封じてしまったのだった。

 中村 1-0 山口

Game 2

 先手の山口は、このゲームは1ターン目の行動はなし。対する中村も、《Tundra》をセットするのみでターンを帰す静かな立ち上がり。山口の2ターン目の《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》がこのゲームのファーストアクションとなる。

 だが、中村の2ターン目の行動は、いきなりゲームを終わらせうる《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》。《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》をサーチしてきたこの《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》は除去できなかったものの、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》によって《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》が墓地へと送られることとなる。

名古屋からの遠征者、山口
 《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》《エルズペス・ティレル/Elspeth Tirel》《剣を鍬に/Swords to Plowshares》《Force of Will》といった高カロリーな中村の手札から、フラッシュバックの《陰謀団式療法/Cabal Therapy》で《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》をディスカードさせる山口。中村は土地を置いて《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》でアタック、さらに山口が墓地対策として呼び出した《萎縮した卑劣漢/Withered Wretch》を《剣を鍬に/Swords to Plowshares》で除去する。

 この《剣を鍬に/Swords to Plowshares》を《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》で再利用し、山口が追加した《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》を除去しつつ、クロックを増やす。さらに、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を着地させ、完全にゲームの主導権を握った状態だ。

 この中村に対して山口は《老練の探険者/Veteran Explorer》をプレイすることしかできない。さらに盤面に追加された《エルズペス・ティレル/Elspeth Tirel》が《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》が《老練の探険者/Veteran Explorer》の上を通ってダメージを与える事を可能とさせる。ここで、中村は《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》を残し、山口にアタックしやすい盤面としたことで、相打ちして土地を伸ばす。

 手札に《Force of Will》があることをすでに知っている山口。《地平線の梢/Horizon Canopy》を使って手札を充実させつつ、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》で動き出す糸口を求める。

 だが、この《陰謀団式療法/Cabal Therapy》に対応して中村は《渦まく知識/Brainstorm》をプレイし重要カードを山札のトップへと逃がす。さらに、《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》をプレイし、《渦まく知識/Brainstorm》へとフラッシュバックを与えておくという好プレーで《陰謀団式療法/Cabal Therapy》をほぼ無効化する。山口は《陰謀団式療法/Cabal Therapy》のフラッシュバックを使わずにターンを返す。

 結局、《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》という5点のクロックに対して、《Force of Will》をかいくぐりながら対処する方法を、山口は見つけ出すことができなかった。

 中村 2-0 山口

 試合終了後に、中村のプロプレイヤーカードにサインを求めるプレイヤーがあらわれた。今期、レベル8維持のためには少し厳しくポイントをかせがないと行けない中村だが、日本のプレイヤーたちとの、「プロポイントを賭けていないレガシー」が、今後の英気となればよいと思う。

わかりやすいよう身振り手振りで
対戦相手にスタック順を宣言する中村氏