■準々決勝 : 佐宗 一歩(東京) vs. 橋本 裕(茨城)

By Daisuke Kawasaki

 Zooの重鎮とCTGの権威。

 互いに、レガシーコミュニティの中で、そのアーキタイプにおいて一目置かれる存在のふたりが、エターナルフェスティバルの準々決勝で対戦することとなる。

 元々のデッキの相性でいえば、Zooが有利。基本的に佐宗はCTGを作成するときには、できるだけZoo対策となるカードを確保するのだが、今回の黒CTGに限って言えば、そもそも《見栄え損ない/Disfigure》が万能除去に近い性能を発揮してくれることに期待した構築であり、そう考えると《野生のナカティル/Wild Nacatl》相手のデッキは想定に無いデッキなのだろう。

 通常のZoo相手であれば、佐宗の使う《相殺/Counterbalance》をくぐり抜けることは難しいだろう。そういう意味で、相性差を覆して佐宗が勝てる可能性は無くは無い、どころかかなり高いだろう。数々のレガシータイトルを獲得してきた佐宗のプレイにはそれくらいの安心を期待しても文句はないだろう。

昔からデッキ名は『Happy Tree Friends』、橋本。
 だが、それは通常のZoo相手の場合。相手は百戦錬磨のZoo使い、橋本 裕だ。

 序盤も終盤も、1マナ圏の攻防がゲームを決するこの対戦。手札に1枚、マナの1枚たりとも見逃せない戦いが始まる。

Game 1

 後手の佐宗はマリガンスタートと厳しい立ち上がり。だが、先手の橋本も1ターン目のアクションはあの悪名高き猫、《野生のナカティル/Wild Nacatl》ではなく、《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》という少し心許ないもの。佐宗は《島/Island(ISD)》をセットしてターンを返す。

 だが、しかし。橋本の2ターン目のアクションは、《森の知恵/Sylvan Library》という想定しうる最悪に近いもの。そして、佐宗はこれをカウンターすることができない。せめて得られたアドバンテージを奪い返せるようにと、佐宗は《相殺/Counterbalance》をキャストしてターンを返す。



 土地が多く、あまり良い手札であるとは言えなかった橋本。だが、《森の知恵/Sylvan Library》があるなら話は別だ。まずは4ライフ支払って十分なクロックを手札に確保しつつ、フェッチランドの起動で山札をリフレッシュする。そして、ついに《野生のナカティル/Wild Nacatl》登場。これを《相殺/Counterbalance》しようとする佐宗だが、めくれた山札の上は、無情にも《島/Island(ISD)》。

 ここで橋本は、さらに《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を通してターンを終える。佐宗は土地をセットするのみ。《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を装備した《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》こそ、2ライフを支払いつつの《四肢切断/Dismember》で対処した佐宗。橋本の序盤の攻勢が薄かったこともあってライフは12とそこそこ残っているが、しかし、《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》《森の知恵/Sylvan Library》と対処しにくい脅威が戦場には揃ってしまっている。

 《ドライアドの東屋/Dryad Arbor》をセットしてターンを終えた橋本に対して、佐宗は唯一といっていい勝ちの道筋である《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をプレイ。<-1>能力によって《野生のナカティル/Wild Nacatl》を手札に戻し、短期的な安全を確保すると、ターンを返す。

 そのターンエンドに、橋本は《稲妻/Lightning Bolt》を。佐宗は、《相殺/Counterbalance》の為に山札の上をめくる。

 そこは、またも無情に《島/Island(ISD)》。

橋本 1-0 佐宗

Game 2

 先手は佐宗。今度は後手の橋本がマリガンするスタート。

 とはいえマリガン後の手札は上々で、《野生のナカティル/Wild Nacatl》からゲームをスタートする。だが、この《野生のナカティル/Wild Nacatl》は早速《四肢切断/Dismember》で除去。さらに佐宗は《闇の腹心/Dark Confidant》を盤面に追加する。

 返しで橋本は《野生のナカティル/Wild Nacatl》《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》と追加するのだが、顔には不安の色が浮かんでいる。

 《闇の腹心/Dark Confidant》が土地をもたらしたところで佐宗は小考、結果《破滅的な行為/Pernicious Deed》をプレイする。だが、橋本の手札には《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》が握られている。《不毛の大地/Wasteland》をセットして3マナを確保すると、小考の末に、少し苦しそうに《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》を出し、そして佐宗の反応を伺う。

 佐宗は手札をみて計算を始める。

 ここでの佐宗の手札は《Force of Will》《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》、そして《破滅的な行為/Pernicious Deed》というもの。カウンター自体はできるが、手札が充実しすぎている。

 結局、ここで佐宗は《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》を追放して《Force of Will》をプレイ。橋本は2体のクリーチャーでアタックして佐宗のライフを9にすると、《不毛の大地/Wasteland》で唯一の緑マナ発生源である《Tropical Island》を破壊する。

 手札に土地は無いものの、《闇の腹心/Dark Confidant》で毎ターン2枚ドローしているようなものである佐宗は無事土地を手札に入れる。その過程で《喉首狙い/Go for the Throat》で2点のライフを失っているが、7点あれば何とか戦える。《破滅的な行為/Pernicious Deed》を1で起動してターンを終了する。

 橋本は、クロックが無い状態で《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》をプレイ。これはかなり厳しい手札の証左。佐宗は《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をプレイして<0>能力を使用する。

『CTG』、佐宗。

 この《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》こそ、《赤霊破/Red Elemental Blast》で破壊されたものの、能力を起動できていればほぼ役割は住んでいる。《闇の腹心/Dark Confidant》を《見栄え損ない/Disfigure》の力を借りて《野生のナカティル/Wild Nacatl》と相打ちさせ、ライフの危機を脱したところで、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を盤面に追加する。

 橋本の後続を《喉首狙い/Go for the Throat》でつぶし、一気にライフを削っていく。最後には《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》で確認した《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》を《対抗呪文/Counterspell》したことで、ゲームを完全に掌握したのだった。

橋本 1-1 佐宗

Game 3

 互いに先手番のゲームをとりあう展開。そして、最後のゲームで先手をとったのは橋本だった。

 1ターン目に《貴族の教主/Noble Hierarch》をプレイした橋本。さらに2ターン目にはセットランド前に《野生のナカティル/Wild Nacatl》をプレイし、佐宗に意図の見えにくい選択を強いる。これには対応して《渦まく知識/Brainstorm》をプレイするのみで許可する佐宗だが、続いて《不毛の大地/Wasteland》セットから《貴族の教主/Noble Hierarch》とあわせて《森の知恵/Sylvan Library》がプレイされると、《Force of Will》を追放しながらの《Force of Will》でカウンターする。
 佐宗は《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》をプレイし、《汚染された三角州/Polluted Delta》をセットする。対して。橋本は、賛美された《野生のナカティル/Wild Nacatl》で4点のダメージを与えると《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》をプレイする。

 これには少し困った顔をした佐宗だったが、結局通し、橋本は《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》と《ルーンの母/Mother of Runes》を手札に加える。《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を回してプランを構築する佐宗。

 さらに《渦まく知識/Brainstorm》をプレイすると、フェッチの起動から《闇の腹心/Dark Confidant》のプレイにつなげる。将来的にはアドバンテージを稼げる能力を持ちながら、ここでは《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》と《野生のナカティル/Wild Nacatl》が2体でアタックしてくることを強く牽制してくれる2/1クリーチャーであるこの《闇の腹心/Dark Confidant》だったが、《剣を鍬に/Swords to Plowshares》であっさり追放されてしまう。

 《野生のナカティル/Wild Nacatl》と《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》でダメージを重ねた上で、追加のクロックとして橋本が重ねることにしたのは、X=2の《緑の太陽の頂点/Green Sun's Zenith》から導かれる《タルモゴイフ/Tarmogoyf》。

 手札には《破滅的な行為/Pernicious Deed》を持っているものの、ここまでマナ域を分散されてしまうと中々十分な効果を期待出来るマナ域までたどりつくことができない。《不毛の大地/Wasteland》を置かれている以上、特殊地形を置くこともできない佐宗は《渦まく知識/Brainstorm》を撃って、よく考える。
 最終的に佐宗が選択したプランは、《霧深い雨林/Misty Rainforest》から《森/Forest(ISD)》を持ってきて、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を出すものだった。これに対して、橋本は「困ったなぁ」とつぶやき、そして《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》《野生のナカティル/Wild Nacatl》《タルモゴイフ/Tarmogoyf》の3体でアタックする。

 このアタックは佐宗の想定通りのアタック。「ブロック指定して良いですか?」と聞くとノータイムで《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》をブロックする。手札の《破滅的な行為/Pernicious Deed》を最大限に活用し、盤面をひっくり返すプレイだ。

 その代償として、佐宗のライフは1に。

 そして、橋本の手札には《稲妻/Lightning Bolt》があり、佐宗の手札にはカウンターがなかった。

橋本 2-1 佐宗