■準々決勝:小島祐介(赤バーン) vs. 国吉真木朗(エスパー石鍛冶)

By ぽま山ぽま太郎

 「バーンデッキには勝てない」

 昨年よりも参加者を増やしたエターナルフェスティバル2011、本選初日の9回戦を終えた直後、TOP8に堂々1位通過の国吉はそう漏らした。
デッキリストの公開が行われない中、準々決勝の対戦相手が不確定ながら赤バーンデッキの可能性が高いという。

 その言葉には裏付ける理由がある。

 レガシーというフォーマットを象徴する「デュアルランド」を狙い撃ちにする、《発展の代価/Price of Progress》の存在がそれだ。
 なんと国吉のエスパーカラー《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》デッキには基本地形が使われていないのである!

 例えば4ターン目に《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を出した返しに、1枚のカードがインスタントタイミングで8点ものライフを奪っていってしまう事もあり得るのだ。
 さらに打ち消し呪文がメインボードにはとられていないため、唱えられた《発展の代価》は《不毛の大地/Wasteland》で自分の土地を割って軽減するくらいしか対処方法がない。


 対する小島は、国吉の想像通り赤単バーンである。
 石鍛冶デッキの隆盛を見越し、9月一杯までスタンダードでも多くの6点ダメージを叩き出してきた《焼尽の猛火/Searing Blaze》を4枚メインボードに積んだ仕様で、多くの《石鍛冶の神秘家》を焼き払いここまで勝ち上がってきたという。

Game 1

 ダイスロールに勝った国吉がワンマリガン、《Underground Sea》から《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を置くファーストターン。
 対する小島は《山/Mountain》から《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》。

 国吉は《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》から《Tundra》をサーチ、《闇の腹心/Dark Confidant》を出すも、返すターンに《山》で上陸した《焼尽の猛火》で即退場。《渋面》が攻撃する。

 国吉が3ターン目を《Scrubland》を置くだけで終えると、小島は《ゴブリンの先達/Goblin Guide》を呼び出し2体で攻撃。
 《先達》がナチュラルに《不毛の大地/Wasteland》をもたらすのを見届けた国吉は、ブロッククリーチャー指定前に《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》を送り出し、能力を小島へ向ける。

『赤単バーン』、小島

 《稲妻/Lightning Bolt》2枚・《マグマの噴流/Magma Jet》・《裂け目の稲妻/Rift Bolt》・《ケルドの匪賊/Keldon Marauders》の中から《稲妻》がライブラリーの底へ送られ、《三人衆》が《渋面》を相打つ。
 ここで《三人衆》を《稲妻》で除去しておけば《渋面》が場に残り、ゲームを有利に運べたはずだが、残り1マナだったため《目くらまし/Daze》を警戒したのだろうか。

 この時点で国吉のライフが13、小島は無傷。

 《不毛》を置いた国吉は小島のターンにもう1枚の《三人衆》でさらに《稲妻》を送る。
 能力対応で3/1を《マグマの噴流》するものの、占術で見た2枚が土地と、戦場の土地が2枚とはいえ苦しい小島。
なにせ《6人衆》に8点+《渋面》が与えるはずだったダメージ分稼がれている。

 5枚目の特殊地形を置いた国吉は意を決して《石鍛冶》で《殴打頭蓋/Batterskull》をサーチ、《独楽》起動、《闇の腹心》とタップアウトで動く。
《石鍛冶》はさらなる《稲妻》ですぐに除去されるものの、《発展の代価》は・・・ない。

 《先達》が攻撃し、《ケルドの匪賊》が登場するが、《殴打頭蓋》が返しのターンにほぼ間違いなく出てしまうため、到着の遅さは否めない。

 腹心が土地をめくりつつ、《殴打頭蓋》が登場し、睨みを利かせる。
国吉の6枚の土地の内、タップしている5枚がデュアルランドで、1枚だけ立っている《不毛の大地》は当然《発展の代価》対策だ。


国吉 「君(不毛の大地)が能力起動できるならそれは・・・」
不毛の大地 「4点分の働きってことか!!」

国吉の残りライフは6点なんですけれどもね。

小島は《匪賊》2号を呼び出すものの立ちはだかる細菌が攻撃を許さない。
4/4絆魂警戒持ちの攻撃は《匪賊》2体で打ち取るが、《殴打頭蓋》の本来の用途であるところの装備品として《闇の腹心》が6/5となり、次のターンの攻撃で国吉のライフが13まで回復し、2枚目の《不毛》で《発展の代価》をさらにケアされてしまう。

ドローを確認した小島は場を畳んだ。

小島 0-1 国吉

「初めてカバレッジ取られるうえに、ギャラリーも多くて緊張します」と、小島。

自分(私)が初めてカバレッジを取られた時の話をすると

「7〜8年くらい前にグランプリのサイドイベントの決勝が初めてだったかな」と国吉。
「この年になるまでマジックやってるとは想像もしなかったよ」

Game 2


 お互いにワンマリガン。
 クリーチャーのいない小島は《Chain Lightning》を1枚、2枚と続けるが、2枚目は《呪文貫き/Spell Pierce》でカウンターされる。

 さらに国吉の《Hymn to Tourach》が襲い、《山》と《稲妻》が奪われ、手札が1枚になってしまう。

 その最後に残った1枚を、小島はライブラリーから引いた《山》と共に戦場に叩きつける。
 古くは《呪われた巻物/Cursed Scroll》とともに赤バーンを栄光へ導いた架け橋、その名も《罠の橋/Ensnaring Bridge》!

 装備品のついたクリーチャーに攻撃させない意志の表れである。
 あとは火力を投げ続ければいい・・・はずだった。

 国吉は《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》で安全を確認してからの《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》!
出たターンからの4ターン連続の検閲が全てライブラリートップにキープだったこともあり、小島の後続はシャットアウトされてしまう。

 5回目の検閲でマッチを通して初めて《発展の代価》が見えるものの、当然消術され、ワンチャンスのカードは国吉が握った《Force of Will》に打ち砕かれるであろう。

 《精神を刻む者、ジェイス》の奥義を確認した小島は、カードを引き《山》を置いて、2日間の闘いを終えた。

小島 0-2 国吉

「ちょっと前に関東で青タッチのバーンがあって、すごくいいレシピだったから(バーンデッキを)久しぶりに使ってみたら、みんな基本地形を置いてくるから《発展の代価》が弱くてね」と国吉。
「なので(小島も)減らしてくれてる事を祈ってたんだ」

 実際、小島はメインに1枚、サイドに2枚と計3枚の採用と、この試合には仇となったものの、的確にメタゲームを読んでの構築だった。

『UWB Mystic』、国吉

 終わってから小島のサイドボーディングの討論が始まり、30代プレイヤー同士の会話に、もうすぐ20代が終わる筆者が加わる。
 本選には還暦が見えるプレイヤーが参加しており、改めてレガシープレイヤー層の幅の広さを認識した。