Round4 高梨 光 vs. 本波友行

By Daisuke Kawasaki



直前の『第64回五竜杯』優勝
『2005埼玉県選手権』優勝
高梨光

さて、Round 1でも紹介したように、シャドウムーア発売後に関東圏の草の根イベントを勝ちまくっているのが、青黒の《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》入りフェアリーというアーキタイプだ。

ただ、勝ちまくっているといっても、そんなに期間があるわけでもなく、具体的な数字をあげるのならば、2人で優勝している。

そのうちのひとりが、Round 1でも紹介した梨功司。
そして、もうひとりが、ここで紹介する
高梨 光である。

高梨は、シャドウムーア発売二日後に行われた、五竜杯において、みごと青黒フェアリーで優勝を果たしている。青黒フェアリーに《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》をいれるというアイディアは、「スタンダードの貴族」相澤 恵司によるものだということだが、確かに、この《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》連打という勝ちパターンがあるのは大きいかもしれない。

今回は、そのパターンをより強化しつつ、対戦相手の序盤の攻勢を押しとどめるべく《送還/Unsummon》を採用しているという。


一方の
本波"帝国"友行

《極楽鳥/Birds of Paradise》を使用した緑系のデックを昔から愛用し続けているプレイヤーで、どれくらい昔からかといえば、筆者の知ってる限りでは、10年くらい昔からであるように記憶している。

確か、ウルザブロックの頃に、《ヤヴィマヤの古老/Yavimaya Elder》と《ヤヴィマヤの農夫/Yavimaya Granger》のはいったデックを使っていたので、それぐらいはほぼ間違いないだろう。

また、インヴェイジョン期には、当時メタの中心であったFiresを使用していた。そのチューンナップの際に、「2枚目引いても意味がないし、序盤に引かないならむしろいらない」といって、《ヤヴィマヤの火/Fires of Yavimaya》を1枚しか採用しなかった。拡大解釈をすればのちのNo Firesにつながるこの理論は、帝国理論と呼ばれ、今でも浅原 晃や中島 主税をはじめとして、多くのプレイヤーの心に強く残っている理論である。
閑話休題

本波の使用しているデックは《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》である。こちらもRound 1で、シャドウムーアの環境にもたらした影響として《反射池/Reflecting Pool》によるマナベースの安定を挙げたデックではあるが、本波のデックは、山下のデックと異なり、純正の《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》デックである。

《萎れ葉のしもべ/Wilt-Leaf Liege》によって打撃力が圧倒的に強化されたことにより、急速に注目を集め始めているこのアーキタイプ。もともと多色クリーチャーの多かったこのアーキタイプこそ、「色」をテーマとしたシャドウムーアの影響を強く受けているアーキタイプであると言えるかもしれない。

はたして、高梨は本波の千年帝国を崩壊させられるのだろうか。


Game1
本波は、試合が始まるやいなや、《名も無き転置/Nameless Inversion》を見せながらの《光り葉の宮殿/Gilt-Leaf Palace》セットで早速《思考囲い/Thoughtseize》。

高梨 「あまりの弱さにびっくりしますよー」

高梨の手札は、《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》《名も無き転置/Nameless Inversion》《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》に土地が4枚4枚という序盤の動きに期待できないもの。その後の高梨のドローをケアできる《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》をディスカードさせる。

そして、本波は《タルモゴイフ/Tarmogoyf》《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》と展開し、一気に本波帝国を築き上げる。

対して、高梨は《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》を場に送り出す。そして、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をチャンプブロックし、ダメージをスタック後に、《名も無き転置/Nameless Inversion》をうてば、本波の持つ《名も無き転置/Nameless Inversion》をケアしつつ現在2/3の《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を除去できる。

マナの安定を支える1枚

高梨は予定通りに、《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》でブロック。そして本波に確認する。

高梨 「ダメージスタックにのせていいですか?」

本波は手札の《名も無き転置/Nameless Inversion》を見ながら少考。しかし、結果、このダメージのスタックを許可する。

高梨 「じゃあ、解決しますねー」

と、《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》を墓地に送り、手札の《名も無き転置/Nameless Inversion》をキャストしようとして…

高梨 「あ…」

そう、ダメージのスタックを解決した後に《名も無き転置/Nameless Inversion》をうってしまうと…《タルモゴイフ/Tarmogoyf》は4/5となってしまうのだった。

本波 1-0 高梨

このカードあればこそ
Game2
今度も、後手の本波は、1ターン目に《思考囲い/Thoughtseize》。

ここで手札は、土地4枚に《苦花/Bitterblossom》《謎めいた命令/Cryptic Command》というもの。これは当然本波、《苦花/Bitterblossom》をディスカードさせる。

そして、続くターンには《レンの地の克服者/Wren's Run Vanquisher》。一見順調な展開に見える本波ではあったが、しかし、次のターンのドロー後に思わず漏らす。

本波 「ダメだ…」

そう、本波は土地が止まってしまったのだ。とはいえ、ここで《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をキャストできるあたりはさすがといった所か。

高梨も、なんとか《苦花/Bitterblossom》を引き戻し、キャストする。そして、本波の2体目の《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を《謎めいた命令/Cryptic Command》でカウンターしつつ、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をバウンス。

この《タルモゴイフ/Tarmogoyf》が再びキャストされるのを《瞬間凍結/Flashfreeze》でカウンター。《レンの地の克服者/Wren's Run Vanquisher》もトークンと《変わり谷/Mutavault》でブロックし、相打つ。

こうして、一度場が平らになってしまいさえすれば、《苦花/Bitterblossom》が一気にゲームを決めてしまうあたりが、フェアリーの強さ。

本波が2体目の《薄れ馬/Wispmare》で《苦花/Bitterblossom》を破壊したときには、すでに本波のライフは場のトークンだけで十分削れる数字となった。

高梨は、ただ、ブロッカーとなった《薄れ馬/Wispmare》を《名も無き転置/Nameless Inversion》で除去するだけでよかった。

本波 1-1 高梨
Game3
二度あることは三度ある。

本波は、1ターン目に《思考囲い/Thoughtseize》。

あまりに盤石な本波帝国に、高梨から思わず愚痴がこぼれる。

今度の梨の手札は、マリガン後の為、《叫び大口/Shriekmaw》×2《祖先の幻視/Ancestral Vision》に土地3枚というもの。ここから、本波は《祖先の幻視/Ancestral Vision》をディスカードさせる。

正直、梨にとってみれば、キープの基準がぶれてたまったものでも無いだろう。

そして、本波は、2ターン目に《ガドック・ティーグ/Gaddock Teeg》、3ターン目に《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》と帝国体勢だ。

梨は、続いてでてきた《名も無き転置/Nameless Inversion》を見せながらの《レンの地の克服者/Wren's Run Vanquisher》は《叫び大口/Shriekmaw》で除去し、《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》を《送還/Unsummon》。

さらに、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》にたいして《叫び大口/Shriekmaw》をキャストし、《ガドック・ティーグ/Gaddock Teeg》へのブロッカーを用意した状態でなんとかライフをまもろうと画策する。

しかし、梨は、その策を崩す一手である《名も無き転置/Nameless Inversion》の存在をすでに知っているのであった。

本波 2-1 高梨

Result : 本波"帝国" Win!
『世界選手権2007』を制した1枚