Round 1:髙梨 功司 vs 山下 洸平
By Daisuke Kawasaki
前日のPWCを優勝、高梨功司 |
シャドウムーア発売直後という異例のタイミングで行われることとなった、日本選手権東京1次予選。
まだ、新しいカードが出たばかりで、メタゲームが固まっていないこの時期に予選に参加することを嫌うプレイヤーもいれば、好機ととらえるプレイヤーもいる。
特に、ローウィン・モーニングタイド期であるGP静岡前後から三強とされてきた青白ヒバリ・青黒フェアリー・黒緑エルフは現時点でもメタの最前線におり、これらのデックを使い込んできたプレイヤーに取ってみれば、シャドウムーアで生みだされた《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》《突撃の地鳴り/Seismic Assault》デック(斎藤 友晴の言葉を借りれば、"Swanpy")や、《柏槙教団のレインジャー/Juniper Order Ranger》と頑強を組み合わせた無限デックなどがトーナメントレベルにまで練り上げられる前に、調整を重ねた自身のデックで参加した方がいいと考えるだろう。
もちろん、逆に、新しいデックを使うプレイヤーにとってみても、対策の方法が浸透していないというメリットがあるので、どちらが有利とは一概に言えない。
さて、ここで紹介するプレイヤーのうち、前者、つまりローウィンブロック時点で実績のあるデックを調整してきたプレイヤー、にあたるのが、髙梨 功司だ。
髙梨が使用するデックは、GP静岡を優勝したことでも知られる、旧環境大本命のひとつである青黒フェアリーである。この青黒フェアリーに《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》を追加したタイプが、シャドウムーア発売後からこの東京1次予選までの間に行われた草の根大会を優勝し続けているのだ。
なにより、髙梨自身が昨日行われたPWCで、この青黒マネキンフェアリーを使用し、優勝しているのだ。そういう意味では、髙梨は今日の予選突破に一番近い位置にいるともいえるし、髙梨自身もその手応えがあるからこそ、今日、この場に来たのだろう。
だが、これだけ勝ち続けていると言うことは、逆に言えば、当然のように全員に対策されているという事である。
はたして、この逆境とも言える大会を髙梨は突破できるのだろうか？個人的にもFinals2006から注目してきているプレイヤーだけに、がんばってもらいたいと思う。
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これに対するのが、山下 洸平。
彼のデックは、「暫定的に」分類するなら、《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》入りのヒバリブリンクと言えるだろう。ただ、それは言えるというだけで、その実体は一般的にイメージされるヒバリブリンクとはほど遠い。その実体については、マッチレポートの中で実感していただければ、と思う。
さて、そんな山下のデックなのだが、メインボードに《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》や《雲打ち/Cloudthresher》といった、フェアリーが根本的に苦手とするカードが大量にはいっており、そういう意味で、現在のフェアリー中心のメタゲームに合致したデックと言えるだろう。
果たして、髙梨がその力強さをもって、この逆境の海を泳ぎ切ることができるのか。
それとも、山下が、さわやかさに隠したシークレットテックで世界を騙しきってしまうのだろうか。
はやくも、注目の一戦である。
Game1
ダイスロールで先攻は山下。
マリガン後に《鮮烈な草地/Vivid Meadow》セットでゲームをスタートする。
そして、《反射池/Reflecting Pool》を2枚並べて3ターン目に《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》をキャスト。シャドウムーアは土地が強いエキスパンションだともっぱらの評判ではあるが、この展開はシャドウムーアあってのものだろう。 |
多色マネキンデッキ、山下 |
《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》がシャドウムーアによって《萎れ葉のしもべ/Wilt-Leaf
Liege》で強くなったという意見もあるが、やはり一番大きいのは、このマナベースの安定性なのではないかと思う。
髙梨はこの《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》を危なげなく《ルーンのほつれ/Rune Snag》でカウンターする。そして、3ターン目には、もはやお家芸といってもいい、ドロー後の《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》。
ここで公開された手札は、《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》2枚《一瞬の瞬き/Momentary Blink》と《目覚ましヒバリ/Reveillark》に土地という手札。髙梨は熟考の末に《目覚ましヒバリ/Reveillark》を選択。
すると、山下のメインターンのアクションが《熟考漂い/Mulldrifter》想起。熟考の末なのに…とつまらないダジャレが頭に浮かんだわけは無いだろうが、髙梨は失笑。
これによって、手札を充実させ、土地を引いたことでマナベースが固まった山下。一方の髙梨は、《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion
Clique》でクロックを刻みつつ、《祖先の幻視/Ancestral Vision》を待機する。山下の手札の2枚の《その場しのぎの人形/Makeshift
Mannequin》が見えてしまっているだけにやりにくい。
髙梨は、《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》と、《フェアリーの集会場/Faerie Conclave》で2マナ残しつつのアタック。これに対して山下は《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》で《熟考漂い/Mulldrifter》を釣り上げる。一見カウンターもありそうだが、しかし、髙梨はこれをスルーして、山下にカードを引かせた上で、《名も無き転置/Nameless Inversion》。
見る限り、髙梨にとって相当厳しい展開だ。
そして、そんな髙梨をさらに苦しめるのが、山下の手札から飛び出した2枚目の《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》。すでにタップアウトしている髙梨はこれに対処できない。
パワーが高く回避能力が高いかわりに低タフネスのクリーチャーばかりの髙梨のデックにとって、この展開は攻めの要所を押さえられてしまったといっても過言では無い展開である。
そして、《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》《目覚ましヒバリ/Reveillark》が場に展開される。《一瞬の瞬き/Momentary Blink》でマナベースを攻撃されてしまうと、《祖先の幻視/Ancestral Vision》で手札が充実してるにもかかわらず、髙梨には盤面を挽回する術は無くなってしまう。
髙梨は最後のあがきとして《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をキャストするのだが、想起でキャストされた《雲打ち/Cloudthresher》を《一瞬の瞬き/Momentary Blink》されてしまう。これによって髙梨の場のパーマネントはほぼ無くなってしまったのだが、それよりなにより、髙梨自身のライフがほぼ無くなってしまったのだった。
山下 1-0 髙梨 |
土地が強い時代だからこそ |
どちらのデッキも、このカードを軸に |
さて、今回髙梨が使用している《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》入りのフェアリーだが、前述のように、最近のフェアリーのチューンナップとしては、いわゆる、はやりの方法である。
これは、フェアリーのチューンナップというよりは、環境全体のチューンナップの傾向であり、例えば青白のヒバリデックも黒をタッチして《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》をいれるチューンナップのタイプがだんだんとあらわれてきている。強いて言えば、山下のデックもその亜種であると言えるだろう。
《目覚ましヒバリ/Reveillark》や《苦花/Bitterblossom》といったそれぞれのアーキタイプの根っこといえるカードがモーニングタイドのカードであるのであたりまえの話ではあるが、青白ヒバリや青黒フェアリーといったデックは、モーニングタイド発売以降のデックタイプである。
それ以前に環境にあった青系のデックと言えば、大塚高太郎が世界選手権でトップ4となった青黒マネキンが思い出されるだろう。
そういう意味では、このデックはローウィンブロックが積み重ねてきた歴史の集大成であるともいえる。
なにしろ、髙梨のデックには、シャドウムーアのカードはメインサイド併せてたったの2枚しか採用されていないのだから。
Game2
またも、マリガンの山下。シャドウムーアの土地、というか《反射池/Reflecting
Pool》の恩恵があるといえ、さすがにタイトすぎるマナバランス故か、マリガン率があがるのは仕方のない所か。
Game 2は髙梨の《人里離れた谷間/Secluded Glen》で《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》を見せながらの《思考囲い/Thoughtseize》が幕を開ける。
ここで公表された山下の手札は、《熟考漂い/Mulldrifter》《叫び大口/Shriekmaw》《根の壁/Wall of Roots》《雲打ち/Cloudthresher》に土地2枚。協力カードの名前が並ぶが、明らかにマナスクリューで勝利することができそうなだけに、髙梨は《根の壁/Wall of Roots》をディスカードさせる。 |
しかし、2ターン後に山下がキャストしたのは《根の壁/Wall of Roots》。そこから《熟考漂い/Mulldrifter》につなぎ、マナベースの不安を解消する。
髙梨は4ターン目に、2マナを残しながらの《苦花/Bitterblossom》。すでに《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》を見ている山下ではあるが、もとより山下のデックは想起によってマナコストがごまかされているものの実際のマナコストは大きいクリーチャーが多いデックである。
山下はこれに臆さずに、《雲打ち/Cloudthresher》をキャストし、フェアリートークンにチャンプブロックを強要し続ける。
髙梨は、《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》と《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》を駆使して、なんとか打開の策を求めるのだが、山下は2枚目の《雲打ち/Cloudthresher》をキャスト。
これによって万事窮するかとおもったが、ここで髙梨は、デック唯一といっていいシャドウムーアからの秘密兵器を炸裂させる。
そのカードは、《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》。
シャドウムーア期待の星か？ |
ローウィンブロックに固められた髙梨のデックの窮地に、シャドウムーアからのカードが光を当てる。
これによって山下の墓地の《叫び大口/Shriekmaw》が釣り上げられ、山下の《雲打ち/Cloudthresher》を除去する。圧倒的に山下優位と思われていた場が、一枚のカードで、ほぼ互角にまで持ち込まれる。
そして、泥仕合となれば、圧倒的に強いのは《苦花/Bitterblossom》なのであった。
山下 1-1 髙梨
ここで髙梨が勝負を決めたところで時間が終了。二人は、引き分けという形でスタートをきることとなった。
髙梨「っていうか、手札の内容をまったく推測できないのがつらかった。」
なるほど、確かに、山下のデックは、「何がでてくるかわからない」という奇襲性が強い。一見すれば《目覚ましヒバリ/Reveillark》《一瞬の瞬き/Momentary Blink》でもあるし、実際髙梨の対ヒバリ兵器である《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》も突き刺さった。
だが、やはり、それでも、コンセプト自体が浸透していないというメリットは果てしなくあるのではないかと、思う。
Result : Draw |
