タガメの水中での基本的な生活スタイルは、中肢と後肢で水面近くの水草や杭につかまり尾から出た呼吸管を空中に伸ばして、捕獲肢となった前足を広げ、餌となる小魚やカエル等を待ち続けます。餌となるのはカエル、オタマジャクシ、小魚が中心ですが、水面に落ちた昆虫なども捕食することもあります。
一般に、食物連鎖の頂点に近い位置にある動物は、絶対数が少なく、なわばりを持つため、繁殖シーズン以外は分散して生活しています。タガメは食物連鎖の中で鳥類と同様な高位置におり、繁殖シーズン以外は、単独で生活しております。従って、繁殖シーズンになると遠く離れた異性に自分の存在を知らせるためラブコールを送る必要があります。タガメのオスは2種類の求愛をします。6月頃の繁殖シーズンになると、第1の求愛としてオスはバナナ臭を出します。これで、遠く離れたメスに自分の存在を知らせるわけです。オスが放ったバナナ臭を嗅ぎ付けたメスは、オスに近づきます。ここでオスはすぐさまメスと交尾するわけではありません。うっかりメスに近づけば、体の大きなメスに捕食されてしまいます。そこで、次にオスは、片側の脚で物につかまり、脚を3Hz程度の周期で伸縮させ、腹部を水面に打ちつけ、水面に振動波を起こします。これがメスへの第2の求愛行動となり、メスがやって来て、やがて交尾に至ります。
メスは水面に突き出た杭やイネ科の植物を束ねた茎などに登り、約80〜120個の卵を産みつけます。卵は、孵化するまでオスが世話(保護と給水)をします。約7日から14日位で卵は孵化します。孵化直後の幼虫(1齢幼虫)は、特有の褐色とクリーム色のまだら模様を持っています。2齢〜4齢までは緑色を呈し、その体色は水草の中では保護色となっているようです。脱皮を繰り返し、終齢幼虫(5齢幼虫)になると羽の原基が出てくる。餌を捕らなくなり、全身が赤褐色に変わると、羽化が近いです。羽化直後の成虫はクリーム色を呈し、2日ほどで茶褐色になります。羽化してから、3日すると、飛ぶことができるようになります。餌もこの頃から捕り始めます。夏から秋にかけて、タガメは十分に餌を捕り、越冬に備えます。越冬は、11月から翌年の3月頃までします。湿った泥の中や水中でじっと春を待ちます。翌年の4月頃に冬眠から目覚め、活動を開始します。