タガメの飼育・繁殖方法


タガメの飼育・繁殖方法はほぼ確立されており、本やホームページ上でも公開されています。ここでは、それらとは若干違うかもしれませんが、我が家で行っているタガメの飼育・繁殖方法を紹介します。タガメは水生昆虫の中では、飼育・繁殖が比較的容易です。是非、チャレンジしてみてください。



飼育・繁殖に必要な器具

容器
基本的には、丈夫で水によって腐食したりしなければなんでも良い。熱帯魚用の水槽でもOK。ただし、ふたができることが必要です。大きさは、浅く(水深として10cm程度)広いものが望ましい。ホームセンター等で入手できる衣装ケースやコンテナーなどは飼育容器として重宝される。
底砂
底砂はなくてもかまわないが、砂利や土及び川砂を容器の底に厚さ1cm以上敷いておくと、そこに浄化バクテリアが繁殖し、水質が安定してくるので、より理想的な飼育を試みるなら、底砂は必要である。
足場
タガメの休息場所や脱皮の足場として必須である。足場が無ければ、溺れて死んでしまいます。熱帯魚用の流木やアクセサリー用のオブジェクトは、お勧めのアイテムです。もっとも安価で手軽に使用できるのが、素焼きの植木鉢です。中に砂利を入れ、セリなどを植えておくのも良いでしょう。その際気をつけねばならないことは、これらのものは必ず水面から少々突き出るように設置することです。足場に水草を用いても良いが、水草を育成するための知識が無いと枯らしてしまい、結局、水質悪化を招くことになるので注意が必要です。
ふた
幼虫は、羽が無く飛ぶことが出来ないので容器にふたは要らないが、成虫になって3日すると飛ぶことができるようになるため、ふたが必要になってくる。なお、幼虫は、排泄物を容器外へ飛ばすため、壁など汚されないように幼虫期の時からふたをした方が良いです。ちなみにこの排泄物が壁などに付着すると、茶色いしみが残り、汚れが落ちにくいです。また、ふたは、金網やたくさんの穴のあいたものでないと、蒸して、水温上昇の原因となるので、必ず穴をあける。
ろ過装置
毎日換水できるのなら、ろ過装置は特に必要ないが、あったことに越したことはない。その際、呼吸や脱皮ができなくなる恐れがあるので、水面が荒々しく波立つようなろ過装置は避けたい。
産卵用の杭
タガメは産卵する際、水面から10cm位突き出た杭など(直径3cm以上)に産卵します。従って、水面より15〜20cm程突き出る長さの棒や杭を入手し、生け花用の剣山等で垂直に設置する。我が家では、栃木県産の枯れた山栗の木の枝を剥ぎ、産卵用の杭として使用しております。基本的に、まっすぐで、表面がざらざらしている棒や杭であればなんでもOKです。産卵期に、成熟したペアーを一緒にし、杭を入れてやれば産卵します。


日常の管理

飼育密度
タガメは肉食性のため、単独で飼育するのが基本です。特に、メスはオスよりも体が大きいため、オスが捕食されるケースが多い。従って、我が家では雌雄別々に飼育しています(45cm×30cmの容器に10匹程度)。当然、同性同士でも共食いは起こるが、異性同士に比べて頻度が極端に低いです。餌が十分に足りていれば、ある程度は共食いが防げます。ただし、幼虫になると話は違います。1〜2齢幼虫までは、複数飼育可能ですが(もちろん共食いは起こりますが)、3齢幼虫を超えると共食いが激しくなります。できれば単独あるいは2〜3匹程度で飼育した方が無難です。複数飼育する場合、足場となるアイテムや水草等を多めに設置すれば、共食いの確率は減少します。
タガメは肉食性昆虫のため、基本的には生きた小魚やカエルなどを与える。マグロとイカの刺し身も代用食として使える。ただし、いわしは脂が多く、水を汚しタガメに致命的な害を及ぼすので絶対に与えないこと。刺し身を餌にする際は、ピンセットなどで餌をつまみ、タガメの目前に持っていくと猛然と襲いかかって来る。餌の残りは速やかに処分すると水を悪化しないで済む。
換水
タガメが激減した大きな要因は、環境破壊や農薬散布による水質汚染と考えられるため、飼育においても水質維持に注意をはらう必要がある。最低でも、1日1度は換水したい。特に幼虫期は、水質悪化に弱いため、頻繁に換える必要がある。換水の際、特に注意することは、水温の違った水をいきなり入れることは厳禁です。飼育容器の隣りに汲み置き水を用意し、それを換水時に使用するようにしたい。なお、タガメに対して水道水に含まれる塩素の影響はありませんが、ろ過バクテリアの方に影響があるため、水温が同じくらいになった汲み置き水を使うことが望ましい。
脱皮
タガメは孵化後、5回脱皮を繰り返し、30〜40日ほどで成虫になります。脱皮はタガメにとってもっとも危険な瞬間です。たとえ爪先が脱皮不全を起こしたとしても、その個体は必ず死んでしまいます。脱皮をしている個体には絶対に触れないようにすること。また、脱皮中や脱皮直後の個体は無防備なため、共食いされる危険性が高い。
水温
水温は、外気温と同じで良いが、特に夏、水温が30度を超えると死亡する個体が増えてくるため、飼育容器は日陰などの涼しいところへ置くなどして、水温上昇防止に心掛ける。寒さには比較的強く、冬期に表面だけ凍った程度では、生体には影響が無いようです。
冬眠
自然界では、10月頃から翌年の3月頃まで冬眠します。飼育下では、水面下でじっと春を待ちます。もちろん冬眠中は餌は食べません。冬眠中に水が蒸発して乾燥しないように、時々汲み置き水を足してください。餌を食べていないので、水はそれほど汚れません。従って、特に換水の必要はありません。
寿命
我が家で室外飼育している個体では、2〜3年です。


繁殖方法

雌雄の判別
タガメをひっくり返し、腹部の亜生殖板の形態を見る。下の画像のように、亜生殖板の先端が尖っているのがオスで、欠けているのがメス。
ペアリングと産卵
雌雄別々に飼育し、繁殖期になり腹部が卵でパンパンに膨らんだメスと夜に脚を伸縮させ腹部を水面に打ちつけ、水面波を起こしているオスとを一緒の容器に移します。すると、ほとんどの個体でその日のうちに産卵を開始します。産卵用の杭にメスが白い泡と共に産卵します。1回の産卵数は、80〜120個くらいです。
メスの隔離
産卵後の卵は孵化するまでの間、オスが世話(保護と給水)をします。オスが落ち着いて世話をできるようにメスは他の容器に移し、十分に餌を与えてください。卵が孵化すれば、次の産卵ができるようになります。卵の世話をしている期間、オスの餌として容器に1〜2匹の小魚を入れておいてください。もし、オスが死んでしまった場合、卵が乾燥しないように人工的に卵に給水してやれば、予定通り孵化します。
孵化
真夏で、約7日後に卵は孵化します。孵化直後の幼虫は約1cmの大きさです。餌はオタマジャクシや小魚等を与えます。成虫用の小魚も集団で捕らえます。
次の産卵
卵が孵化したら、次の産卵が可能です。念のため、メスの腹部がパンパンに膨れていることを確認してください。膨れてないようでしたら、もう少し餌を与えましょう。ワンシーズンで、2〜4回位産卵することができます。
翌年の産卵
1度産卵したメス及び産卵に参加したオスは、翌年に繁殖させることは難しい。中には、繁殖できる個体もいるのですが、我が家では成功していません。従って、タガメは生涯に繁殖できるのは通常、ワンシーズンのみです。