ゲンゴロウモドキ属の卵期間推定電卓(Ver.1)
(January, 1, 2005)


1. 解説
2. 対応システム
3. ダウンロード
4. バージョンアップ、バグ情報等


1. 解 説

飼育している生き物が産卵すると、いつ孵化するのだろうかと、毎日ワクワクしながら待ち過ごした経験のある方も多いと思います。あまりにも卵期間が長く、もしかして死んでしまったのではないかと嘆いた方もいることでしょう。温度によって卵期間(卵が孵化するまでの期間)が変化することは多くの生物で良く知られている現象です。一般に、外部から栄養を補給することのない卵は温度が卵の成長をつかさどる主要な環境要因であると考えることが出来ます。よって、温度と成長速度との関係がわかれば卵期間は正確に推測できるはずです。

ゲンゴロウモドキ属3種において(D. marginalis, D. alaskanus, D. sharpi)、卵の発育限界温度と卵の積算温度には差がないことから(Inoda, 2003)、コゲンゴロウモドキ(D. sharpi validus)も含めた4種ゲンゴロウモドキ属の管理水温から卵期間を推定するWindows専用のプログラムを作ってみました。アズマゲンゴロウモドキ、コゲンゴロウモドキ、アラスカゲンゴロウモドキ、キベリゲンゴロウモドキには対応しております。それ以外のゲンゴロウモドキ属に関してはわかりませんが、恐らく、ゲンゴロウモドキ属は全て対応すると予想しています。

図 1

D. marginalisD. alaskanusD. sharpi validus及びD. sharpiの孵化データは、Blunck(1916)、Aiken(1986)、富沢(2001)及びInoda(2003)のデータをそれぞれ採用しました。計算のアルゴリズムはCampbellらの手法(1974)に従い、上記、4種のゲンゴロウモドキ属の平均値から算出しました。ただし、卵の個体差や種差もあるため、計算値と実測値とは必ずしも一致するものではありません。10℃〜25℃の範囲内における計算精度は比較的良好で、数日程度の誤差範囲内に収まると思います。

今回作成したプログラムに適当な水温を入力し、出力したデータをもとに作成したのが図1です。つまり、上記ゲンゴロウモドキ属4種(D. marginalis, D. alaskanus, D. sharp, D. sharpi validus)の平均孵化速度(卵期間の逆数を縦軸とした)と水温の関係をCampbellら(1974)の方法に従って作図したものです(厳密には、Campbellらの論文のB rangeのみを表示)。一見すると、水温と孵化速度は比例関係にあるように見えますが、通常、卵は低温や高温下では温度の悪影響を受けるため、実際のデータは図1のようにはなりません。
実際は図2のようになりますが、図中のAとC区間のデータは便宜的に作成した値です。説明のためのサンプルデータですが、真実に近いデータとなっております。図2のように温度と孵化速度の関係は、シグモイド(S字)曲線を持つ特徴があります。A区間は温度が低すぎるため、卵の発育が停滞します。B区間は卵の発育が温度に正比例し、直線性を示す区域です。このB区間の直線の延長線とx軸との交点が理論上の発育限界温度(発育ゼロ点とも言う)となり、これ以下の水温では卵が発育しないことを意味しています。一方、C区間は高温障害により生育が停滞していることを示しております。従って、卵の成育と温度との関係を正確に知るためには、B区間の直線性を持つ範囲を使います。B区間だけをピックアップし、最小二乗法によって作成した回帰直線が図1であり、本プログラムの算出に採用した1次関数です。

図 2

本プログラムは、B区間で示した直線式に従って計算しているため、どんな数値を代入しても卵期間を数値として算出しますが、卵の生存率に関しては考慮しておりません。種によっては温度で卵の生存率が変わりますし、初令幼虫にまでその影響が及ぶことが証明されております。例えばD. sharpiに関しては、23℃でも高い孵化率を示しますが、孵化した幼虫の生存率は極端に悪くなります(Inoda, 2003)。また、限界温度(図1では5.4℃)以下を代入すると推定卵期間はマイナスの値となります。つまり、これ以下の水温では卵が成育しないことを意味しております。よって、発育限界温度以上(6℃)から25℃までの範囲内の推定がより現実的と考えることが出来ます。

2. 対応システム

対応システムは、Windowsマシンのみです。OSはWindowsXP、2000、NT4.0、Me、95で動作確認済みです。PCにインストールする必要も無く、直接ファイルから実行できます。

解凍後、EggPeriodという実行ファイルを起動すると下記の画面が現れます。水温を半角で入力し、計算ボタンを押すと推定卵期間が瞬時に計算されます。プログラムを終了する時には終了ボタンを押してください。

なお、本プログラムを使用して生じた如何なる不利益に対しても、作者は責任を持ちません。各個人の責任でご自由にお使いください。また、フリーソフトですが、その権利を放棄したわけではありません。本プログラムの内容や本プログラムを使って得た結果(副産物)を無断で他に引用、転記、公表することはご遠慮ください。また、営利目的での使用は固くお断りします。教育、研究、あるいは飼育の参考程度にお使い下さい。

バグもあると思われますし、使ってみて推定値が正確でない場合や不都合なこと、要望等、是非、ご指摘頂けますと幸いです。今後の研究や改良の参考にしたいと思っています。

3. ダウンロード

2005年1月1日: 「ゲンゴロウモドキ属の卵期間推定電卓(Ver.1)」(44.0KB) ⇒

4. バージョンアップ、バグ情報等

・マニュアルの図2の縦軸修正(March,1,2005)