ページ先頭です。目次をとばして内容部分に進みます。
やぶれっ!住基ネット情報ファイル

婚外子差別の解消を!イエ制度よりも人権を!
世田谷区と東京高裁判決に抗議します

東京高裁は2007年11月5日、子どもの住民票を作成しない世田谷区を訴えた事実婚カップルに対し、逆転敗訴をつきつけました。

出生届の「嫡出でない子」という差別記載を拒否し「続柄」欄を空欄で提出したことを、「専ら父母の信条によるものである」として、そのことを理由に子どもが不利益をこうむって当然とするその論理は、思想信条の自由を保障しイエ制度を含む門地差別を認めない、とする憲法の理念を真っ向から否定するものです。国連からも勧告を受け続けている婚外子差別を、なくす努力をするどころか助長し、子どもの生存権、市民権、幸福に生きる権利を剥奪して恥じない世田谷区と東京高裁に強く抗議します。

「嫡出」とは、家長を中心としたイエの存続のために子どもを選別する、家父長制そのものの概念です。「嫡出」か「嫡出でない」かの違いは、親である男女が婚姻届を出しているかどうかの違いであり、子どもが市民権を得ることと関係づけられるべきではありません。にもかかわらず「嫡出でない子」が法的にも社会的にも差別されるのは、この国が子どもの人権・尊厳よりもイエ制度をいつまでも優先し続けているからです。天皇制という「法の下の家父長制」を有するがために婚外子差別を求めてやまないこの国のイエ制度は、「できちゃった婚」に象徴されるように、子を産むなら婚姻届を出せ、「嫡出」の子どものみを優遇する、と脅迫的に要請しています。今回の判決は、そこからはずれた者からは、社会保障に繋がる一切を剥奪してよいという判断です。こうしたシステムの下、「嫡出であるか、ないか」を書き届けることは、それを拒否するのと等しく「思想信条」にかかわるというべき行為であることを、東京高裁は認識すべきです。

戸籍制度やそれを前提とする民法が差別と不合理を含むがゆえに引き起こしている問題は、事実婚を選ぶ人たちだけにふりかかるわけではありません。家族のあり方は多様化しています。現に諸外国では幸福に生きる権利や個々のライフスタイルを重視する立場から、パートナーシップ法などさまざまな市民権の保障が模索されてきています。そうした努力を怠り、行政としての判断すら放棄し、結果、婚外子差別の強化に手を貸していることを世田谷区は猛省すべきです。抗い難い婚外子差別体制に対し信念を持って声をあげた原告に対し、婚姻か無権利状態の二者択一を迫る東京高裁のありようは輪をかけて許し難いものです。

私たちは生まれながらにして平等だし、安心して楽しく生きる権利を持っています。不当な差別に甘んじる必要もありません。憲法はそれを保障しています。家父長制度−戸籍−出生届−婚外子差別体制を一刻も早く解消し、多様な生き方が保障される社会を目指すことこそが、司法と行政の使命です。そのためにも原告の訴えを真摯に受け入れるよう私たちは要求します。

2007年11月23日  女性と天皇制研究会



Copyright(C) 2007-2008 やぶれっ!住基ネット市民行動
初版:2007年12月20日、最終更新日:2008年02月04日
http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/setagaya01/seimei071123.html