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「城」概論
1 城とは?
 まず最初に「城」とは何か?その意味や定義について考察してみたいと思います。単純に「城」といっても、その本質を一言ではなかなか述べられないものです。一般的な辞書・書物での説明を参考にしてみましょう。
(1)広辞苑第五版  敵を防ぐために築いた軍事的構造物。日本では、古くは柵(さく)や石垣または濠(ほり)・土塁をめぐらしたが、中世に至って、天険を利用して防御を施す「山城」が発達し、もっぱら戦闘用であった。戦国時代以降は、領内統治・城内居住・権勢表示などをも兼ねた築城に進み、いわゆる城郭が完成。多く平野にのぞむ小丘の上または平地に築かれ、2重・3重に濠をめぐらし、本丸・二の丸・三の丸などに郭(くるわ)を区分、石塁上に多数の櫓(やぐら)類を建てて偵察・射撃に利し、本丸には天守閣を設けて郭の中軸とし、表には大手門、裏には搦手(からめて)の門を構え、住居用の殿舎をも備えた。き(城)。じょう。
(岩波書店)
(2)漢字源 @(名)しろ。都市を巡る城壁。中国では、日本と違い、町全体を城壁でとり巻き、その中に住民をまとめて住まわせる。四方に城門がある。城外の街道沿いに発達した市街地には、さらに郭(外城)をめぐらして、外敵から守る。
A(名)城壁で囲まれた町全体。しろ。敵を防ぐために土や石で堅固にきずいた大規模な構造物
(学研)
(3)日本の城基礎知識  城とは人によって住居・軍事・政治目的をもって選ばれた一区画の土地と、そこの設けられた防御的構造物をいう。
井上宗和(雄山閣)
 国語辞書・漢和辞典・専門書からひとつずつ引用してみましたが、私は(3)の「日本の城基礎知識」であげられている定義が最も妥当ではないかと思います。つまり城を最広義にとらえた考え方で、極めて偏見のない捉え方だと思います。
2 城の発生と発達
 上記の「城とは?」での考察に基づくとすれば、城の誕生は縄文期までさかのぼらなければなりません。そこで城の発達について縄文時代から見ていきます。なお発達期の分類については「日本の城基礎知識(雄山閣)」に従って分類してあります。
(1)古代  昨今は古代史の新たな発見等がめざましく、学術的には、私のような素人には非常に難しい時代と思われます。縄文時代は既に集落の形成があったでしょうが、稲作が本格的に始まった縄文後期から弥生初期にかけて、防備機能の備えた集落が出来上がってきたようです。
 「日本の城基礎知識(雄山閣)」によれば、この当時から、
@「王城」
A「都城」
B「居館」
といった城があったであろうと想像される、と指摘しています。
 「王城」などは堀で囲み、土塁を築いて侵入を防いだものでありました。ビジュアル的には佐賀県の吉野ヶ里遺跡を想像すると良いでしょう。現在は公園として素晴らしく整備されていますが、堀がめぐり土塁の築かれた姿は、まさに王城です。
(2)大和朝  大和朝廷が成立した一番の意味は、日本に初めて統一国家ができたということです。4世紀ころからの話になりますが、統一国家の成立は城という側面からも大きな変化をもたらしたようです。「日本の城基礎知識(雄山閣)」によれば、この時代の城を次のように分類しています。
@「都城」
A「王城」
B「国府城」
C「西域城塞」
D「北辺城柵」
E「関塞・軍団・兵庫」
F「居館」
G「集落防備」
H「防塞」
(3)平安朝  平安朝の特徴は荘園の発生と、それに伴う支配領域の権益の確保でありました。そのため土地の自衛の必要性にせまられ、「さむらい」つまり武士という階層が発現することになります。この時代に居城としての前身、つまり武装した館があらわれることになったのです。同じくこの時代の分類として次のようにあげられています。
@「都城」
A「王城」
B「国府城」
C「北辺城柵」
D「居館・居城」
E「防塞」
(4)戦国期  これまでの武装居館といった性質のものから、本格的な戦闘居城へと移行していく時代です。武士階級が興隆し、武門政治を展開したことが城の発達に拍車をかけます。応仁の乱以降下克上の時代に入り、地方の大名豪族は居城を固め、領国内に防塁を築き、所領と勢力の拡大を計っていきます。この時代の分類は次のようになされています。
@「都城」
A「王城」
B「居城・城下町」
C「防塁(戦闘城塞)」
D「集落防備」
E「外地城塞」
(5)近世大名の城  徳川幕府によって城は一国(一藩)一城に限定されました。伊達藩や薩摩藩などの大藩には例外がありますが、基本的には一城です。それ以外の城は破却されました。それにより城は大幅に減少し、200余りとなったのです。江戸時代の居城は、戦闘のための城塞というよりは、政庁つまり治安維持上の本拠として機能しています。もちろん戦闘を前提としているものがほとんどですが、実際の役割は政治的な性質の強いものです。この時代の分類として次のようにあげられています。
@「都城」
A「王城」
B「居城・陣屋」
C「対外防塁と近代要塞」
(6)近世の要塞  明治維新により、日本は本格的に国際社会の荒波にもまれていくことになりましたが、その過程で幕末から国防上、日本列島のあちこちに台場、そして要塞を築くこととなりました。純軍事的目的の建造物です。
 しかし、太平洋戦争の終結とともに、日本は武装解除されて、台場・要塞はその役目を終えました。ここに始めて城のない国家となりました。
3 城の分類
 なにごともそうですが、その本質を理解するためには、同じ種別・異なる種類に分類し検討する必要があります。当然、城についても、その理解や、また探訪・鑑賞するためにも分類するという作業が重要になります。しかし、ひとこと分類といっても、どこに焦点をあてるかにより異なります。全てを網羅する詳しい分類は専門書に譲り、ここでは主に、探訪・鑑賞に参考になる分類にこだわってみたいと思います。
(1)土木形式
@土の城  主に土塁や土堤から形成される城です。古代から近世まで築かれ続けたもので、土塁のうえには塀なども設けられました。石垣の城が誕生してからは、主に東日本に多くみられ、特に秋田の久保田城は総土造りに近世城郭として著名です。
 一般に、土の城というと、なんだか石垣の城よりも防御が弱いという印象がありますが、完璧に築き上げた土塁は、石垣よりも登ることは困難です。
A石の城  主に塁を石によって築く城です。技術的に、時代差・地域差がありますが、近世以降は特に西日本でみられます。しかし、虎口等の重要な場所のみ、石垣を築くなど、総石垣の城はそれほど数があるわけではありません。
(2)地形・形状の分類  当「城の道」の城頁でも、それぞれに形状の分類をしています。城を訪ね見る際には、その形状を理解するのは最初の一歩であり、基礎の基礎であるといえます。私は城頁で便宜上の分類で、陣屋・館を入れていますが、もちろんこれは本来平城の範疇であります。これは規模で分類したのではなく、混乱をきたさないよう一般的な名称・通称にしたがって分類したものです。
山城
平山城
平城
水城
※陣屋・館
(3)天守の分類
(4)軍学上の分類
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