「うさぎ狩り部」の末路と「知識の公開」のボーダーライン
西日本新聞の記事より。
【宮崎大医学部(宮崎県清武町)の学生六人が、車ではねたウサギを自宅で解剖し、その模様を写真に撮影、インターネット上のブログ(簡易ホームページ)で公開していたことが十二日、分かった。学生らは「うさぎ狩り部」と名乗る大学非公認のサークルをつくり、PRポスターを学内に掲示するなどしたため、大学側は「医師を目指す者として極めて軽率な行為」として調査委員会を設置、六人に十一月十日から自宅謹慎を命じている。十四日に開く教授会で正式な処分を決める。
同学部によると、六人は二十代前半から後半で全員二年生。今年九月十五日、メンバーが宮崎県内をドライブ中に車の前に飛び出してきたウサギをはね、死(し)骸(がい)を持ち帰った。学生らは大学近くのメンバーのアパートに集まってウサギを解剖、その様子をインターネット上に掲載した。
学生らは「うさぎ狩り部」と名乗り、大学の壁などにブログのアドレスを記載したポスターを掲示したため、多くの学生がアクセスした。ブログには解剖されたウサギの写真と「殺した。殺した」など気味の悪い言葉が並び、同学部の公式ホームページにもリンクできるようにしていた。「命の尊さを冒(ぼう)涜(とく)する行為で、同じ医学生として恐ろしい」などの苦情が大学に多数寄せられたため発覚した。
学部側は十月末、六人から事情聴取するとともに、ポスターの撤去とブログの閉鎖を命じた。学生らは「冗談が過ぎた」と弁解しているという。ブログを見た医療関係者は「彼らがこのまま医者になると、いつか大変なことをしでかすだろうと危機感を持った」と話す。
同大医学部によると、三年生の課程で、実験用に飼育したウサギを使う解剖実験があるが、その際は、指導教官が学内の動物実験承認委員会に届け出た上で行うのが通例。学生が勝手に動物の解剖をすることは想定していない。
佐藤泰範・同学部総務課長は「医学生としての倫理観に欠け、大学の名誉を著しく傷つけた行動で、調査委の報告を待って厳しい処分をする」と話している。】
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もうこの連中に対しては、「言語道断」としか言いようがありません。「冗談が過ぎた」って言っているらしいですが、確かに「医学生がウサギを面白半分で解剖しているページ」なんていうのを見せられれば、「こんな医学生って、医者になったら人体実験とか平然とやるんじゃなかろうか…」と不安に思う人がたくさんいるのは当然ですよね。それにしても、この6人は、自分たちでブログを作ろうと思うくらいの知識はあったにもかかわらず、数々の「ブログで人生を誤った人々」の話を知らなかったのでしょうか?それとも、「自分たちの学内だけのことだからだいじょうぶ」と多寡をくくっていたのでしょうか?いずれにしても、この事件は、この大学のみならず、医学生全体に対するイメージを著しく傷つけてしまったものだと思います。この6人に対してどういう処分が下されるかはまだ未定なようですが、少なくとも、彼らがブログを作るときに「想定」していた以上の大きなツケを払わされるのは間違いないでしょう。
ところで、ちょっと不謹慎だと思われる方もいらっしゃるとは思うですが、僕がこの記事を読んでいて思ったのは、この「ウサギ狩り部」のような面白がってやっているような悪趣味な連中は糾弾されて当然だろうけど、「生物の解剖学的知識」として、真面目にウサギを解剖するブログを学生たちがつくったら、それはやはり、糾弾されるべきことなのだろうか?ということでした。いやもちろん、人間の解剖を公開するのは許される話ではないのですが、ウサギやネズミだったらどうなのだろう?と。
おそらく、大多数の人は、「目的が解剖学の啓蒙であっても、そんな気持ちの悪いものは受け入れられない」と考えそうですよね。でも、その一方で、先日行われた「人体の不思議展」がたくさんの入場者で賑わったように、「生物のからだの仕組みは、どうなっているのか?」ということに純粋に興味を持っている人は、けっして「ごく少数」ではないと思うのです。そういう人たち向けのブログとして、「ウサギの解剖」が公開されるとするならば、それはやっぱり「気持ち悪いからアウト」なのでしょうか?それとも、しかるべき研究室なり教授なりが実名でやるとしたら許されるのでしょうか?その「境界」というのは、なかなか難しいところではありますし、「危険を避けたかったら、グレーゾーンには、踏み込まないようにする」しかないのでしょうけど。
実際に、解剖学についての本などは、医学生であることを証明しなくても、書店で買えるわけです。値段がものすごく高いので、趣味で買う人はあんまりいないとは思いますが。
そして、「解剖学」という学問や、もっとシンプルに、「生き物のからだの中は、どうなんているんだろう?」ということに対して興味を持っている人に、情報を提供するようなブログというのは、存在することが許されないのでしょうか?
僕は逆に、そういう知識が「医者だけのもの」になってしまうというのも、それはそれで良くないことであるような気もするんですよね。
ただ、そういう「大義名分」があれば、同じ「解剖中の画像」でも許されるが妥当なのかどうか…
こういう事件があったからといって、解剖という行為そのものが、あまりに悪い印象を持たれるのは、一時期それを仕事のひとつとしていた僕にとっては、ものすごく悲しいことです。それでも、僕自身は、「仕事」だからできたというのが本音ですし、「趣味は解剖」なんて人と2人っきりでいるのは、できることなら避けたいのは間違いないんですけど。