第141夜 神様は心配性!「千年家族」


 ゲームボーイアドバンス(以下GBA)対応のこのゲーム、プレイヤーは新米の神様になって、部下(なのか?)のキュピッドとともに、ある家族(とくに希望がなければ自動的に作成されますが、自分である程度家族構成などを設定することもできます)を見守り、ときには矢を使って介入しながら伝説の「千年家族」を目指すという内容です。

 基本的に、家族は神様であるプレイヤーが何もしなくても勝手に行動して、いろんなことを思いつきながら就職し、結婚し、年老いて死んでいきます。プレイヤーができることと言ったら、刻々と変わっていく家族の「思いつき」に対して、それが良いことだと思ったら、それを応援するような矢(例:がんばれの矢)を使って応援したり、逆に悪いことであれば、それを踏みとどまらせる矢(例:おちつけの矢)を使って考え直させたりする程度なのです。

 このゲームは、実際の時間にあわせてリアルタイムに進行していくのですが(ゲーム上の1年は、実際の時間では50分くらい)、正直、プレイヤーが介入できる範囲は限られていますし、このゲームの画面を1時間ずっと見つめているのは、けっこう辛いものがあります。確かにがんばって介入していると、その世代の家族はそれなりに立派な人生を歩んだり(ノーベル賞を獲ったりすると、その家族は「殿堂入り」できるのです。ちなみに僕は千年家族を達成しましたが、「殿堂入り」は、わずかに4人)、家族仲が良くなったりして「幸せ」になるのですが、「手間のわりには、効果が乏しいよなあ」というのが本音。それでも最初のころは、頑張って介入していたのですが、500年を過ぎるくらいにもなると、完全に「惰性モード」になってしまって、ほとんど「観てるだけ」でした。「長期間電源を入れないとヤバイらしい(事故で家族が全滅?)」という噂があったので確認のために1日に1回電源を入れて、「電源を切っていた時代の出来事」を確認するだけで。1日電源を入れないでおくと30年くらいゲーム上では時間が進んでいるのですが、30年分だと、1回に100〜150個くらいの「できごと報告」があるのでず。でも、内容のバリエーションはそんなに多くないので、最後のほうは、すぐに「ゲームに戻る」のボタンを押すようになりました。途中からは、毎日シーマンにエサをやっていた頃のことを思い出したものです。この家族は「お前は飼い主失格だ!」なんて罵倒してきませんし、GBAはドリームキャストよりははるかに持ち運びに便利ではあるのですけど。たぶん、1日〜2日に1回くらい電源を入れておけば、いろいろトラブルが起こりつつも家族は続いていくみたいですし。

24時間GBAの画面を確認して、家族を幸せに導くなんてことは物理的に不可能だと思われるので、どうしてもアクマにささやかれて資産を全額寄付だとか、借金とか離婚というようなバッドイベントが起こるのも避けられないしなあ。2日くらい放っておくと、自分が全く知らない間に、家族のメンバーが総入れ替えされていたりもするし。

しかしながら、このゲームで「血筋を絶やさないための視点」になると、ゲーム上の家族に対して、「とにかく早く結婚しろ!相手はなるべく若い奴にしろ!」と、つい考えてしまいます。20代後半で独身の後継者候補とか、10歳年上の女性と結婚した後継者とかを見ると「お家断絶」になったらどうするんだ、というような、現代社会からすれば不謹慎極まりないことを考えつつ、僕自身も、「30過ぎまで独身なんてけしからん!」なんて、どこかで神様に怒られているのかもしれないなあ、なんて思いました。身につまされます。神とまではいかなくても、親というのも、こういう視点を持つ一面があるのかも。

たぶん、このゲーム、かなりプレイヤーを選びます。自分では何もできないし、家族がいろんなことを思いつきながら家の中をウロウロしているだけのゲーム画面は、すぐ飽きてしまうし、突然感動的なイベントが起こったりもしません。本当に淡々と人が生まれ、結婚して、病気や事故で死んでいき、次の世代に受け継がれていく……その繰り返し。どんな人間も「家族」という大きな枠の中では、ひとつの「部品」でしかない、そんな「哲学的」なゲーム。

正直、自分で遊ぶより、他の人のプレイレポートを読んでいるほうが面白かったりもするんですけどね、この「千年家族」って。

もし神様がいるんだったら、僕にも「がんばれの矢」を打ってもらいたいものです……


 参考リンク:「千年家族プレイ日記〜やまうち家の人々」(by ホコタテブログ)