第158夜 セガのささやかな復讐物語「龍が如く」


参考リンク:「龍が如く」公式サイト(注:音が出ます!)

 セガの「秘密兵器」として2005年末に発売されたこのゲームなのですが、僕にとっては、ある「歴史的超大作」を思い出させるゲームでした。そのゲームの名は、「シェンムー」。ドリームキャストの「キラーソフト」として、70億円の開発費をかけて製作され、御用雑誌「BEEP!」などで大プロモーションが展開されたものの、あまりに開発が遅れてプレステ2と決定的な差がついてしまった挙句に、ようやく完成したのは序章の部分だけ、結局せっかく選考したヒロインの出番はなく、「なんでもできる」代わりに「何をやっていいのかよくわからない」というような、めんどくさいゲームシステムなど、とにかく「セガの負の遺産」として名高いゲームだったのです。ゲームそのものは、賛否両論あったのですが、「100%のクソゲー」ではなかったのも事実なんですが。
 しかしながら、セガは、その「シェンムー」での失敗を下敷きにして、この「龍が如く」を世に問うてきました。「シェンムー」でグダグダになってしまったシナリオを強化するために、シナリオ監修に「不夜城」などで有名な作家・馳星周さんを起用し(なんと、馳さんは以前、小学館の「ポプコム」というゲーム雑誌でライターをされていたことがあるそうです。中村うさぎさんもゲーム雑誌のライター経験があるそうで、実はゲーム雑誌の世界って、けっこう新しい才能が集まっているのかもしれません)、最初から「18禁」で、オトナ向けゲームにするというかなり大胆な戦略をとってきたのです。そして、その戦略はこのゲームに関しては、見事に的中したといえるでしょう。
 僕もやってみて驚いたのですが、とにかくこのゲームはかなり暴力表現が凄くて、主人公は平気で看板や鉄パイプや自転車(!)を振り回して敵をなぎ倒していくのです。これは痛いだろうな…と心底感じてしまいます。このゲームの世界「神室町」は、歌舞伎町をモチーフにしていると思われるのですが、ギャンブル、風俗などの店がたくさん並んでいて、街ではちょっとしたことですぐ因縁をつけられてバトルがはじまるのです。まあ、「伝説の極道」桐生一馬は、そう簡単には負けないことにはなっているのですが。このゲーム、内容的にはほとんどの場合、「次にやるべきこと」が指示されていますし、神室町のマップで「行くべき方向」も表示されていますから(でも、けっこう広いので、本当は攻略本があったほうがいいと思います)、シェンムーに比べてゲームそのものは、はるかに先に進みやすくなっています。ストーリーは、この手の「任侠モノ」としては一般的な気はしますけど、それでも、「こういう世界観」そのものが、ゲームとしては斬新なものでした。
 ただし、とにかく暴力表現が過激なのとヤクザとかがたくさん出てきますので、そういう作品に生理的嫌悪感を抱いてしまう人にとっては、「ゲームとして楽しむ」のは難しいと思われます。僕にとっても、けっこうギリギリではありましたし。ちなみに、このゲームの中ではキャバクラ嬢を口説けるのですが、せっかくのおまけ要素なら、「正しい選択肢を選ぶと好感度アップ」みたいなシンプルなものではなくて、もうひとひねりあってもよかったかもしれません。でも、「もうちょっとで…」とか思いながらゲーム内キャバクラに通ってみると、現実でキャバクラにハマってしまう人の気持ちもわからなくはないなあ、とも感じました。
 僕は結局、「車バーチャコップ」に挫折して、EASYモードでしかクリアできなかったのですが、それでも最近のゲームのなかでは、かなり楽しめたゲームでした。このゲーム、あのテレビでガンガン宣伝されて、上戸彩が声優で出演している「ローグギャラクシー」と同日発売で、セガも相変わらず商売ヘタだなあ、「ローグ」の半分も売れないだろうに…とか予想していたのですが、大人ゲーマに予想以上に好評で、「ローグ」にはかなわないものの、かなり売り上げは接近しているようです(「ローグ」25万本対「龍が如く」20万本くらい)。発売日がずれていれば、「ローグ」も、もう少し売れたのかもしれません。発売当日は、むしろ「龍が如く」のほうが、売り切れている店は多かったですし。もしかしたら、これは、セガのソニーへのささやかな復讐だったのだろうか…