第135夜 MSXに伝説を創った、もうひとつの「グラディウス2」



このゲームの画面写真や詳しい説明などは、こちらをご覧ください。

 僕が中学校の頃は、まさにファミコンの黄金時代でした。いままでの「家庭用テレビゲーム機」の代表格だった、「カセットビジョン」や「インテレビジョン」、「光速船」などと比べると、圧倒的に美しいグラフィックと滑らかな動き、PSG3音という、「音」ではなくて「音楽」が奏でられる画期的なサウンド機能。まさに、当時のファミコンは「国民機」だったのです。

 しかし、その一方で、機械好きの若人たちの中には、「他人が作ったゲームで遊ぶ」だけでは物足りなくなって「マイコン」の世界に足を踏み入れるものたちも増えていったのです。しかしながら、当時の「マイコン」(今の「パソコン」)は、安いもの(NECのPC6001シリーズあたりが一番安かった)でも10万円くらいして、とうてい中学生の小遣いで買えるような代物ではなかったのです。みんな「勉強にも使えるから」「お父さんも麻雀とかで遊べるし」「これからの世の中は、マイコンくらい使えないとついていけなくなるから」なんて言ってマイコンを手に入れようと試みたのですが、やっぱりこの値段だと、入手できたのは一握りの人々だけでした。実際は「勉強にも使える」だけで、「勉強に使った」なんて話は聞いたことなんですけどね。

 しかし、そういう「ファミリーベーシックじゃ何もできないファミコン」と「あまりに高すぎるマイコン」の深い溝を埋める存在として、颯爽と登場したのが、MSXだったのです。当時は、NECのPC98、88、80、60シリーズ、富士通のFM7、シャープのX1やMZシリーズなど、互換性のない機種たちがそれぞれ熾烈なシェア争いを繰り広げており、「どのメーカーの機械でもMSXソフトが動く」という「統一規格」であるMSXマシンは、ファミコンじゃ物足りないけど、高いマイコンは買えないという若者たちに、急速に広まっていきました。結果的には、MSXそのものは「成功」とは言い切れないものだったのですが、考えてみれば、これって現在のWINDOWSマシンと同じコンセプトのわけで、あまりに先見の明がありすぎた故の失敗だったのかもしれません。

 まあ、敷居を低くしようとしすぎたせいか、「グラフィックもキャラの動きもファミコン以下の割高なゲームマシン」みたいになってしまった面もあったのですが。

 そして、そんなMSXは、ファミコンのようにカートリッジで遊べるということもあって、独自のゲーム文化を発展させていったのです。そんなMSXのゲームメーカーたちの中でも、最も良質のゲームを提供し続けたのが、「コナミ」でした。当時のMSXユーザーにとっては、コナミはまさに「神」だったのです。古くは「ハイパーオリンピック」「けっきょく南極大冒険」から、「魔城伝説」や「メタルギア」など、コナミのMSXゲームはハードの限界を超えており、新作が出るたびに「キーボードがついているだけの、ファミコンよりつまらないゲーム機」とバカにされていたMSXユーザーたちを狂喜乱舞させていたのでした。

 そんなコナミのMSXゲームの中でも「最高峰」と言われるのが、この「グラディウス2」です。非常にまぎらわしいのですが、この「グラ2」は、アーケードで大ヒットして、ファミコン版でも僕たちを驚かせた「グラディウスU〜ゴーファーの野望」とは、全くの別モノで、MSXオリジナルの作品。

 このゲームのカートリッジを差し込んで最初に感動するのは、コナミの新開発サウンドチップによる凄いサウンド。「ウォオオオオーーン」という唸るような、それでいて透明感のある音質が、当時のファミコンのPSG音源では考えられないもので(あえて言えば、ディスクシステムの「ゼルダの伝説」の鐘の音に近いかもしれない)、僕たちは、このゲームのデモ画面を観ただけで「すげー!」と歓声をあげてしまったものです。このゲームのデモがまたカッコ良かったんですよ本当に。僕は内心、反乱を起こしたヴェノムという敵役のほうが正しいんじゃないのかな…とも思っていたんですけどね。

 ゲームの内容としては、当時の横スクロールシューティングゲームの王道であり、グラディウスの系譜に連なるものなのですが、仕掛けのひとつひとつが凝っていて、「こんなことがMSXでできるのか!」と本当に感動したものです。さすがに画面上のキャラが増えると処理落ちしたりもするんですが、そんなことが些細に思えるくらいに。

 このゲームの難点を挙げるとすれば、当時のゲーム基準としても非常に難しかったことと、せっかく最後の敵を倒した、と思ったら、今度は最終面から1面に逆の順番にクリアして戻らないとエンディングにならない、というくらいでしょうか。でも、あの頃は出るゲームの数そのものが少なかったから、「難しくても長く遊べる」というのは、けっして悪いことではなかったのですけど。

 あの頃のゲームって、「ハードの限界をいかに超えるか?」という命題が常にあって、遊ぶ側にも、「こんなこともできるのか!」という驚きを感じることも多かったのです。

 「グラディウス2」、一時期、BGMみたいにずっとデモを流しっぱなしにしてたよなあ…

 これほど「凄いゲーム作って、みんなを驚かせてやる!」という作り手の意気込みが伝わってきたゲームって、僕のゲーム歴でも、そんなにたくさんは無かったよなあ……