第150夜 ほんの一瞬風靡セピア!〜『琥珀色の遺言』


 参考リンク:琥珀色の遺言(PSP版)

 あの「J.B.ハロルド」シリーズで一躍「推理アドベンチャーゲームの大家」となったリバーヒルソフトが、次なるシリーズものとして送り出した「名探偵・藤堂龍之介」シリーズの第一弾が、この「琥珀色の遺言」です。今までのJ.B.ハロルドが、PC8801シリーズベースで発売されていたのに比べて、こちらはPC98シリーズベースで発売されたためか(ちょうど時代もPC98、X68000FMタウンズあたりが主力となってきたこともあり)、グラフィックには格段の進化がみられています。今までの僕なら「オレのシャープX1を裏切りやがって!」と泣き叫ぶところなのですが、ちょうどこの「琥珀色の遺言」が出た時期に、X68000を手に入れていたため、「X68000初の本格推理ゲーム」に、ものすごく期待していたのを覚えています。実際に、オープニングムービーがものすごく凝っていて、「ああ…68K買ってよかった…」と感動したんですよね。サウンドも「いかにも大正ロマン!(って、本当はどんなのかよくわかんないんだけど)」という感じの、ややけだるい音楽、そして、セピア調の「旧い洋館」を再現したグラフィックとあいまって、独特の世界観を築いていました。まさに、横溝正史の世界をパソコン上に再現したというような。貿易商・影谷家の秘密なんて、いかにも!って雰囲気だし。

 まあ、ゲームそのものは、典型的な「コマンド選択式推理アドベンチャー」なのですが、それでも、聞き込みをしているうちにいろんな事実がわかってきたり、ストーリーが進むごとに人物が館の中を移動していて、ちょうど留守にしているタイミングを見計らって(というか、調べないとストーリーが進まないんだけど)、証拠品を探したり、今までのアドベンチャーゲームでは、誰か一人と話していたらずっとそのまま会話が進んでいっていたのに、突然会話に他の人が割り込んできたりと、「おお!」と思わず感心してしまうような、なかなかの新機軸も盛り込まれていたのです。

 証拠品などの小道具の使い方も凝っているし、なんといってもここまで「大正浪漫の世界」を再現しているという点では、まさに日本の推理アドベンチャーの金字塔と言える作品だと思います。気分はまさに、金田一耕助。例のごとく次から次へと犠牲者が出ていくところまで、金田一の世界を再現する必要があるかどうかはさておき。 いや、名探偵なら、未然に防げよ、と。
 ちなみに、この「藤堂龍之介シリーズ」は、第二弾の「黄金の羅針盤」も発売されています。こちらは船のなかが舞台なのですが、なぜか「3Dミシシッピ殺人事件」みたいな画面になっているんですよね。X68000版は、移動がかったるかった記憶あり。
 いまや、「普通のアドベンチャーゲーム」は絶滅危惧種になってしまっているのですが、僕はこういう「古典的な推理ゲーム」が大好きなので、とても寂しい気持ちです。アドベンチャーゲームに時間制限などのリアルタイム要素とか、疲れるだけなのになあ……
 懐かしい、と思いながらこのゲームのことを調べていたのですが、なんと、携帯電話に移植されていたんですね。全然知りませんでした。WINDOWSもあるようです。

 しかし、僕が大学時代に「X68000持ってて本当に良かったなあ!こんな(グラフィックやサウンドが)スゴイゲームができるなんて!」と優越感に浸っていたゲームが、いまや800円とかで売られていたり、携帯電話に移植されているんだからなあ…

まったく、僕のゲーム人生も、影谷家みたいなものだよねえ。