第117夜 永遠の「イロイッカイズツ…」〜「ザ・ブラックオニキス」



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 1983年、今から20年以上前に発売されたこのゲームは、まさに日本のロールプレイングゲームの草分け的な存在でした。当時は、海外(アメリカ)ゲーム>日本ゲーム、というのがゲーマーたちの常識で、「海の向こうには、『ウィザードリィ』『ウルティマ』というものすごく面白い、キャラクターを育てるゲームがあるらしい」というのを雑誌で見て、僕たちは、まだ見ぬそのゲームたちに憧れていたものでした。当時は「APPLE2」なんて日本で買えば30万円以上するマイコン(しかも、田舎では誰も知らない)で、全て英語表示なんて世界は、まさに「夢のまた夢」のようなものだったわけですし。
 今から考えてみると、あのときAPPLEを買えていたら、僕の英語力はものすごく上がっていたのではないか、なんて思ってもみるのですが。ほんと、当時はそのくらい面白いゲーム、というか、ゲームそのものに餓えていたし、「こんなことができるのか!」というような驚きが、ゲームの世界には詰まっていたのです。

 それはさておき、最初にこの「ブラックオニキス」がBPSという無名のメーカーから発売されたときには、当時のいろいろな雑誌で大きく取り上げられたものでした。
 「国産初のRPG!」という謳い文句は、「ウィザードリィ」なんて高嶺の花だった僕にとっても、ものすごく魅力的なものでしたし。まあ、その一方で「こんなの、ウィザードリィ」のパクリじゃん、とか、「ウィザードリィ」をやったこともないのに批判する人も、決して少なくはなかったのですが。そういえば、「ドラゴンクエスト」が後に発売されたときも「ウルティマのパクリ」という批判がけっこうあったのですが、後に日本語化されて発売された「本家・ウルティマ」で遊んだ僕の感想は、「これは、ドラクエのほうが面白いんじゃないか?」というものだったのですけど。スケールという点では、ウルティマのほうが長く遊べるのは事実なのですが、演出とか遊びやすさとかを考えるとねえ…

 話を戻して、この「ブラックオニキス」は、いわゆる「迷宮探索型RPG」の王道とも言うべき作品なのですが、プレイヤーは5人までの(5人以下なら、ひとりでもOK)パーティを組んで、「ブラックタワー」内に隠された強力な魔力を持つ宝石「ブラックオニキス」を探しに行く、という設定になっています。
 RPGの「お約束」として、プレイヤーは敵を倒すごとに経験値を得て、レベルアップしていきます。

 そして、この「ブラックオニキス」では、「まだ」魔法は使えません。シリーズ第二弾の「ファイヤークリスタル」では魔法が使えるようになっていますから、おそらく、BPSとしては、当時の日本のプレイヤーそのもののレベルアップに合わせて、ゲームを複雑にしていこうと考えていたのでしょう。確かに、「魔法使えないのかよ」と文句を言いながらも、当時の僕達はこのゲームに頭が溶けるほどハマっていたものでした。
 そんなにものすごく難しい、というわけでもないのですが、マッピングなんてやったことはありませんから、ワープで道に迷いまくったり、地下深くに一気に潜れる井戸に入ったのはいいものの、クラーケンに秒殺されてしまったり、当時の僕には、まさに「冒険」だったのです。あの「イロイッカイズツ」にも泣かされましたし。だいたい、ヒントそれだけなんだものなあ…「カラーコード」なんて、言われないと気付かないって…
 そして、エンディングも今のゲームから考えると、非常にシンプルなものでした。
 それでも、当時はまさに「国産RPGの金字塔」だったんですよね、このゲームは。
 たぶん、20年前のパソコンゲーマーは、誰でも一度は遊んだことがあるのではないかなあ。

 あの頃は、「突然知らないメーカーが凄いゲームを出す」なんて「奇跡」が、まだ珍しくなかった時代でした。
 このシリーズ、第2弾の「ファイヤークリスタル」までは難産ながら発売されたのですが、結局、その続編の「ムーンストーン」は、何度か画面写真が公開されながらも、世に出ることはありませんでした。たぶん、日本では「白夜に消えた目撃者」と並ぶ「有名な未発売ゲーム」だと思います。