第147夜『月刊アスキー』に萌えた日々「ビスマルク追撃戦」

 

実際の画面写真はこちらを御覧ください。

 今の若者(とか書くのは悔しくて仕方ないんだけど)たちにとっては信じられないような話なのでしょうが、今から20年前くらいのゲームというのは、カセットテープに入れて売られているものが主流だったのです。そして、その時代は、カセットテープで売られている「パッケージゲーム」は高価でなかなか手が出ず、多くのマイコンゲーマーたちは、雑誌に掲載されていた「プログラムリスト」を自分でコンピューターに入力して遊んでいたのです。しかし、この作業はまさに「苦行」としか言いようもないもので、わけわかんない英語や数字の列を何日間にもわたって入力し続けるという作業を続けた挙句、やっとF5キー(=“RUN”)と入れると「ピッ」という無気力な音とともに、”syntax error”とかいうようなエラーメッセージが表示され、雑誌を見ながらなんとか修正すると、今度は他の行にエラーが出て…というような地道なデパッグ作業の繰り返しが待っていたのです。そして、「正しいはずなのに、どうして動かないんだ…」と落ち込んでいると、その次の号に「ごめんなさい」とか言うコーナーで、プログラムの印刷ミスが掲載されていたり…

短気な僕は、とにかくエラーが出た行を片っ端から消して、キャラクターが無茶苦茶になったゲームを遊んだりしていたんですけどね。

この「ビスマルク追撃戦」は、第2次大戦の末期の史実に基づいて作られたゲームなのですが、内容としては、戦艦ビスマルクを操って、連合軍の艦隊の追撃をなんとか振り切ってキール港からブレスト港まで到達させる、というものです。

上の参考リンクの画面写真を見ていただければわかるように、画面はひたすら地味。というか、現代ゲーマーの感覚からすれば「何じゃこれ?」という気分にしかならないですよね。もちろん派手な戦闘シーンのグラフィックがあるわけでもなく、画面に表示されているのは、地図とビスマルクの現在の状況、周辺海域の敵艦の情報のみです。

しかしながら、このゲームのプログラムリストが掲載されていた、「月刊アスキー」を僕はずっと大事に持っていて、いつか自分がPC88を入手したら、このゲームをやってみたいものだと思っていました。というのは、このゲームの「アスキー」での紹介記事は、実際のプレイレポート風になっていて、史実では撃沈された戦艦ビスマルク(まあ、ドイツ海軍は完全に制海権を握られていて、日本の「戦艦大和」のような状況での出陣だったわけで)をいかにしてブレストにたどりつかせるか、というのが【いまや大西洋で最速となったロドニー(戦艦の名前)が、傷ついたビスマルクに最後の闘いを挑んでくるのです!】というような感じで書かれているのです。当時から歴史好きだった僕は、ゲームの内容そのものよりも、このゲームの紹介記事の面白さに興奮してしまいました。

何年後かに、研究室の片隅に放置されていたPC88で、この「ビスマルク追撃戦」を偶然プレイする機会に恵まれたのですが、やってみると、正直、「地味なゲームだなあ…」という感想しかなかったりもするのですけど。

昔のゲームというのは、けっこう紹介記事のほうが楽しかったりしたんですよね。

最近は、新作情報と攻略記事ばっかりで、なんだかちょっとつまらないよなあ。