福島原発事故の放射性物質がヨーロッパまで届いていた。

掲載日2011年6月25日                 斉藤 清

 6月23日付けの読売新聞の電子版を読んでいたら、下記のニュースが書かれていた。

 東京電力福島第一原子力発電所事故で大気中に放出された大量の放射性物質は、強い偏西風のジェット気流に乗って欧州まで運ばれたと、九州大と東京大の研究チームが22日発表した。

 日本気象学会誌電子版に近く掲載される。

 九州大応用力学研究所の竹村俊彦准教授らが、大気中の微粒子の動きを計算できるモデルを使い、水素爆発などで第一原発から出た放射性物質の動きを再現した。

 それによると、放射性物質は、3月14〜15日に東日本を通過した低気圧の上昇気流で上空約5キロに舞い上がり、例年より強かったジェット気流に乗って1日約3000キロを移動。17日に北米大陸の西岸に到達し、アイスランドなどを経由して23日にはスイスにまで達したという。

(2011年6月23日15時38分  読売新聞)

 隣国の中国では、以前の日本と同様に原発建設を国策で推進中で、東シナ海沿いから内陸部まで、20基余りの原発を追加建設中である。

 今後、さらに多くの原発が建設されるであろう。

 毎年、春一番が吹く頃、中国の砂漠地帯から偏西風で運ばれて日本全土に飛んでくる「黄砂」がある。我が信州も黄砂の被害があり、自宅の車の屋根に約1mm程度の黄砂が積もることもある。黄砂で北アルプスが霞んでしまう日もある。

 日本の原発事故も大問題であるが、中国の原発が放射性物質を放出する事故を起こしたら、放射線を出す塵(放射線黄砂?)が日本を襲うことになってしまう。そうなったら福島原発どころではなくなる。

 先日、あるところで原発事故が話題になったが、その時「長野県は現在は安全だと思うよ。」と話したが、中国が同じような事故を起こしたら日本国中が被災地になってしまうかもしれない。

 公共テレビのニュースによれば、インドも原発大国になろうとしているが、「福島原発事故で原発の規制をより厳しくすることには反対する。」と表明しているらしい。 

 火力発電と異なり、原発は、現在の人智を超える部分を多分に持っている未完成・未成熟技術による設備であることを、今回の福島原発事故で思い知らされたのである。ジェームスワットの蒸気機関の発明から280年近くかけて現在の大容量火力発電設備になったが、原発の開発速度が早過ぎ、安全が追いつけないのではなかろうか。達磨(だるま)の形をした格納容器と圧力抑制室は、形を見るとどうしてもタコ入道に見え、最新鋭のスマートな装置には見えないのである。それに較べて蒸気タービンや直結する発電機は、150年以上かけて現在の形状になり、恰好も良く最新鋭のこれぞ機械という感じがする。

 筆者も現役時代、電機メーカーで電機機器(原子炉ではない、発電機や変圧器など)の設計を長期間担当していたが、原発に納入する電機機器は国の決めた原発耐震基準に準拠するように作って来た。しかしその基準には津波対策について、きちんとした基準は無かった。またマグニチュード9と言う巨大地震の発生は、全く考えられていなかった。多分、基準作りの参考にした米国の原発は、内陸の大河の近くにあり、絶対に津波の危険が無いので、日本の基準を作成する時、抜け落ちてしまったのかな、と心配する者である。

 その耐震基準が全く当てにならなかったことを知らされ、そして大勢の住民が突然の避難指示で大変困難な状態に置かれている事になり、これらの被害のニュースを見る度に、それらの担当を離れて20年以上経った今ても、心に重くのしかかってくるものがあり、暗い日々が続いている。サイクリングなどで気持を少しでも休めたいと思っているが、サイクリングしている時だけは忘れるが、帰宅するとまた戻ってしまう毎日である。

注記)マグニチュードと地震の震度を同類項と思っている向きも多いらしい。

 地震の震度階の震度5とか6強と言うのは、其々の地震波の地表面の計測点での揺れ方(加速度や相対変位をベースにして決める)を示すものである。建築構造物などは、この震度階を基準にして設計され建設される。一方マグニチュードは、震源全体の地震で解放されたエネルギーの単位である。震源の地震を起こした総エネルギーを表す尺度である。

 通常日本のどこかで多頻度で発生しているマグニチュード(M)=3の地震時の、震源地の地震総エネルギーを基準値とすると、マグニチュードが1増えてM=4になると震源地の地震の総エネルギーは31.6倍、マグニチュードが2増えてM=5になると31.6x31.6=1000倍になるのである。簡単にいえばマグニチュードが2増えると、地震エネルギーが1000倍になるのである。

 従ってM=7になると、M=3の時と較べて、1000x1000=1,000,000倍(百万倍)のエネルギーになる。

 今回の東日本大震災を引き起こしたマグニチュードはM=9になった。M=3の地震と較べて、1000x1000x1000=1,000,000,000倍(10億倍)の超巨大地震だったのである。

 関東大震災はM=7.9だったが、M=8とすると、M=3の地震と較べて、1000x1000x31.6=31,600,000倍である。安曇野は糸魚川・静岡構造線活断層の中心にあり、M=7.7の地震が想定されるという研究報告がある。今後30年以内の発生確率については、いろいろインターネットに出ているが、筆者にはその信ぴょう性が分からないので、ここでは紹介しないでおく。

 M=7.7といっても関東大震災と同じ直下型地震になるから、関東大震災レベルの大被害が予想されるのである。

 フォッサマグマという地殻構造があるが、それと糸魚川・静岡構造線を混同している方が多くいる。糸魚川・静岡構造線という地震発生の確率が非常に高い区域は、フォッサマグナの西側の縁のことで、フォッサマグナは糸魚川・静岡構造線から東側に幅300kmにおよぶ広い地殻構造を言っている。

 「地震・雷・火事・親父」でなく、最近は「地震・原発・火事・雷」で、「親父」は影を潜めてしまった。 

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