「地球温暖化論に騙されるな」を読んで

掲載日2008年12月2日               斉藤 清

 数ヶ月前、鈴木喬さんから、「地球温暖化論に騙されるな」という本が最近発刊されたので、読んでみたら参考になると思うとの連絡があった。早速筆者の住んでいる田舎の本屋に買いに行ったが、予想とおり入荷していなかったので、注文しておいた。それから1週間くらい経った7月下旬、その本を手にすることが出来た。初版発行は2008年5月末、発行以来2ヶ月で3刷りだからこの類の書籍としては相当売れているらしい。しかしその本は、そのまま筆者の本棚に積まれたままだった。

「地球温暖化論」に騙されるなの書籍のカバー。

 最近、ちょっとしたきっかけがあり、「地球温暖化論に騙されるな」を読んでみた。きっかけとは、今年の大学の電気のクラス会が12月10日に東京で開催するという案内が来たが、昨年12月のクラス会の席で、T君が「地球温暖化を防ぐには、日本の四国の面積より大きい地表面に太陽光反射板を設置して太陽光を宇宙に反射させて戻してやれば解決する、しかもそれをやりすぎると、地球は却って寒冷化するという発表を学会でしたところ大きな反響があった。それでそれらの論文をまとめて権威ある学会や外国の科学専門誌に提出するつもりだ。」と話されたのだった。筆者は彼の考え方には今も納得できない。その件は一時このHPにもご本人の了解を頂いた上で掲載したが、しかし後に彼と相談してHPから削除した。但し、HPに掲載した時、クラスメートの数名から「ありえないことだ。」との反論ばかりが届いた。また当地に住む知人の元東大物理学の教授に尋ねたら、やはり彼の学説には矛盾があるとの事だった。それでその論文そのものについては今後も議論する積もりは無い。今年のクラス会で時間があればその続きを議論したいと思ったので、上記の本を読み始めたのだった。

 本の執筆者は、東京工業大学大学院理工学研究科教授の丸山茂徳氏、58歳。地質学者で専攻は地球惑星科学で気象学ではない。地球の表面のマントルの動きだけでなく、地球の中心部も含めた全体のマントルの動き(対流運動)に関する新理論を打ち立てて学会に衝撃を与え、日本地質学会論文賞、紫綬褒章を受賞。著書多数。

 世界の気象学者が中心になって、地球温暖化対策を提言している発信元の「気象変動に関する政府間パネル(IPCC)の地球温暖化論は、一部の気象学者がスーパーコンピューターなどで解析したデータによると地球温暖化ガスであるCO2の上昇や、その解析結果をベースにして、地球の平均気温が21世紀中に5〜7度Cも上昇する、また最近の地球規模の異常気象、氷山の崩落、地球の砂漠化面積の増大などは、すべて地球温暖化ガスであるCO2が人類の活動で急激に増大しているのが原因である。従ってCO2ガスの排出を抑制することが最重要緊急対策と言われ、それが世界の主流になり、政府を巻き込んでCO2削減策の検討がなされている。

 しかし丸山教授は「地球温暖化の原因は人類の活動で排出した温暖化ガスであるCO2の増大が原因ではなく、人類の活動ではなく宇宙規模の現象の中で地球が温暖化していき、その結果として地球上の大気のCO2が増大している。一例を挙げれば海水には大量のCO2が溶け込んでいるが、地球の温度が上ると海水温度も上がり、そうすると海水中に溶けていたCO2が海水中に溶解できる限度を超えるので、空気中に蒸発して出てくる、こちらの方が人類の活動によるCO2の増大より桁が上なのだ。」そうだ。
 彼は「検討できるあらゆるデータからこれから地球は温暖化から寒冷化の時代に移行していくはずで、このことは20年後にははっきりと出てくる。気象学者は、天文学や地球物理学の専門ではないので、これらの宇宙規模の現象をスーパーコンピューターによるシミュレーション解析でもパラメーターとして考慮していないので、正しくない温暖化予測をつくり出し発表しているのだ」との事であった。

 化石燃料の枯渇対策や、化石燃料の大量消費による地球の空気の汚染対策は最重要課題であるので、化石燃料の利用は極力減らす必要はあるが、人類の活動によるCO2ガスの増大が地球温暖化の原因だというCO2ガス犯人説を完膚無いまでに論破する衝撃の本であった。

 
但し、筆者は専門ではないので、著者の考え方を完全に理解して全面的に賛成しているわけではない。このような少数意見もあるが、少数意見の方が正しいことも、ガリレオの地動説のように後世正しかったと証明されたこともあるのだから・・・。マスコミなども安易にIPCCという権威のあるらしい組織の考えを鵜呑みにするのではなく、このような少数意見も勉強して欲しいものである。そして発表してもらいたいものである。また政府の関係官庁の頭の良い(頭の硬い)官僚諸君にも是非読んでもらいたいものであると思った。CO2排出権の国内、国際売買権などというくだらないことに頭を使う時間があったなら・・・。

 彼の本には説明するための図が多く掲載されているが、図2を下に載せた。彼の論拠の一つになっている図である。

実線:大気温度  点線:大気のCO2濃度

 
その文章には、「全体的に見ると、1985年を除いてほぼ気温が先に上がって、そのピークの後に二酸化炭素が増えていることがわかるでしょう。その逆も同じです。つまり、二酸化炭素の増加とは温暖化の結果であって、原因ではないのです。この観測データがそれを明らかに示しています。」とある。

 HP編集者としては、この本が2008年5月に出版されたのだから、せめて昨年の2007年までの更に19年分のデータを入れなかったのか残念でならない。新しいデータほど信頼性が高いし、そのデータも同様の傾向を示すなら説得力があったと思う。都合の悪い説明の出来ないデータが混じっていたのかもしれない。意識的にそういう事をもしやったとすると、この文献の価値は無くなってしまう。そうでないことを信じたい。

 彼の論拠のあらまし(詳しくHPに書くと営業妨害になるので書く事が出来ないが、興味のある方は本を購入したらよい。(発行所:講談社、SBN978−4−06−214721−7 定価1470円。)

気象変動の要素
 (1)太陽の活動度
 (2)地球磁場と宇宙線
 (3)火山の噴火
 (4)地球の軌道
 (5)温暖化ガス

(1)太陽の活動度
 太陽の活動がどれほど活発化かが一番良く分かる指標は太陽の黒点数である。太陽活動が活発で地球へ降りそそぐ太陽エネルギーが多いときは、黒点数も多い時である。2000年ごろから黒点数が減少し始めている。一個も観測できない日もある。黒点数は下がり始めたばかりだが、2035年ころまでは間違いなく下がり続けて行くと考えられる。従って太陽から地球に届くエネルギーが当分減少の一途を辿るはずだ。

(2)地球磁場と宇宙線
 地球に届く宇宙線の量は、室町、江戸時代は非常に多かったというデータが同位元素分析などから判るが、宇宙線の量が増えると、大気に発生する雲量が増えるのだ。宇宙線が雲を形成する核を作り出すからである。それでこの時代は地球を取り巻く大気の総面積に占める雲量が今よりかなり多かったと推定される。江戸時代は今より2度Cくらい日本の平均気温が低かったが、その主な原因は晴れた日が今より少なく、雲が多い日が続いたことが大きく影響している。江戸時代は何度も大飢饉に襲われ大量の餓死者が出たのは、江戸時代は寒かったことを端的に証明している。現在は宇宙線量は底に来ているので雲量が少ないが、地球へ到達する宇宙線量はこれから次第に増加していくと予想される。なぜなら地球の磁場がここ100年間ほど急速に減少しているからである。地球の磁場が強いと宇宙線は地球に入りにくいので雲も出来にくいのである。(説明グラフは省略)
 宇宙線が増えると雲量が増え、地球へ届く太陽エネルギーが減少するので、寒冷化の方向に移行していくと思われる。
 オーストラリアなど極地に近い国では、紫外線が強まったため、皮膚ガン予防や日焼け止め対策に苦心しているが、これを温暖化のためと勘違いしている人が多い。これは地球磁場が弱まり始め、宇宙線の降りそそぐ量が増え紫外線の照射量が増えたからである。

(3)火山の噴火
 1991年のフィリピンのピナツボ火山の大噴火は20世紀最大と言われ、上空25,000〜35,000メートルの成層圏まで火山灰が届き、地球上に届く太陽エネルギーを減少させ、地球の平均気温は2年間にわたり0.5〜0.8度C下がった。これは人類が化石燃料を大量消費し始めた200年前からその時までに放出したCO2の総量(200ppm)による温室効果ガス効果を帳消しにするほどだった。
 これから寒冷化が進み、そこで大噴火が起きれば、寒冷化に拍車をかける。

(4)地球の軌道
 地球と太陽の距離は一定ではなく、特に木星と土星の引力によって変わる。太陽からの距離が遠いときは、地球に届く太陽エネルギーは減って気温は下がる。逆に近いときは気温も上る。さらに地球の回転軸には傾きがあり、太陽エネルギーがたくさん届くのが北半球である時期と南半球である時期が、ある周期で繰り返される。大陸は北半球に偏っ存在するから、北半球に太陽エネルギーが多く届く時期には大陸が多いため気温は上がりやすく、逆に南半球に多く届く時期は海が多いため気温は上がりにくいのである。(海水は陸地より比熱が大きく温まりにくいからである。)この軌道を計算すると、今後南半球に太陽エネルギーが多く届く時期になると予測される。

(5)温暖化ガス
 現在、人間が排出するCO2は毎年およそ1〜1.4ppmづつ増えている。全世界をあげて排出量を減らす運動をしたとしても、この程度は増え続けるであろう。その温室効果は微小であるが、気温を上げる要因の一つであることは間違いは無い。

以上彼の論点を整理すると以下のようになる。

(1)太陽の活動度⇒活動が低下⇒気温低下
(2)地球磁場と宇宙⇒磁場が弱くなる⇒宇宙線量が増える⇒雲の量が増える⇒気温低下
(3)火山の噴火⇒大規模噴火の場合⇒気温低下
(4)地球の軌道⇒地球が受ける太陽エネルギーが減少傾向⇒気温低下
(5)温暖化ガス⇒気温上昇
 過去100年ほど地球の平均気温がかなり上がっているのは事実である。これは太陽活動がここ100年、過去に無いほど活発になっているからである。かつ過去100年の宇宙線の照射量は低い値を示している。しかしこれらは気温低下のほうに舵を取り始めている。

大事な対策
 地球の人口爆発を食い止め、化石エネルギーなしで太陽エネルギーのみで人間が生活できる人口は、およそ30〜35億人である。日本では約3000万人になる。少子化対策大臣まで置いて人口を増やすのではなく、人口を抑制しつつ、一人当たりの生産性を飛躍的に向上する策を考えることの方が大事である。(HP編集者コメント:今の日本の政府や政党でこのようなことを考えている人は皆無ではないだろうか?)

HP編集者コメント:
 IPCCがスーパーコンピューターでシミュレーションしているのは、地球の表面の厚さ僅か2万メートルくらいの大気層を計算モデルにして、上記の(1)〜(4)をその解析パラメーターから除外しているところに大問題がある。しかも気象学者が中心になって計算した結果を鵜呑みにするばかりのIPCCでの審議は誤解を与えるだけである。台風の進路予測さえ出来ていないのに、地球全体の大気の温度解析をしたと言ってもその結果を信じることは出来ない。アメリカはIPCCで審議された計算結果を信用しておらず、独自に世界の雲の分布状態の変化を長期的に観測したり、地球に降り注ぐ宇宙線のデータを着実に蓄積しつつある。日本の政府は、IPCCのデータや京都議定書の議長国だった面子もあり、早々と1990年を基準にして2050年には温暖化ガス50%削減を洞爺湖サミットで福田前総理が表明しているが、アメリカの方が賢いやり方である。
 以上、著者丸山茂徳氏の「地球温暖化論に騙されるな」を読んで、彼の主張を要約しながら感想を記した。

 
 下記は2008年12月1日発行の信濃毎日新聞の特集記事から抜粋した。削減目標の基準年が国によって違っていることに注意すること。

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