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小森永キョロの「キョロちゃん旅行社

ときめき☆アーロン★ナイト

 香港芸能界には「四大天王」と称される代表的な存在の4人の男性アーティストがいて、アーロン・クォック(郭富城)はその内の一人。歌って踊れて演技もできて、と、とかくマルチであることを要求される香港芸能界にあって、90年代初頭からずっと輝き続けているトップスターです。
 香港には新城というラジオ局があって、設立13周年をお祝いするイベントに彼が参加するとのこと。アーロンをこよなく愛する朋友達のお手配で、そのステージを見に行くことになりました。
 会場は、尖沙咀の西側に突き出たオーシャン・ターミナルの中の「皇宮大酒樓」という夜總會。まずディナーが供され、それからステージが始まるというものでした。

新城のDJ達のトークや若手アーティスト何組かのステージの後、いよいよアーロンが舞台に登場 !
 「格が違う」というのでしょうか、彼から解き放たれるオーラの量が、その前に出ていたアーティストと、圧倒的に違うのです。
 私は特に「アーロン命 !」という程のファンではないのですが、それでも彼がステージ上から、ほとんど暗闇と言えるような私達のテーブルに気が付いて、「日本からもファンが来てくれてます!」と声をかけてくれ、更には、こちらに向けて歌ってくれた時には、しみじみと「アーロン、いい人だあ〜」と感動したものでした。
 朋友によると、この日彼が歌ったのは、「水手装與機関槍」、「錯・愛的喚呼」の2曲。ダンスの上手さは言うまでも無い事。(バックダンサーより上手いって、どうよ!) 何年か振りに、しかも初めて至近距離で見た彼の肢体の動きは、美しさとカッコ良さの極みでした!!
 歌い方だって、グッと大人の男の色気が増していて、ウットリしている朋友の代りに叫びそうになりました。「イカしてるぞぉ、アーロンっっっ!!!」
 けれども夢見る時はあっという間。華やかな余韻を残したまま、彼はステージを終えました。

 しかぁしっっ!!
私にとってのメイン・イベントは、この後、突然やって来たのです。
 ステージを終えたアーロンは、なんと、私の席の後を通って退場するようになっていたのです。会場内に狭しと配置された卓間は、人一人通るにも苦心するほどのギュウ詰め状態で、当然アーロンとても「足早に立去る」ことはままならず、正に、私の席の真後で、僅かな間立ち往生、という具合になりました。
 事態の急展開と、突発的なLUCKYに、動悸・息切れ・目眩を覚えながら、それでも私は瞬間的に思いました。素晴らしい一時を見せてくれた彼に、多謝、とお礼を言いたい、と。それなのに、口をついて出た言葉は、なぜか「アーロン!」という彼の名前でした。
 香港人は、彼の名を「エーロン」と発音します。それを意識したわけではないのですが、思い切り日本語で「あーろんっ!!」と呼びかけてしまったのです。それが功を奏したのか、アーロンは私の声に気付き、私の目を見て「ニコッ!」と素早く微笑んでくれました。
 ああ、世界中のアーロン迷の皆さん、心の底からごめんなさい。あの日、あの時、あの瞬間の彼の笑顔は、紛れも無く私ただ一人に向けられたものでした。顔と顔の間、僅か50cm。(本当にすみません。通路が狭いせいなんです。私が近付いたわけではないのです)  間近で見る彼の顔は、ビックリするほどコンパクトで、額をつたう汗もきらめき…、ああ、もう、それから先は覚えていません。
キョロちゃんアーロンに会う 気が付くと、彼は会場を出て行くところでした。私はきっと興奮していて、周りの友人達に何か喋りまくっていたような気もするのですが、実のところ、心ここに在らずだったのです。

 その後、いつまで続くとも知れないイベント会場を抜け出し(新城の方々、ごめんなさい)、夜の風に頬を撫でられて、ようやく我に返りました。そして、香港の夢のような夜は、胸の中にかすかなときめきを残しつつ、ゆっくりと更けていったのでした。

【「香港へ行クェ!!−ツアーコード001−」より】


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