1998年5月16日の土曜日にバーミンガムでは約7万人のヒューマン・チェーンが実現し、この日はG8諸国に債務問題をサミットの最重要課題の一つとして取り上げさせた記念すべき日となった。
ヨーロッパ諸国はもちろんのこと、日本やアフリカ諸国からもこのヒューマン・チェーンに参加するためにはるばる海を渡ってきたものが大勢いた。
「債務帳消し!」と書かれた風船が舞い上がり、車のクラクションやドラムなどの音が響き渡り、医者、学生、司祭などそれぞれの立場の人たちが全員でそれぞれの形でアクションを起こしデモは多いに盛り上がった。
150万人分の署名をG8の代表者に手渡し、この日を「私たち70,000人の日(A DAY FOR THE PEOPLE)」と定めたのだった。
ケルン・サミット
ケルン・サミットの会場となったルードヴィヒ美術館では5万人を超えるヒューマン・チェーンが再び実現し、前回分を大きく超える1700万人分もの署名がG8の代表者に手渡された。
ジュビリーの活動の成果もあり、最終的には700億ドルの債務の帳消しを含む改革案が採択されたのである。
しかしながら、内容的にはまだまだ十分と呼べるようなものではなく、委員会の中では失敗に終わったと危惧する向きも見られた。
しかし、先進首脳に債務の帳消しを認めさせたのは大きな前進である。特に、バーミンガム・サミット時には反対の方針であったホスト国のドイツが政権交代もあり、賛成側にまわり、イタリアもそれに追従した。
積極姿勢を見せなかったのは、日本だけになったのである。
沖縄サミット
沖縄サミットでは最貧国の債務帳消し問題が今まで以上に注目を集めて開催された。
そのため、各国首脳からは貧困が紛争を招くという悪循環を生むといった危機感を抱く発言が見られた。
しかしながら、ホストの森首相は「債務救済のトーンを強めるべきだ」と発言しているにもかかわらず、現実には昨年合意した債務救済策の決定国は9ヶ国にすぎず、しかもこの中で実際に削減を受けた国はまだ1ヶ国もない。
さらに声明では、G8が「重債務貧困国(HIPCs)や国際金融機関(IFIs)とともに迅速に動き、今年末までに20ヶ国が決断点に達する予想を実現させる」とうたっているが、これは、昨年12月に国際通貨基金(IMF)が今年末までに24ヶ国が決断点に達すると発表したというとこと矛盾した内容になっている。
今回のサミットにつぎ込まれた総費用は約800億円にも上り、その豪華さは前2回のサミットと比べても突出していて、約50倍という。
この浪費ぶりに対して、ジュビリー2000などは「ガンビアか赤道ギニアの債務を帳消しに出来る」「貧しい国の1250万人の子供が学校に行ける」といった談話を発表。今回のサミットでは債務救済計画の加速に完全に失敗に終わったことを物語っている。
国連ミレニアム・サミット
9月6日からニューヨークで開かれた国連ミレニアム・サミット。世界150ヶ国以上の首脳が一同に会するこのサミットでも重債務貧困国を救済するための行動や発言が多く見られた。
ジュビリー2000は7日にU2のボノと途上国でつくる77ヶ国グループ(G77)議長のオバサンジョ・ナイジェリア大統領が代表として2120万以上の署名をアナン国連事務総長に提出した。
アナン事務総長は「署名の努力は、人間愛と連帯の好例」と運動への理解を示し、署名を快く受け取った。
このサミットの中でグローバル化によるいっそうの南北格差が懸念事項として挙がっている。
オバサンジョ・ナイジェリア大統領は「グローバル化は、貧困の撲滅を意味しなければならない」と強調し、カタールのハマド首相は「先進国は、工業製品の価格が高いことには耳を貸さず、原油などの原料が高くなる時だけ反対の声を上げる。先進国は途上国の競争力をそぐために、さまざまな言い訳をする。」と先進国の途上国に対する政策そのものに苦言を呈する首脳も多く見られた。
最終的にはミレニアム宣言骨子に「重債務貧困国への債務削減、帳消しの推進」という項目も採択され、サミットは閉幕したが、実際の債務削減にはまだまだ道のりは遠いようである。
ジェノバ・サミット
7月20日から北イタリアの港町であるジェノバで開かれたサミットは、今までとはまったく違った悲劇を生んでしまった。
今回注目されたのは、アメリカが京都議定書からの離脱を表明したことによる地球温暖化に関する事柄で、同時進行でドイツのボンで行われた気候変動枠組み条約第6回締約国会議(COP6)とともに最大の注目が集まった。結局アメリカの方針は変わらず、共同宣言では「意見の不一致がある」と明記されることになった。
重債務貧困国への対応は反グローバル化の高まりに配慮し、G8首脳と途上国代表との会談も設定され、今回も23ヶ国で530億ドル(約6兆6000億円)の債務削減を宣言したが、前回までの分41ヶ国1500億ドル(約19兆円)の債務が実際に帳消しになったのはボリビアとウガンダだけであり、今回もその実行には疑問符をつけざるを得ない。
今回のサミットで一番話題となったのは反グローバル化を掲げるデモであった。ジェノバに押し寄せた人数は実に15万人にものぼり、一部が暴徒化し1人が警官に頭を撃たれて死亡する事態にまで発展してしまった。
こういった国際会議でのデモの暴徒化は99年にシアトルで行われた世界貿易機関(WTO)閣僚会議以来頻繁になっており、背景にはアメリカの1人勝ちに対する不満や南北格差などの問題があり、またインターネットによってNGOグループの繋がりが深まり、さまざまな情報(会議での警備情報からどんなガスマスクを持って行くのがいいのかなど)が流れていることなどがあげられる。
多くのNGO団体はこういった過激派の行動に迷惑しているが、グローバル化が進む中反グローバル化を掲げる過激派の行動は今後もやみそうにない。