オメガ3脂肪酸は、女性の加齢黄斑変性症の発症リスクを低減させる

最新疫学研究情報No.87

米国のハーバード大学医学部のウィリアム・G.クリスチャン博士らによる研究チームによって、「オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)を定期的に摂取することは、女性の加齢黄斑変性症(AMD)(※1)の発症リスクを低減させる」との報告がなされました。

研究チームは、女性健康研究(大規模コホート)の参加者の中から、AMDの病歴のない3万8022人(平均年齢54.6歳)を選出し、食物摂取頻度アンケートを実施しました。その回答をもとに、オメガ3脂肪酸(*DHA・EPA)・オメガ6脂肪酸(*アラキドン酸・リノール酸)の摂取量とAMDの発症率との関連性について、10年間追跡調査を行いました(期間中に235人がAMDを発症しました)。

調査の結果、DHAの摂取量が最も多い女性は、最も少ない女性と比べ、AMDの発症リスクが38%低かったことが判明しました。またEPAの摂取量が最も多い女性は、最も少ない女性と比べ、AMDの発症リスクが34%低かったことが明らかになりました。魚の摂取量とAMDとの関係を調べたところ、1週間に魚を1サービング(※2)以上摂取した女性は、1カ月間に1サービング未満の女性と比べ、AMDの発症リスクは42%も低かったことが明らかになりました。一方、オメガ6脂肪酸とAMDとの関連性は見られませんでした。

研究チームは「今回、DHAやEPA(魚油のサプリメントや魚)を定期的に摂取することが、AMDの発症リスクをかなり減少させることが明らかになった。しかし今後、この結果をさらに確実なものにするために、無作為割付臨床試験を行う必要がある」と述べています。

※1加齢黄斑変性症は、網膜の中央にある小さな黄斑(直径1.5~2mm程度で、ものの形・大きさ・色・立体性・距離感など光の情報の大半を識別する部分)に障害が生じ(加齢による)、視力が低下する疾患です。初期には、視野の中心部分が歪んだり、暗く見えたり、ぼやけて不鮮明になるなどの症状がでますが、悪化すると失明する恐れもあります。

※2米国農務省(USDA)が発表した食事ガイドラインでは、魚の1サービングは2~3オンス(約60~90g)と定められています。

出典

  • 『Archives of Ophthalmology online 版 2011年3月14日号』
このページの先頭へ