長期にわたるホルモン療法は乳ガンのリスクを高める

最新疫学研究情報No.80

米国の南カリフォルニア大学のTanmai Saxena医学博士らの研究チームによって、「ホルモン療法を15年以上続けると、乳ガンのリスクを高めることになる」との報告がなされました。

研究チームは、カリフォルニア州教員研究(※1)に参加している女性のうち、閉経期から80歳までの女性5万6867人を対象に、ホルモン療法(エストロゲン療法またはエストロゲン・プロゲスチン療法)と乳ガンのリスクとの関連性について、約10年間の追跡調査を行いました。期間中に2857人が乳ガンを発症しました。

調査の結果、エストロゲン療法を15年以上受けていた女性は、ホルモン療法を一度も受けなかった女性と比べ、乳ガンのリスクが19%高くなることが確認されました。またエストロゲン・プロゲスチン療法を15年以上受けた女性は、受けなかった女性と比べ、乳ガンのリスクが83%も高くなることが明らかになりました。

さらにホルモン療法を受けた女性の中で、太った女性(BMI30以上)よりも痩せた女性(BMI25以下)の方が、乳ガンのリスクが高くなることが判明しました。

研究者たちは「今回の研究により、長期にわたり連続的にエストロゲン・プロゲスチン療法を受けることで、乳ガンのリスクが極めて高くなることが確認された。またホルモン療法を受けた女性の中でも、痩せた女性ほど乳ガンのリスクが高くなることも示された。これらの研究成果は、ホルモン療法のリスクと効果についてのさらなる議論の必要性を明白にした」と述べています。

※1この研究は、カリフォルニア州の公立学校の女性教師(現役及び退職者)など約13万3500人を対象とした女性の健康問題に関する大規模調査です。

出典

  • 『American Association for Cancer Research Journal 2010.8.10号』
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