わずかな鉛でも、子供の脳障害を引き起こすリスクが高い

最新疫学研究情報No.39

現在、米国疾病管理予防センター(CDC)が定めている鉛血中濃度上限ラインは、10µg/dl(およそ100ppb)ですが、今回、米国コーネル大学のRichard L. Canfield 博士の研究チームによって、「10µg/dl未満の微量の鉛血中濃度でも、子供に脳障害をもたらす可能性がある」との報告がなされました。これは、2003年に発表された同チームの研究内容を再調査したものです。

研究チームは、ニューヨーク州ローチェスターに住む194人の乳児(生後5~7ヵ月)を対象に、「鉛と知能指数の関係」について6年間の追跡調査をしました。被験者を鉛血中濃度が平均5~10µg/dlのグループと5µg/dl未満のグループに分け、ウェクスラー式幼児用知能検査(※1)によるIQテストのデータをもとに比較分析を行いました。

その結果、鉛血中濃度が5~10µg/dlのグループは、5µg/dl未満グループに比べIQテストの成績が4.9ポイント低くなりました。

Canfield博士は「鉛は、長期にわたって脳を危険にさらす神経毒である。今回の研究で鉛血中濃度の上限ラインに達しない微量の鉛でも、脳障害のリスクを高めることが明らかになった。現在の鉛血中濃度の基準を再検討する必要がある」と述べています。

※1ウェクスラー式幼児用知能検査は、3歳10ヵ月~7歳1ヵ月児を対象にした知能検査で、子供の言語と行動によりIQを判定します。現段階で開発されている知能検査の中で最も実施事例が多く、信頼性が高い検査として国際的に評価を受けています。

出典

  • 『ENVIRONMENTAL HEALTH PERSPECTIVES 2007年 12月号』
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