“神智学”による複数の霊的身体観の間違い

人間の霊体は1つしかない

コラムNo.10

前回のコラムでは、人間は単なる肉体だけの存在ではなく、「霊的身体(霊体)」と呼ばれる目に見えない要素を併せ持つ存在であることを述べました。今回は、一般的に知られている“神智学(※)”の身体観を取り上げ、神智学の霊的身体に関する問題点を指摘していきます。

真のホリスティック医学が1つの霊的身体の存在を主張するのに対して、神智学では複数の霊的身体の存在を主張します。神智学では、人体は1つの肉体と複数の不可視の身体が重複して構成されているとします。

神智学では、「太陽系七界」というコスモロジーを説きます。「宇宙は7種の次元の異なる階層(界層)構造をしており、それぞれの階層は、その階層固有の素材から成り立っている。7つの階層とは、フィジカル界(物質界と半物質のエーテル界)・アストラル界・メンタル界・ブッディー界・アートマ界・モナド界・ロゴス界で、これらの階層世界を構成するバイブレーションは粗大から微細へと変化していく。そして人間は死後、自分の霊体にふさわしい階層に所属するようになる」と言います。

また神智学では、「地上世界に住む人間は、肉体以外にエーテル体・アストラル体・メンタル体といった次元の異なる“複数の霊的身体”を内蔵しており、これらの身体が重なり合って人体を構成している」とします。それは複数の衣類を重ね着しているような状態で、「人間は死後、それらを1枚1枚脱いで階層世界を上昇していくことになる」と言うのです。

神智学の身体観

神智学の身体観は一見、論理的であり整合性があるように映ります。1つの霊体の存在を主張する真のホリスティック医学は、この点で神智学とは異なります。また、真のホリスティック医学では、「死後の世界である霊界は1つしかない」と説いています。そしてその霊界は、神智学で言うのと同様にバイブレーションの異なる階層(界層)から成り立っているとしますが、それらの階層は明確に区分されたもの(明確な境界をともなうもの)ではなく、「1つの霊界があり、そこにグラデーション的変化をともなうさまざまな階層が存在する」と主張します。

霊界がグラデーション的な無限の変化をしている以上、人間の霊体も同じくグラデーション的変化ができなければ対応できなくなります。この点から考えても、人間に4つ、7つというような複数の霊体があると考えることは不合理です。「霊界のグラデーション的変化に適応できる、グラデーション的変化をする1つの霊体がある」というのが真のホリスティック医学の見解です。神智学の説ではなく、このホリスティック医学の見解にこそ合理性・整合性があることは明らかです。

神智学の教義(ドクトリン)は、近代神秘思想家のブラバッキーにより完成されたと言われています。神智学のいかにも壮大で合理性を感じさせる身体観は、当時流行していた七世界論と、古代インド思想を折衷・融合化したものです。しかし、それは霊的事実を根拠とした思想ではなく、ブラバッキーの思弁によって創作されたもの(フィクション)です。そうした思弁的創作物が現代社会でかくも大きな影響力を持ち、多くの神秘学の徒や宗教関係者・思想家・ニューエイジャーを洗脳してきた事実は、まことに驚くべきことと言わなければなりません。

現在、ホリスティック医学関係者の中で話題となっているのが、米国の医師リチャード・ガーバーの『バイブレーショナル・メディスン』です。この本は、神智学の身体観をベースとしてさまざまな治療に関する知識を体系化したものです。『バイブレーショナル・メディスン』についてはいずれ取り上げる予定ですが、結論を言えばその医学理論体系は、神智学の身体観をベースにしている以上、すべて間違いであり、事実ではない架空の理論ということになります。

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