学校のお話

11 偉そうなソーシャル

「何で膝の上なのー?僕は子供じゃないんだよ!」
「何を怒ってるんだ?和也は子供だろ。」
 トゥーリナは、和也の言葉に戸惑いながら答える。
「ちっちゃい子じゃない、って言ってるの!」
「???」
 戸惑い顔のトゥーリナに、百合恵が教える。
「日本人は、小さい子にしか、スキンシップをしないのよ。」
「お前はしてるだろ。」
「それは、わたしが妖魔界で子供を産んだからよ。妖魔界流の子育てに馴染んだの。」
「そうか。」
 トゥーリナは和也を膝から下ろした。「リトゥナは膝の上が好きなんだけどなー。」
「わたしも好きよ。お父さん、膝が開いてるんだから、わたしを抱っこしてもいいわよ。」
 ソーシャルが言った。トゥーリナはにやりと笑うと、
「俺には、身に余る光栄です。お姫様。」
 膝を叩き、「リトゥナ、来い。」
 和也の目には中学生くらいに見えるのに、呼ばれたリトゥナは、嬉々としてお父さんの膝に飛び乗った。
「わたしが座ってあげるって言ってるのに、どうして、お兄さんを呼ぶの?」
 ソーシャルは不満そうだ。『ソーシャルちゃんって、本当に偉そう…。お父さんにあんな言い方をするなんて…。』和也は吃驚した。『お・お尻を叩かれる…のかな。』和也は赤くなりながら思った。
「俺は下賎の者だから、恐れ多くて触れられません。」
 トゥーリナは済まして言うと、「昨日は確かどんな学校を作りたいか、言いかけていたんだったよな?な、和也。」
 顔を真っ赤にしているソーシャルが気になりつつも、和也はトゥーリナを見た。
「うん、そうだよ。」
「わたしを無視するの? お父さんは、わたしが嫌いなのね!」
「違うよ。君がそんな口のきき方をするからさ。君はただの小さな女の子なんだ。もうちょっと良い子にならないと、トゥーは君を抱っこしてくれないよ。」
 ターランが言った。「トゥー、ソーシャルは幼いんだから、苛めちゃ駄目だよ。」
「はい、はい。」
 トゥーリナは面倒そうに返事をすると、「ソーシャル、わたしを膝に乗せて下さいって言えたら、リトゥナの隣に座らせてやるぞ。」
「“わたしを膝に乗せて下さい”。」
 ソーシャルは少し悔しそうにしながら言った。
「いい子だ。来い。」
 トゥーリナはソーシャルを招いた。ソーシャルが、それでも少し偉そうに歩いて行き、父の膝に座った。
「さ、我が侭姫様も落ち着いた事だし、そろそろ本題に入るか。」
 トゥーリナは息を吐くと、「俺達が作ろうと思っている学校はな、奴隷も小人も巨人も豪雪地帯の子供も含め、全ての子供が通える学校だ。前もお前に言ったけど、今は、特定の子供しか通えないのが現状だ。」
「もうちょっと簡単な言い方にして。」
「ん?難しかったか?」
「うん。」
「そうか。ま、今は金持ちの子供しか通えない。でも、誰もが学校に行けるようにしたいんだ。」
「そこまでは良いよ。」
「ん、それで、とりあえず、妖魔界の学校と日本の学校の差を知る為に、これから皆で妖魔界の学校へ行く。」
「わあ、どんな所か凄く楽しみ!」
 和也を含めた子供達は歓声を上げた。
「非常に不本意だが、学校と中学校を卒業している、唯一の男、こいつを連れて行く。」
 トゥーリナは酷く不満げに、ネスクリを指差した。ネスクリは噛み付きそうな顔でトゥーリナを見た。
「昨日の宇宙人さん。」
 和也が言った。
「俺はネスクリだ。」
「ネスクリさん、宜しくお願いします。」
 ぺこっと頭を下げた和也に、ネスクリは戸惑った顔をしたが、
「ああ、宜しく、和也。」
 言葉を返した。ターランと違って、彼は子供に興味がないだけで、人間は嫌いではないのだ。
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