『西部署に、改めて捜査制限が言い渡されたよ』 鳩村は、携帯を切り、閉じた。 「あいつの気持ち、考えると、今でもあの決断は酷かったかな、って思う」 大下が急ブレーキをかけた。鳩村がしていた、シートベルトが瞬間的に固定され、助手席のシートに括りつけられた。 「この車の安全性は、確実に問題ないな」 目を転じて、二人が正面を見る。道の真ん中に立っていた男に、二人とも見覚えがあった。 「りゅ・・・」 龍だった。いつものライトブラウンの髪ではなく、漆黒の髪。いつものふわっとしたヘアスタイルではなく、ムースで押さえつけた髪型、いつものストリート系のスタイルではなく、漆黒のスーツと、ダークグレーのネクタイ。 「・・・どちらのホストですか」 龍は、無言で車に乗り込む。大下は、あきれつつも、車を発進させた。 発進した後の車の中で、ようやく龍はサングラスを外した。 「龍、お前ドラマは」 サングラスを外して、ようやく分かった、口元のほくろ。 「足りねえよ。これしてろ。お前は、これから探偵なんだからな。目立つ行動は禁止。・・・ところで、名乗る時、どうする?」 後部座席から睨みつける龍に、大下が笑って答えた。 「しおらしいのは、お前らしくねぇ」 それには、鳩村が答えた。 「田園。あいつが記憶をなくす前に立ち寄った場所だ」 龍は、後部座席でふんぞり返った。 大下の携帯が鳴る。 「俺、運転中。鳩村出てくれよ」 鳩村は、電話を大下のジャケットのポケットから引っ張り出すと、画面を確認した。 「竜崎?」 鳩村は、首を傾げながら、 電話に出た。 「はい、大下の携帯です」 竜崎の話の内容はこうだ。 今回の事件の被害者は、豊田仁、45歳。フリーのルポライターをしている。 『高崎君に、関係のある話らしいんだが、それ以上は豊田氏も喋らなかったそうだ』 鳩村はちらりと龍を見た。龍は、そんな鳩村の視線を真正面から受け止めている。 『当方は全面的に君らをバックアップして行くよ。頑張ってくれ』 電話はそこで切れた。 |