ふと、思い出して笑ったら、タカに不思議がられた。
あれは、俺が派出所にいた時。
ちょっとした手違いから、西部署の刑事に手錠をかけようとした。
途端に、吹っ飛ばされて、怒鳴りつけられたっけ。
何で思い出したんだろう。
そっか。
この公園だったっけ。
もう、かなり風景はかわっちゃったけど、あの出会いは鮮烈だった。
まだタカも知らないし、水さんたちにも出会ってないし。
警官になったばっかりで、ただでさえ浮いてたのにさらに空回りばっかりして。
「死にたいなら、俺が殺してやろうか」
マグナム突きつけられて、怒られた。
警察官としての基本すら出来てなかった。
そんな俺と、嫌な顔一つせず、付き合ってくれた。
人間が出来てると言うか、心が広いと言うか。
俺以上にスリムで、それでいて素早い身のこなし。
俺も負けてられないって思ったな。
「お前、刑事になったらいいと思うぜ。俺が保証する」
にこっと笑って、そう言ってくれた。
「また、会おうな」
その言葉から二ヶ月。
俺は彼に再び会う事が出来ずに、新聞を見た。
松田刑事殉職
そのタイトルに、俺は隠れて泣いた。
たった一週間の付き合いだったけど、俺にとっては、兄貴みたいだったんだ。
それから色々あったけど。
今、探偵として東京にいて、何の因果か、西部署のメンバーと付き合っている。
リキさんの事を知ってる奴はいないと思うし、俺も別に友人でもなかったし、
その話を他の奴にした事は無いが、今の俺は、彼のおかげでここにいると思う。
「ユージ?」
「ん。ああ、ちと考え事」
タカに呼ばれて、俺はその公園を後にした。