永遠なんて最初からなかったのかもしれない
きゅっと、胸を締め付けられた。
仕事場に行くのが、こんなに苦しいとは思わなかった。
私にとって、彼らの存在が、こんなに大きいものだとは思わなかった。
いつもの通勤道。
いつもの署の建物。
いつもの喧騒。
だけど、その中に彼らはいない。
もう、戻ることもない。
そう思うと、一筋涙が頬を伝った。
「薫君?」
松村課長が、私に声を掛けて来た時点で、漸く自分が泣いていることに気付く。
鈴江さんも心配そうに、私の顔を見ていた。
「・・・暫く、有休取った方がいいんじゃない?」
「あ、え、・・・大丈夫ですよっ」
精一杯、強がる。けど、松村課長には通用しなかった。
会議室に呼び出されて、私は大人しく座った。
ふと、椅子を触ってしまう。
この場所には、大下さんが座ってたなぁって・・・。
「薫君。彼らの事、好きだったんだよね」
松村課長の言葉に、妙に心臓が跳ね上がる。
彼らの事を他の人が口にするだけでも、胸いっぱいに不安が広がる。
ここまで、自分が女だとは思わなかった。
「あいつらなら、平気よ。あの図太さで、どこでも何でも出来るって」
「ええ・・・。分かってるんですが・・・。分かってはいるんですが・・・」
言葉と同時に、涙が溢れ出す。
ここまで、警察に嫌気が差すとは思わなかった。
自分がそんな組織の一員であるということに、嫌気が差していた。
悔しくて、どうしようもない。
正しいことをした人間を、どうして裁くのか。
「もし、あいつらが刑事してたとしても、薫君と別の署に異動するかもしれなかったじゃない。それと同じことよ」
「・・・はい」
「ずっと、一緒にはいられない。貴方もそれは分かっているでしょ?」
「・・・はい・・・」
下を向き、嗚咽するしかない、私の肩を、松村課長は優しく抱いてくれた。
その温もりに、また涙があふれる。
「あいつら、実はね・・・」
課長の一言。
私の潰れかけた心を少し、持ち上げてくれた。
「だから、それまで、がんばって」
「はい・・・」
葉子と会ったのは、その日。
課長の言葉と、彼女を支えに、ギリギリの日々を送った。
・・・・・・・・・・あいつら、実はね、探偵やりだしたみたいよ。
だから、もう少し。あいつらがきちんとやれるように、見守らせてあげるから。待ってて。
課長の言葉が、現実になったのは、それから一年経った頃だった・・・。
ずっと、見守りたい。
けれど、それは無理。
分かってるから、今は。
今だけは、貴方たちを見ていたい。